193ヶ国の超規模調査!子どもの頃に十分な栄養を摂れていないと地域によって約20cmの身長差が生まれるかもしれない

193ヶ国の超規模調査!子どもの頃に十分な栄養を摂れていないと地域によって約20cmの身長差が生まれるかもしれない

赤羽(Akabane)

国連が2030年までの達成を目指し掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の中に、「貧困を無くそう」「飢餓をゼロに」というのがあります。もうすぐSDGsが掲げられてから5年が経とうとしていますが、世界各国の貧困や食糧難問題は依然として残り続けています。今回は派生して、子どもの頃の栄養状態がよくないとやはり体の発達に影響してしまうかも!というデータを見ていきます。

193ヶ国の超規模調査!子どもの頃に十分な栄養を摂れていないと地域によって約20cmの身長差が生まれるかもしれない

193ヶ国から2181件の調査データを集めておよそ65万人を分析した超規模な研究結果

2020年に非感染性疾患対策の世界的な研究チームが発表した研究(#1)によると、子どもの時期の身長差は国や地域間で最大20cmも違い、この差には栄養状態が影響している可能性が示唆されていました。

この研究では、193ヶ国を舞台に2,181件もの人口ベースの調査を集めていまして、調査対象になった子どもの数はなんと50万人にものぼり、20~30歳代の成人も15万人ほど対象になりました。

分析には1971〜2019年の身長データや1985〜2019年のBMIなどの体組成を使っていました。1971年に5歳児だった人は1985年には19歳になるので、主に幼稚園〜高校生くらいまでの成長具合を国や環境ごとに比べる流れ。そしてその後〜2019年のデータがあれば、30歳代までの体組成計データも追いかける形です。

すると分析の結果、以下のようなことが分かりました。

結果
  • 国や地域によって最大20cm以上も身長差に開きがあり、これは男子で6年、女子で8年の成長ギャップを意味する
  • 2019年時点、対象者らの平均身長が最も高かったのは中央・北西ヨーロッパ諸国で、逆に最も低かったのは南・東南アジアやラテンアメリカ、東アフリカ地域だった
  • ただし、1985〜2019年の35年にわたって平均身長の伸び率が最も高かったのは、著しい経済成長をみせた中国や韓国、東南アジア諸国、中東、北アフリカあたりだった

成長ギャップについては、例えばネパールやバングラデシュの19歳女子はオランダの11歳女子と同じくらいの身長だったようで、いかに身長にギャップがあるかがわかりますね。

一方で、ここ35年くらいの身長伸び率については、割りかし平均身長が低いとされた国や地域で高い様子。とはいえ、その中でも国によって随分伸び率には差があったみたいですが。(例: 中国はインドよりも2.3〜3.5cm程平均身長が伸びた)

そして上記の結果をまとめて、研究チームは「発展途上国や食糧問題が取り沙汰される地域で身長が低く、先進国などで身長が高い傾向があることを踏まえると、身長の伸びには子どもの頃の栄養状態が大きく関与しているのではないか?」と睨んでいるんですね。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • 一部地域のデータは少なくデータ量に偏りがあった: カリブやポリネシア、ミクロネシア、メラネシアといった地域のデータは少なく、こうした地域に関する分析結果の信頼性も落ちる
  • 年齢層別のデータ量にも偏りがある: 9割近くが10〜19歳のデータで、5〜9歳の学童期あたりのデータがかなり不足していた
  • 遺伝など、他にも考慮し切れていない要素がある: 身長や体重などの体型には遺伝の影響も少なからずあるとされ、こうした影響は今回考慮していない

とはいえ、遺伝の影響は小さいという報告もあります。例えば2002年の研究(#2)によると、グアテマラからの移民の子孫たちは移住先のアメリカの平均身長に数世代で並ぶということが分かっています。これを踏まえると、遺伝よりも後天的な生活環境の方が大事なのかな?という気もします。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 193カ国、約65万人を対象にした調査結果によると、国や地域によって最大20cm以上も身長差に開きがあり、この差には子供の頃の栄養状態が深く関係している可能性が示唆される
  • 2019年時点で平均身長が最も高かったのは中央・北西ヨーロッパ諸国で、逆に最も低かったのは南・東南アジアやラテンアメリカ、東アフリカ地域だった
  • ただしここ35年にわたって平均身長の伸び率が最も高かったのは、著しい経済成長をみせた中国や韓国、東南アジア諸国、中東、北アフリカあたりだった

赤羽(Akabane)

身長に関しては遺伝的な要素が大半だと思っていましたが、わりと子供の頃にしっかり栄養が摂れていたかの方が大事かも?という気がしてきました。個人的には、食糧をうまく分配するために廃棄の食べ物や残飯をトラッキングするアプリがあるという話を聞いたことがありまして、テクノロジーが冒頭で触れたような飢餓問題に対して活躍する可能性を感じています。

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参考文献&引用

#1 NCD Risk Factor Collaboration (NCD-RisC). Height and body-mass index trajectories of school-aged children and adolescents from 1985 to 2019 in 200 countries and territories: a pooled analysis of 2181 population-based studies with 65 million participants. The Lancet, Volume 396, Issue 10261, P1511-1524, November 07, 2020. DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31859-6

#2 Bogin B, Smith P, Orden AB, Varela Silva MI, Loucky J. Rapid change in height and body proportions of Maya American children. Am J Hum Biol. 2002 Nov-Dec;14(6):753-61. doi: 10.1002/ajhb.10092. PMID: 12400036.