28年間に及ぶ追跡調査の結果「睡眠時間が多少増減しても認知機能や脳の構造にあまり影響はない」

28年間に及ぶ追跡調査の結果「睡眠時間が多少増減しても認知機能や脳の構造にあまり影響はない」

赤羽(Akabane)

今回は「睡眠時間と脳や認知機能の長期的な関係」についてのお話です。

28年間に及ぶ追跡調査の結果「睡眠時間が多少増減しても認知機能や脳の構造にあまり影響はない」

睡眠時間については、個人差こそありますが、成人している方であれば大体7時間くらいが推奨されています。

こうした見解は国立睡眠財団とも一致していて、まず迷ったら7時間睡眠を目指していけば間違いないかと思います。

ただ、睡眠時間に関しては、長期にわたって何度もしっかり追跡した研究は案外少ないのが現状です。というわけで、この記事では睡眠時間と認知機能の関係を28年にわたって追跡した調査データを見ていきます。

睡眠時間が多少前後したところで脳や認知機能への影響はほとんどない!という調査結果

2020年にオックスフォード大学の教授らが発表した研究(#1)によると、最適な睡眠時間とされる「7時間」を多少前後したところで、脳の灰白質や認知機能への悪影響は特に見られなかったことが分かりました。

この研究は、613名(調査開始時で平均42.3 ± 5.03歳)を対象に、彼らの睡眠を1985~2013年のおよそ28年間追跡したものです。

期間中、参加者は睡眠に関するセルフレポートに答える機会が5回設けられて、2012~2016の間には認知テストやfMRIによる脳の測定も行われました。そして、セルフレポートの結果に応じて、参加者らを4つの群に分けたようです。

  • 平均5.4 ± 0.2時間睡眠(29名)
  • 平均6.2 ± 0.3時間睡眠(228名)
  • 平均7.0 ± 0.2時間睡眠(278名)
  • 平均7.9 ± 0.3時間睡眠(78名)

すると上記の分類から、以下のようなことが分かりました。

結果
  • どの群も脳の灰白質や認知機能に差は見られなかった!

どうやら、どの睡眠時間の群も、長期的な脳の構造や認知機能に有意な差は見られなかっみたいですね。

こうした結果は、2013年の研究(#2)でも報告されていて、まだ研究数は少ないものの、睡眠時間のちょっとした増減によって認知機能や脳の構造には大した影響はないのかもしれません。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ざっと以下の点は押さえておくとよろしいかと。

注意
  • 両極端の睡眠時間群に分類された人は少なかった: 5時間や8時間睡眠の人は、全体の5%、13%しかおらず、統計的なパワーは弱い
  • 睡眠に関する調査はセルフレポート: 睡眠時間のデータは、主観が混じる分正確性が落ちる
  • 調査データの人たちの学歴は軒並み高い: サンプルに偏りがあるということで、一般化できる範囲が制限される

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 近年の成人の推奨睡眠時間は7時間とされていた
  • 今回の28年に及ぶ調査によると、5~8時間睡眠の間では、認知機能や脳の構造に差は見られなかった
  • ただ、両極端の睡眠時間群のサンプルは少ないので、まだハッキリしたことは言えない

赤羽(Akabane)

意外な可能性が示唆されましたが、今回の報告を受けて「寝なくても脳に影響はないんだ!」「いっぱい寝ても認知機能には関係ないのね」と解釈してしまわれないようご注意ください。私は、当面は睡眠時間7時間あたりを目指していく所存です。

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参考文献&引用

#1 Jennifer Zitser, Melis Anatürk, Enikő Zsoldos, Abda Mahmood, Nicola Filippini, Sana Suri, Yue Leng, Kristine Yaffe, Archana Singh-Manoux, Mika Kivimaki, Klaus Ebmeier, Claire Sexton, Sleep duration over 28 years, cognition, gray matter volume, and white matter microstructure: a prospective cohort study, Sleep, Volume 43, Issue 5, May 2020, zsz290, https://doi.org/10.1093/sleep/zsz290

#2 Gilmour H, et al. Longitudinal trajectories of sleep duration in the general population. Heal Rep. 2013;24(11):14–20.