「デカい筋肉 = 強力な筋肉」とは限らないぞ！というレビュー研究

赤羽(Akabane)

今回は「筋肥大と筋力アップの関係性」についてのお話です。

体がデカい人を見ると「力が強そうだなぁ～」と自然に思ってしまうものですが、そもそも筋肉がデカくなるから筋力もアップするの？という部分は意外と謎のままです。

というわけで、この記事では筋肥大と筋力アップの間の関係性について今のところ分かっているデータを見ていきます。

参考になるのが2019年にミシシッピ大学の教授らが発表した研究(#1)で、「デカい筋肉 = 強力な筋肉」とは限らないぞ！という趣旨の主張を繰り広げておられました。

ではこのレビューから得られた知見をザっと見てみましょう。

必要ない。例えば、片腕をトレーニングしてもう片腕は何もしないという実験を行うと、両腕の筋力は発達していたが、筋肉のサイズアップは鍛えた方の腕にしか見られなかったという報告(#2)もあがっている。

これは「クロスオーバー効果」と呼ばれていて、筋力アップ効果は主に神経系が負荷に適応することから起こっているため、片腕で味わった負荷が神経を通して逆腕にも伝搬したと考えられる。

十分でない。実際に、近年では高負荷の筋トレでなくても筋肉のサイズアップは起こるが、筋力アップは起こらないと報告するデータ(#3, #4)が増えてきている。

こうした結果を踏まえると、筋肥大は必ずしも筋力アップ効果をもたらすのに十分な体の変化とは言い切れない。

可能性として、トレーニングの負荷に対する神経系の適応と筋繊維の変化が考えられる。

2019年のメタ分析(#5)でも、筋力アップに寄与しているのは、大部分が神経系の適応と筋繊維の構造の変化であることが判明している。

筋肉のサイズアップは筋力アップとは違うメカニズムで起こっていて、両者の間にはあまり関係がない！ということでした。

ただし注意点として、研究チームも指摘しているように、このテーマのエビデンスはまだまだ少なくて弱い状況です。検証実験はそこそこ出ているものの、サンプルサイズが小さかったり、実験期間が短かったりして断定的な答えは出ていないのが現状かと。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント

こんな感じでしょうか。体がデカい人からはすごい反論がきそうな内容ですが、筋肥大に特化したトレーニングで筋力まで効率的に高められているのか？と言われると怪しいかもしれません。

赤羽(Akabane)

個人的にも、筋力と筋肉のサイズは切り離して考えた方が良いと思っています。もちろん力があって体もデカい方はたくさん居ますが、これが「筋肉をデカくしたおかげで筋力がアップした」という因果関係を示す根拠にはならないというところは、このテーマを語るうえで大事なポイントかと。

参考文献&引用

#2 Carroll TJ, Herbert RD, Munn J, Lee M, Gandevia SC. Contralateral effects of unilateral strength training: evidence and possible mechanisms. J Appl Physiol (1985). 2006;101(5):1514–22.

#3 Jakobsgaard JE, Christiansen M, Sieljacks P, Wang J, Groennebaek T, de Paoli F, et al. Impact of blood flow-restricted bodyweight exercise on skeletal muscle adaptations. Clin Physiol Funct Imaging. 2018.