赤羽(Akabane)
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一歩間違えると怪我や燃え尽き?運動への正しい情熱の注ぎ方
まず前提ですが「情熱の二元モデル(#1)」という情熱についての理論があります。これは簡単に言うと、情熱には次のような2つのタイプがあるよね、というもの。
- ハーモニアス・パッション:自然と情熱を注ぐ対象に取り組んでいたり、内部的なプレッシャーもなく好きな気持ちから体が動くタイプの情熱
- オブセッシブ・パッション:憑りつかれたように情熱を注いだり、「やらなきゃ…」というプレッシャーを自分でかけたり、執着を見せるタイプの情熱
で今回はこの理論に当てはめて、運動に注ぐ情熱はどっちの方がどのように良いのか?という疑問にタックルしていきます。
一歩間違えば怪我や燃え尽き症候群?正しい情熱の注ぎ方は…
この問題について参考になるのが、2018年にボール州立大学が発表した研究(#2)で、61名の大学生を対象に、運動への情熱の注ぎ方は二元モデルではどちらがベターなのか?を調べてくれています。
結論から言うと、運動へ注ぐ情熱はハーモニアス・パッションの方が良いかも!とのことでした。
この研究では参加者らに有効な情熱タイプ診断を行なって、彼らを①ハーモニアス、②オブセッシブ、③ノンパッションという風に分類して、それぞれの運動への姿勢などを調査しました。
では具体的にそれぞれどんな特徴があったのでしょう?リスト化するとこんな感じです。
- ハーモニアス:キツい運動に費やした時間は最も長かった
- オブセッシブ:キツい運動に費やした時間はハーモニアスと同じくらいで、運動への依存度は最も高かった
- ノンパッション:他2つのタイプよりキツい運動に注ぐ時間は短く、追跡期間で運動パフォーマンスが衰えて体脂肪も増える傾向があった
まとめると、種類はどうあれ、情熱があった方がより大変なトレーニングにも時間を費やす傾向があって、結果もしっかり出ていた、と。タイプ毎に違うのは運動に対する依存度だけだったみたいですね。
ではハーモニアスとオブセッシブ、どちらでもOKか?と言われれば少し怪しいです。というのも過去の研究をみていると、
オブセッシブパッションを抱く人にはこうしたデメリットが付きまとうからです。つまり、運動に依存してついやり過ぎてしまうあまり、怪我や燃え尽き症候群に繋がるリスクが高いかも..ということです。
注意点・まとめ
ただし注意点として、このテーマはまだそこまで進んだものではなくて、メタ分析のような全体をまとめた結論は出ていません。
特に年齢や性別といった基本的な要素によって結果がどう違ってくるか?についてもいまいちよく分かっていません。2013年の研究(#5)では、女性のほうがハーモニアス・パッションを抱きやすいんじゃないか?との説が出ていますが..。
では以上を踏まえて今回のまとめです。
- 運動への正しい情熱の注ぎ方は「ハーモニアス・パッション」かも
- ハーモニアスもオブセッシブも運動への熱意はあるけれど、オブセッシブは依存度が高い分ケガや燃え尽きのリスクが高い
- ただ年齢や性別といった基本の要素別での違いはまだまだ分かっていない
現時点では「ハーモニアス・パッション」の立場を取っていたほうが、長い目で見てメリット大きいかもしれませんよ、と。
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Vallerand RJ. On the psychology of passion: In search of what makes people’s lives most worth living. Can Psychol. 2008;49(1):1–13.
#2 Bureau AT, Blom LC, Bolin J, Nagelkirk P. Passion for Exercise: Passion’s Relationship to General Fitness Indicators and Exercise Addiction. Int J Exerc Sci. 2019 Jan 1;12(5):122-135.
#3 Curran T, Appleton PR, Hill AP, Hall HK. Passion and burnout in elite junior soccer players: The mediating role of self-determined motivation. Psychol Sport Exerc. 2011;12(6):655–661.
#4 Rip B, Fortin S, Vallerand RJ. The relationship between passion and injury in dance students. J Dance Med Sci. 2006;10:14–20.
#5 Marsh HW, Vallerand RJ, Lafrenière MA, et al. Passion: Does one scale fit all? Construct validity of two-factor passion scale and psychometric invariance over different activities and languages. Psychol Assess. 2013 Sep; 25(3):796-809.