赤羽(Akabane)
目次
「なかなか寝付けない…」という不眠症の訴えがうつ病発症の重要なカギかもしれない
睡眠の量や質が低下すると、メンタルヘルスにも影響があることが分かっています。
ところが、この記事ではもう一歩踏み込んで「不眠症の訴えの中でも特にあのカテゴリが重要かも..?」というデータを見ていきます。
不眠症の中でも「寝付けない」という項目がうつ病発症リスクと深い関係に?
2020年にオランダの研究チームが発表した研究(#1)によると、不眠症の中でも「なかなか寝付けない…」という項目が高い程、その後のうつ病発症リスクと深い繋がりがあることが分かりました。
この研究は、オランダのうつや不安症に関する調査データから768名(平均41歳)を対象に、彼らの生活を6年間追跡したものです。
対象者は、調査開始時点でうつ病を発症したことがない人たちで、調査項目はうつ病、不眠症スコアや睡眠時間などです。こうした調査を、うつ病スコアを除いて期間中に4回行いました。
- 睡眠時間…「短時間睡眠」の基準は”最短6時間~”として、参加者の睡眠時間を調査
- 不眠症スコア…5つの項目に0〜4のスケールで回答してもらう(寝つき、中途覚醒、予定より早く目覚めてしまうなど)
- うつ病スコア(初回のみ)…30問に0〜3のスケールで回答してもらう診断テスト
すると調査期間中に、141名がうつ病と診断され、そこから以下のようなことが分かりました。
- 睡眠時間の長さは期間中のうつ病発症リスクと関係なかった
- 不眠症スコアが1ポイント増加するごとに、期間中のうつ病発症リスクが11%増加した(HR = 1.10, 95% CI: 1.04–1.16; 0〜20ポイントの間まで)
- 不眠症のカテゴリの中では、「寝付けない」という項目のスコアが1ポイント増加するごとに、うつ病発症リスクが33%増加した(HR = 1.33, 95% CI: 1.12–1.57; 0~4ポイントの間)
まとめると、睡眠時間の長さはうつ病発症リスクとは特に関係が見られず、唯一相関が見られたのは不眠症の中でも「寝付けない…」という訴えでした。どうやら、布団に入ってからなかなか寝付けないタイプの不眠症は、うつ病と深い関係にあるようです。
また不眠症のスコア別に比べてみると、不眠症スコアが最も低い人(0点)と、不眠症の疑いがある境目にある人(9点)を比べると、発症リスクは2.6倍も違っていて、最も高い人(20点)と比べると、なんと8.1倍も違うみたい。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
今回の調査の利点としては、これまでの類似研究と比べても、うつ病の既往歴がある人は排除されていたり、調査期間中に数回追跡調査を行っていること、正式な診断ツールを使っていることなどが挙げられます。なかなかデータの精度も高まる要素が盛り込まれていますね。今後は、色々な国や文化圏で追試がなされるとよろしいかと思います。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 不眠症の中でも「なかなか寝付けない…」という項目が深刻な程、その後のうつ病発症リスクが高まることが判明
- 今回の研究によると、睡眠時間の長さはうつ病発症リスクとは関係がなく、不眠症の他の項目(中途覚醒、予定より早く目覚めてしまうetc..)もあまり関係がなかったという
- よって、不眠症とうつ病発症の関係には「寝付きの良さ」が深く関係している可能性が示唆された
赤羽(Akabane)
関連記事はこちらもどうぞ
快眠の大敵「不眠症」を55%改善させるたった4つのルールとは?「不眠症」は大きく5つのタイプに分けられることが判明。不眠症な人には「ある共通点」が見られることが判明。睡眠の権威に学ぶ「不眠症のための認知行動療法(CBTI)」で眠れない夜と確実におさらばする方法木造の家や木に囲まれた寝室で眠る人ほど不眠症を訴える割合が少ないらしい参考文献&引用
#1 Tessa F Blanken, Denny Borsboom, Brenda Wjh Penninx, Eus Jw Van Someren, Network outcome analysis identifies difficulty initiating sleep as a primary target for prevention of depression: a 6-year prospective study, Sleep, Volume 43, Issue 5, May 2020, zsz288, https://doi.org/10.1093/sleep/zsz288