必須アミノ酸「BCAA」の血中濃度が高まると二型糖尿病発症の危険が高まるかもしれない

血中のBCAA濃度が高まると二型糖尿病リスクが高まるかもしれない【必須アミノ酸】

赤羽(Akabane)

今回は「筋トレのド定番『BCAA』って実は手放しではオススメできないかもよ?」というお話です。

プロテインに並ぶ筋肉メンテ必携アイテム「BCAA」は血中濃度が高まると二型糖尿病リスクが高まる?

ではまず「BCAAって何?」というところからザックリおさらいしておきましょう。

筋トレに必携と言われるアミノ酸「BCAA」とは?

BCAAは「分枝鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acid)」の略で、必須アミノ酸「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」を指します。

で「筋トレ前や後はプロテインに併せてBCAAを摂ろう!」というのが筋トレマニアたちの合言葉なんですが、これは補給することで激しいトレーニング後の筋分解に備えようという狙いがあります。アミノ酸はたんぱく質が細かく分解されたものなので、当然筋合成を促す効果が見込めるわけですね。

BCAA 必須アミノ酸 とは 図解

ちなみにメインではありませんが、これから紹介する研究ではAAAというアミノ酸も登場します。こちらは「芳香族アミノ酸(Aromatic Amino Acid)」の略で、今回はフェニルアラニンとチロシンを主に測定していました。

血中のBCAA濃度が高まると二型糖尿病リスクが高まる?

では以上を踏まえて本題に入りましょう。筋トレ効率を上げるのに必須っぽいBCAAですが、実際手放しでおすすめできるんでしょうか?

実は最近、この問題について待った!をかける研究が出てきています。その代表例が2018年にナバーラ大学が発表した研究(#1)です。

この実験は「PREDIMED試験」という、本来は地中海式ダイエットの健康効果を調査する試験データから892名の男女(55~80歳)を対象に行われたもの。

対象者の内訳は、251名が追跡中に二型糖尿病を発症した患者で、残り641名がそうでない人たちという感じ。で試験中、彼らはこんなグループに分けられていました。

  • エキストラバージンオリーブオイルグループ(EVOO):地中海食をベースにEVOOを多めに摂る(273名)
  • ナッツグループ(NUT):地中海食をベースにナッツを多めに摂る(324名)
  • 比較グループ(CON):脂肪の摂取量を減らすだけ(294名)

このグループ分けは「PREDIMED試験」の定番なので、ここではあまり気にしなくてOKです。

で彼らの生活を中央値3.8年間で追うと同時に、実験前後の血中(血漿)BCAA/AAA濃度や追跡1年経過時点でののBCAA濃度まで調べました。

すると結果、こんなことが分かりました。

結果
  • 追跡開始時にBCAAやAAAの血中濃度が高い人はその後二型糖尿病発症リスクが高かった
  • 追跡1年経過時の血中BCAAが高いと、その後二型糖尿病発症リスクが高まった
  • 血中のBCAA濃度が最も高いと分類された人は「男性」「喫煙者」である傾向が高かった

どうやら血中のBCAA/AAA濃度が高まると二型糖尿病リスクが高まるみたいです。具体的に言えば、ここでは「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」「フェニルアラニン」「チロシン」のことですね。

でこの実験はこれで終わりではなくて、更に地中海食がこの二型糖尿病発症リスクやBCAA/AAA濃度にどんな影響を与えていたか?も見てくれていました。その結果は、

結果
  • EVOOグループは比較グループ比べると、追跡1年経過時の血中BCAA濃度が高くても二型糖尿病のリスクが低かった
  • EVOO、NUTSグループ両方で血中BCAA濃度が減っていた

こんなことがわかりました。特にEVOOを中心にした地中海食で、BCAA/AAA濃度が下がったうえに、二型糖尿病発症リスクも低下していたんですね。つまり他の食生活次第ではBCAAと二型糖尿病リスクの相関は見られなくなるかもよ、と。

地中海食で二型糖尿病リスクが下がるのは科学的にかなり堅い話(#2)で、今回改めてその効果を確認する感じになりましたね。

注意点・まとめ

では最後に今回の内容をまとめます。

ポイント
  • 筋トレでオススメされる「BCAA(分岐鎖アミノ酸)」
  • 血中のBCAA濃度が高まると二型糖尿病リスクが高まるかもしれない
  • こうしたリスクは地中海食のような健康な食生活を送っていれば問題なさそう

こんな感じでしょうか。他にも2018年に、血中のBCAA濃度が高まると糖尿病の発症や代謝の異常が引き起こされるかも!という報告(#3)が上がっていたりして、やっぱりBCAAは二型糖尿病と関係が深そうです。

ただ因果関係の特定はまだで、現に今回BCAA濃度が最も高かった人は「喫煙者」の傾向が多かったり、地中海食によって発症リスクが抑えられたりしています。つまり、BCAA濃度だけでなく他のライフスタイル等の影響も大いにあるかも、ということです。

赤羽(Akabane)

結局は「一つの栄養だけじゃなくて健康はトータルで見たほうが良いよ!」という結論に落ち着きそうですが、この分野の細かい研究は今後も追っていこうと思います。BCAAについてその他参考になりそうな記事を貼っておきますので、よろしければおまけにどうぞ。

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参考文献&引用

#1 Miguel Ruiz-Canela, Marta Guasch-Ferré, Estefanía Toledo. et al. Plasma branched chain/aromatic amino acids, enriched Mediterranean diet and risk of type 2 diabetes: case-cohort study within the PREDIMED Trial. Diabetologia, July 2018, Volume 61, Issue 7, pp 1560–1571.

#2 M Dinu, G Pagliai, A Casini,F Sofi,”Mediterranean diet and multiple health outcomes: an umbrella review of meta-analyses of observational studies and randomised trials.“,Eur J Clin Nutr. 2018 Jan;72(1):30-43.

#3 Lee CC, Watkins SM, Lorenzo C, Wagenknecht LE, Il’yasova D, Chen YD, Haffner SM, Hanley AJ. Branched-Chain Amino Acids and Insulin Metabolism: The Insulin Resistance Atherosclerosis Study (IRAS). Diabetes Care. 2016 Apr; 39(4):582-8.