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肉食も菜食も偏ると危険?それぞれに浮かび上がった疾患リスクとは?
今回は「肉食や菜食など偏った食事」についてのお話です。
「肉ばっかりじゃなくて野菜も食べなさい」とはよく言ったものですが、要は何かに偏るんではなくバランスの整った食事をしましょうということですね。
では逆に肉食や菜食主義など、ある食品群に偏った食事をしているとどうなるんでしょう?今回はこのテーマで見てみましょう。
肉食は動脈硬化のリスクを高め、菜食は脳卒中のリスクを高める?
2020年にオックスフォード大学が発表した研究(#1)によると、どうやら肉食も菜食も偏りすぎは良くない!という結果が出たようです。
この研究では心臓や脳血管系に既往歴のない48,188名を対象に、食事調査のデータから彼らの食事内容に応じて3つの群に分類して調査をしていました。それが以下の3つです。
- 肉食(24,428名):肉が主食だが野菜や魚も食べる
- 菜食(16,254名):ベジタリアンやビーガン
- 魚食(7,506名):肉は食べず代わりに魚が主食
食事の調査は最初と途中の計2回行われて、「あなたは〇〇を食べますか?」を聞くシンプルな調査だったみたい。調査期間は18年以上で、心臓や脳血管まわりの疾患のリスクを調べていきました。
すると調査期間を経て、最終的に2,820件の虚血性心疾患、1,072件の脳卒中が発生しました。こうしたリスクと食事内容との相関をチェックしたところ、こんな結果になったようです。
- 魚食と菜食は、肉食より虚血性心疾患のリスクがそれぞれ13%、22%低かった
- 逆に菜食は、肉食より脳卒中のリスクが20%高かった
まとめると、肉食でも菜食でもどちらかに偏っていればそれぞれについて回る疾患があるんだ、と。しかもこうした結果は年齢や性別などのステータスや他の生活習慣を考慮したうえで出ているので、より食事が影響している可能性が高いと言えましょう。
またこの調査ではリスクの数値を分かりやすく例えてくれていました。
- 菜食は肉食よりも虚血性心疾患が10件少なくなる
- 菜食は肉食よりも脳卒中が3件多くなる
こうしてみると少なく思われるかもしれませんが、食事の内容一つでこれだけ変わるなら食生活に気を遣う価値も十分あるんではないかなと思います。
注意点・まとめ
ただし幾つか注意点もあって、ざっと以下は押さえておくとよろしいかと思います。
- 食事の調査がシンプルすぎる:「あなたは肉を食べますか?」みたいな質問を4問しかぶつけていないので、データの精度は低め
- 食事の内容と疾患の間の因果関係は特定できない:他の生活習慣や年齢、性別などステータスは考慮されているが、研究のデザイン上、食事が疾患リスクに影響を与えているという根拠にはならない
- 考慮し切れていない要素は他にもある:例えば薬の服用などについては調整できていない様子
今回の研究は長期ですし、途中に食事内容の再確認を行っている点も良かったんですが、アンケートの中身が単純すぎたかな..?という印象です。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 肉食も菜食も偏るとそれぞれについて回る疾患リスクがあった
- 菜食は肉食よりも虚血性心疾患リスクは低かったが、逆に脳卒中リスクは高かった
- どれかに偏るなら魚食が一番無難かも!という面白い可能性も示唆している
こんな感じでしょうか。今回の研究は「肉よりも魚!」という主張を支持する結果にもなりましたね。
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Tammy Y N Tong, et al. Risks of ischaemic heart disease and stroke in meat eaters, fish eaters, and vegetarians over 18 years of follow-up: results from the prospective EPIC-Oxford study. BMJ 2019; 366.