メタ分析:「女性の方が男性より嗅覚が鋭い」は本当なのか?

メタ分析:「女性の方が男性より嗅覚が鋭い」は本当なのか?

赤羽(Akabane)

今回は「女性の嗅覚の方が鋭いって本当?」というお話です。

メタ分析:「女性の方が男性より嗅覚が鋭い」は本当なのか?

女性は男性より匂いに敏感だから、体臭を香水で隠そうとしてもすぐバレるよ!

こんな話を、遠い昔、聞いたことがあります。そして、当時調べてみると、割と世間一般にも浸透した説だということが分かりました。

というわけで、この記事では改めて「女性の嗅覚は鋭い」って本当なの?というテーマを追究します。当たり前に思われることを検証で再現するのも、科学の立派な仕事です。

「女性の方が嗅覚が鋭い」は本当なのか?を3つのジャンルに分けて調べたメタ分析

2019年にヴロツワフ大学が発表したメタ分析(#1)では、性別によって嗅覚の鋭さにはどんな差があるの?という点をまとめてくれていました。

この研究では、嗅覚を大きく以下の3ジャンルに分けて、それぞれで性別の結果を分析しています。

  • 匂いの特定(13,670名): 嗅いでいる匂いが何というものかを言い当てる
  • 匂いの嗅ぎ分け(8,067名): 2〜3種類の匂いの中から、違うものを嗅ぎ分ける
  • 匂いの閾値(8,848名): 嗅覚で感知できる匂いの濃度(薄い匂いをどこまで感じられるか)

では、上記の分析結果を見ていきます。

結果
  • 全てのジャンルで、女性の方が男性よりも有意に嗅覚の能力が高かった
  • 年齢をザックリ40歳のラインで分けて分析したところ、年齢による嗅覚への影響はあまりなかった

まとめると、どのジャンルにおいても、女性のほうが嗅覚の能力が高いということが改めて実証されました。

ただ、効果量(効果の大きさを表す数値)を見てみると、全ジャンルで大体 【g = 0.08~0.30】とのことで、この数値だけで単純に解釈すると、決して大きな差があるわけではなさそうです。
一般には、g ≧0.70 くらいで効果が大きいとされる

女性はどうして嗅覚が鋭いのか?

では、女性のほうが嗅覚が鋭いのはどうしてなのでしょう?考えられる仕組みは、ざっと以下の通りです。

  • 神経内分泌系: 性ホルモンや月経周期の変動が嗅覚の感度と繋がりがあることが分かっているが、一方で、小さい子どもでも性別によって嗅覚に差があることも判明していて、それ以外にも何か影響していそうな感じがする
  • 匂いへの専門性: 女性は幼い頃から匂いに興味を持ちやすく、匂いに関する知識が男性よりも豊富な傾向があるようだ。その分、臭いの特定などのジャンルでは、男性とは一線を画す成績を残せるのではないか
  • 女性の高度な言語能力: 男性よりも女性の方が、言葉を操る能力が高い傾向にあることがわかっていて、こうした性別による違いが、検証実験の出来に少なからず影響している可能性がある、と過去にも指摘されている

生理的なメカニズムから、実際の検証実験で男女差が出やすい理由まで、あらゆる視点からの考察です。実際には、どれか一つというより、上記のような要素が複雑に絡み合っていると考えるのが現実的かと思います。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、上記の結果は、テストの種類によって効果にばらつきが見られたようです。

というのも、匂いの特定に関しては2種類のテストがあって、そのテスト間で効果量に4倍ほど差があったようでして。察するに、効果が低かった方のテストでは、使われた匂いが男女問わず感知&特定されやすくて、結果的に差がつかなかったのかも…?と。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 「女性の方が嗅覚が鋭い」は本当だった
  • 今回のメタ分析では、匂いの「特定」「嗅ぎ分け」「閾値」という3ジャンルで男女差を比較したところ、僅かながらも全ジャンルで女性の優位性が確認された
  • 性別によって嗅覚に決定的な差こそ生まれないが、一つの重要な要素として間違いなく影響はしていると考えられる

赤羽(Akabane)

どうやら「女性の嗅覚は鋭い!」というあの話は正しかったようです。ただ、具体的にどんな経路が大きく関係しているのか…?匂いの種類によってどんな違いがあるのか…?といった細かい部分はまだハッキリしていない印象です。

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参考文献&引用

#1 Sorokowski P, Karwowski M, Misiak M, et al. Sex Differences in Human Olfaction: A Meta-Analysis. Front Psychol. 2019;10:242. Published 2019 Feb 13. doi:10.3389/fpsyg.2019.00242