赤羽(Akabane)
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座りっぱなしは危険!オフィスワーク注意報。
学校や職場、現代では”座っている”時間が圧倒的に長くなりました。子どもたちは教室で黒板に向かいながら座りっぱなし。いわゆる多くの社会人はモニターとにらめっこしながら座りっぱなし。特にオフィスワーカーは一日の大半を座って過ごしているのではないでしょうか?
そこでこの記事では、自分自身への戒めの意も込めて、「座りっぱなし」の健康被害についての議論です。まず前提として、近年ずっと言われ続けている主張についておさらいしておくと、
- 「座りっぱなし」で早死にのリスクが高まるかもしれない!
この主張を裏付ける研究結果がたくさん報告されているんですね。そこでここではその研究を幾つか見ていきましょう。
座りっぱなしであらゆる生活習慣病のリスクが増加..?
まずは2012年に発表されたメタ分析(#1)から。この研究では座りっぱなし生活とあらゆる病気との関連を調べてくれていて、ザっと以下のような中身でした。
- 18の研究から総勢794577人を調査(38~63歳)
- 調査の期間は3~21年間
- オーストラリア、イングランド、カナダ、ドイツ、日本、スコットランド、アメリカの研究
- 座ってる時間が最長グループ VS 最短グループで比較
ランダム化比較試験(RCT)など信頼性の高い実験はないものの、全体的にそこそこの質の研究が集まっております。すると結果は、こんな感じになりました。
- 糖尿病のリスクが112%も高まった
- 心臓疾患のリスクが147%も高まった
- 心臓疾患による死亡リスクが90%高まった
- 総死亡リスクが49%高まった
何やらえげつない数字がたくさん。100などの数字を見ると圧倒されますが、要はあらゆる病気リスクが2倍近く跳ね上がるということですね。しかも今回選ばれた各研究を見てみると、割と運動の習慣も考慮して結果を出してるものが多いのです。つまり、座りっぱなしの害は思ったより凄まじいかもしれない…ということに。
ただ、もう一つ気になることを言っていて、座っている時間が長い人ほど軽度の運動(散歩や立ってる時間とか)をしている時間が短い傾向があったようです。この事実から研究チームは、歩いたり立ったりする時間を増やせば座りっぱなしのリスクを減らせるんでは?ということを言っております。
座りっぱなしの時間が長引く程早死にリスクが高まる..?
ということでもう少し調べてみましょう。 お次は2016年のレビュー研究(#2)でして、54か国を対象に2002~2011年にかけて11億6719万1000人を調査した超大作です。ここから分かったことは、
- 1日3時間以上の座りっぱなしが3.8%の死と関係していた(433000件)
- 座る時間を10%、25%、50%と減らすと総死亡リスクは0.6%、1.3%、2.3%と下がった
- 座る時間を30分、1時間、2時間と減らすと総死亡リスクは0.6%、1.1%、1.9%と下がった
このような結果でした。つまり一日の中で座る時間をちょっとずつ減らしていけば死亡のリスクを下げられるかも!ということですね。更に座りっぱなしが直接死亡リスクに関係しているかもしれない因果関係もうっすら。しかしここで新たな指摘が…
これらの調査は、座っている間や休憩中の「貧乏ゆすり」の影響を考慮できていない。そしてこれは総死亡リスクや心臓疾患のバイオマーカーを減らすかもしれないとされている。更に、「座る」と一言に言っても休暇や仕事、通勤など様々な状況がある。こうした微妙な差も現状では考慮できていない。[筆者訳]
正直なところ、ここまで突き詰めて調査するのは相当難しいですが、一方で研究によって微妙な誤差が出ているのも事実であります。
国ごとに座りっぱなしの健康被害に微妙な誤差がある
例えばイギリスの大規模な調査をまとめた研究(#3)では、
- かねてから言われている座っている時間と総死亡リスクには相関がなかった
- ただし参加者の多くが活発でよく運動する人たちだった(主に散歩)
このように、軽度でも普段から運動をしてれば多少座ってても問題なさそうだよ!という結論ですね。しかしまだ安心はできません。オーストラリアで行われた大規模な調査研究(#4)では、
- 座りっぱなしのライフスタイルは心臓疾患による死亡や総死亡リスクと相関があった
- この相関は中~高強度の運動習慣を考慮してもなお見られた
逆の結果に。これは最初に紹介した研究(#1)と同じ結果ですね。色んな研究を見てみると、どうやらお国の事情(食生活、運動習慣、人種とか)も少なからず関わってそうなかんじ。結論、「これだ!」という答えが出るのはまだ先になりそうですね。
赤羽(Akabane)
参考文献&引用
#1 Wilmot EG, Edwardson CL, Achana FA, Davies MJ, Gorely T, Gray LJ, Khunti K, Yates T, Biddle SJ,”Sedentary time in adults and the association with diabetes, cardiovascular disease and death: systematic review and meta-analysis.“,Diabetologia,55(11):2895-905.,2012.
#2 Rezende LFM, Sá TH, Mielke GI, Viscondi JYK, Rey-López JP, Garcia LMT,”All-Cause Mortality Attributable to Sitting Time: Analysis of 54 Countries Worldwide.“,Am J Prev Med,51(2):253-263,2016.
#3 Pulsford RM, Stamatakis E, Britton AR, Brunner EJ, Hillsdon M,”Associations of sitting behaviours with all-cause mortality over a 16-year follow-up: the Whitehall II study.“,Int J Epidemiol,44(6):1909-16.,2015.
#4 van der Ploeg HP, Chey T, Korda RJ, Banks E, Bauman A,”Sitting time and all-cause mortality risk in 222 497 Australian adults.“,Arch Intern Med,172(6):494-500,2012.