赤羽(Akabane)
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幸せな思い出を振り返るだけでうつ病のリスクが低下する?
早速ですが、このテーマについて面白い研究が発表されていたので、中身を覗いてみましょう。
うつ病にかかるリスクが高い青少年たちを対象にした調査
これは2019年にケンブリッジ大学とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンが発表した研究(#1)で、何やら「過去のポジティブな思い出をを振り返るだけでうつ病のリスクが減った!」という結論になっていました。
この研究は、ケンブリッジやその周辺地域から「うつ病に罹るリスクが高い」青少年427名(平均14歳)を集めて、彼らの経過を追ったもの。
具体的には、まず調査開始時に「キーワード記憶想起テスト」を実施。これは、ポジティブ/ネガティブなワードを見せていって、それらに関連する過去の思い出についてしっかり思い出せるか?をチェックするものでした。
で次に、当時から過去1年間の間に経験した、中度~キツい重度レベルのネガティブ体験がどのくらいあったか?を答えてもらって、ここ最近の主観的なうつ症状やマイナス思考はどんなものか?も併せて報告してもらったようです。
今回「うつ病への脆弱性(かかりやすさ)」として使われたのは、①主観的なネガティブ思考レベル、②朝のストレスホルモンレベル(コルチゾール)の2つで、②を調べるためには、調査開始時と終了時にそれぞれ4日間にわたって参加者の唾液のサンプルを採取したみたい。
でこうした調査を1年間かけて進めていったところ、次のようなことが分かりました。
- ポジティブなキーワードから幸せな思い出を想起するのが上手い人は主観的なネガティブ感情も少なく、1年後の朝のストレスホルモンも軒並み減少していた
どうやら過去の幸せな思い出をスムーズに振り返れる人ほど、その先の主観的&生理的なうつ病への脆弱性は弱まった、と。
ちなみこうしたうつ病リスクの軽減は、参加者が自らのネガティブな過去の体験に対して、ネガティブな見方や解釈をすることが少なくなったからだ、ということも分かったようです。
今回は、直接「うつ病発症」の診断を受けるリスクを調べたわけではありませんが、慢性的なコルチゾール上昇や主観的なネガティブ感情がどちらもうつ病リスクを高めるのは間違いありません。
赤羽(Akabane)
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#1 Adrian Dahl Askelund, Susanne Schweizer, Ian M. Goodyer & Anne-Laura van Harmelen. Positive memory specificity is associated with reduced vulnerability to depression. Nature Human Behaviour, volume 3, pages265–273 (2019).