青春時代の記憶が鮮明に残って色あせない現象「レミニッセンスバンプ」

教室 ノスタルジック レミニッセンスバンプ

赤羽(Akabane)

今回は「レミニッセンスバンプ」という心理現象についてのお話です。

青春時代に想いを馳せるノスタルジックな感情

大人になると、ふと昔の青春時代を想い出すことがあります。それは時に、小さい頃に近所の子と毎日のように遊んでいた思い出だったり、時に、高校の文化祭でクラスメイトと青春を謳歌した記憶だったりするかもしれません。

このように子どもの頃や学生時代の特別な記憶は、大人になっても薄れず残っていることって結構ありますね。これを人は“懐かしい”なんて表現するのですが、どうしてこうも特定の時期の記憶が強く残ってしまうのでしょうか?

青春時代の記憶が鮮明に焼き付く「レミニッセンスバンプ」

レミニッセンスバンプ 青春 記憶 心理学

特別な時期、特に子どもから大人への過渡期である“青春時代”の記憶が鮮烈に残る現象、これを心理学では「レミニッセンスバンプ」と呼ぶそうです。2008年にリーズ大学が行った研究(#1)によると、レミニッセンスバンプが起こりやすいのは10~30歳の間に経験した記憶なんだとか。

ではどうしてその時期の記憶は鮮明に残りやすいのでしょう?それは、特に子どもから大人への過渡期に人それぞれの価値観が形成されやすいからだとされています。言うまでもなく、自分の価値観に根付く思い出や記憶というのはその人にとって“大事なモノ”ですから、脳はいつでも取り出しやすいところに置いておくわけです。

脳科学的に考えてみても、感情を司る「偏桃体」と記憶を司る「海馬」が近接して互いに影響を与え合っていることから(#2)、大事な感情とくっついた記憶が残りやすいのも納得がいく話ですね。

最後にレミニッセンスバンプの興味深い話で結び

では最後にレミニッセンスバンプの面白い研究で締めくくりを。これは2012年に行われた研究(#3)でして、ザックリ言うと「あなたにとって最高のサッカー選手は?」という質問に答えてもらうんですね。結果的に挙がったのは、ペレやヨハンクライフ、マラドーナなど歴史に名を刻んだ名プレイヤーたちでした。そしてここから興味深いことがもう一つわかりました。

結果
  • 参加者らが挙げた各々の“最高のサッカー選手”は彼らの青春時代にちょうど全盛期を迎えていた傾向がみられた

つまり参加者たちが挙げたサッカー選手は、彼らの青春とともにあった選手たちだったんですね。中学高校の頃によく聴いてた曲をずっと聴いている、というのに似ています。これは面白い。

赤羽(Akabane)

青春の謎がひとつ解き明かされました。何かあるごとに想い出してしまう懐かしい思い出、それはもしかすると皆さんにとって“大事だったモノ”であり、これからも“大事なモノ”であり続けるのかもしれません。

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参考文献&引用

#1 CLARE J. RATHBONE, CHRIS J. A. MOULIN, AND MARTIN A. CONWAY ,”Self-centered memories: The reminiscence bump and the self“,Memory & Cognition 2008, 36 (8), 1403-1414.

#2 Phelps EA,”Human emotion and memory: interactions of the amygdala and hippocampal complex.“,Curr Opin Neurobiol. 2004 Apr;14(2):198-202.

#3 Steve M. J. Janssen, David C. Rubin,Martin A. Conway,”The reminiscence bump in the temporal distribution of the best football players of all time: Pelé, Cruijff or Maradona?“,THE QUARTERLY JOURNAL OF EXPERIMENTAL PSYCHOLOGY,2012, 65 (1), 165–178.