毎日の睡眠時間が脳に与える影響とは?30年以上の追跡調査の結果わかったのは…

毎日の睡眠時間が脳に与える影響とは?30年以上の追跡調査の結果わかったのは…

赤羽(Akabane)

今回は「普段の睡眠時間が脳や認知機能に与える影響」についてのお話です。

毎日の睡眠時間が脳に与える影響とは?30年以上の追跡調査の結果わかったのは…

睡眠時間が5時間に満たない、逆に9時間を超えている、など極端だと脳の形状や認知機能にも悪影響があることがわかっていました。

では睡眠時間の括りがそこまで極端ではない場合、脳や認知機能はどうなるんでしょう?

5〜8時間睡眠くらいの差では脳や認知機能への影響に大差ないかも!という長期研究結果

2020年にオックスフォード大学が発表した研究(#1)によると、5〜8時間くらいまでの一般的な睡眠時間内ではそこまで認知機能や脳の構造に差は生まれない!とのことでした。

この研究では、613名(調査開始時平均42.3歳)を対象に、1985〜2013年の間で5度の睡眠に関するセルフレポートと、1度の認知テスト&fMRIを実施していました。

そして彼らを睡眠時間ごとに以下の4つのカテゴリにわけたようです。

  • 5時間睡眠(29名)5.4±0.2時間睡眠
  • 6時間睡眠(228名)6.2±0.3時間睡眠
  • 7時間睡眠(278名)7.0±0.2時間睡眠
  • 8時間睡眠(78名)7.9±0.3時間睡眠

でカテゴリ別に認知テストや脳スキャンのデータと照合して、28年間以上の追跡期間でデータを集めていったところ、こんな結果になりました。

結果
  • どの睡眠時間カテゴリも認知機能や脳の灰白質に有意な差は見られなかった!

まとめると、一般的な睡眠時間のくくりの中では、数十年に渡る長期で見ても認知や脳にそこまでの影響差はなかったんですね。しかもこうした結果は、年齢や性別、学歴の影響を調整しても変わらなかったようです。

注意点・まとめ

この研究は30年とかなり長期的に調査を行っているうえに、途中で5回睡眠時間の再チェックもありました。長期の観察研究では入り口の一回しかこうしたデータ収集をしないことが多いので、この点ではなかなか参考になるデータではないかと思います。

ただし注意点もあって、肝心の睡眠時間の調査アンケートが「何時間くらい寝ていますか?」という単純すぎる質問しかしていない点は押さえておいた方がよさそうです。つまりその他の細かい条件などは一切考慮されていないので、データとしての質はどうしても低くなってしまいます。

また睡眠時間のカテゴリ分けでも、5時間と8時間に分類された人が少ないのも気になる点。この辺りはデータが少ないので、まだ一概に「5~8時間睡眠の間であれば脳や認知機能への影響は変わらない!」とは言い切れない感じはしますね。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 極端な睡眠時間は脳の構造や認知機能に悪影響を及ぼすことが分かっている
  • 今回の30年ちかくにわたる長期研究によると、5~8時間の間の一般的な睡眠時間では、その後脳や認知機能への影響差はみられなかった
  • ただしデータが少ない部分もあるので、このテーマに関してはまだハッキリとした結論は出せない

こんな感じでしょうか。もしかすると5~8時間睡眠という適正な範囲内であれば、睡眠が脳に与える影響ってそれ程大きくないんじゃないか?と。

赤羽(Akabane)

個人的には今回のデータは参考程度に、結論はもう少し良さげな報告が上がってからかなと思っています。睡眠時間も健康にとって非常に大事な要素なので、気になるかたは以下もお読みいただければと思います。

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参考文献&引用

#1 Jennifer Zitser, et al. Sleep duration over 28 years, cognition, gray matter volume, and white matter microstructure: a prospective cohort study. Sleep. 2020 Jan 6. pii: zsz290.