赤羽(Akabane)
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「他人との比較はよくないよ」この世間の常識を鵜呑みにする前に押さえておきたい健全な比較とまずい比較とは?
世間一般には、「他人と比べてもろくなことないよ」といったアドバイスをよく耳にしますが、これは比較という行為を全面否定するものなんでしょうか?
ここからは比較とは何なのか?を「社会的比較理論」という枠組みで見ていきましょう。
社会的比較理論とは?
「社会的比較理論」とは、1954年に社会心理学者のレオン・フェスティンガー氏が提唱した説(#1)で、ザックリ言うと、人は自分自身の社会的な立ち位置や評価を知りたいという内なる欲求があって、それを知るための一つの方法として他人との比較を行う、というもの。
例えば、中学で新しくサッカー部に入部した子どもが居ました。彼は初心者で、自分がどのくらいの実力なのかわかりません。こうした場合にも、きっと彼は周りの部活の同級生や先輩のプレイをみて、自然に彼らと自分の実力を比べるでしょう。
こうした比較は必ずしも卑しいものじゃなくて、人によってはそこから自分の実力不足を痛感して、「よし!もっと練習頑張ろう!」と思えたりもします。
この例のように、まず前提として比較にも色々な種類があるぞ!というところは押さえておいたほうがよろしいかと思います。
比較の2つの種類とは?
では比較にはどんな種類があるのでしょう?これには大きく分けると2つあって、
- 上方比較:何かにおいて、自分より上の他人と自分を比べる比較。現状を改善するために自分より優れた他人から何かを得ようと比べることもあるが、一方で自分も上位集団の一員である、という安堵感を得るために使われることもある。
- 下方比較:何かにおいて、自分より下の他人を見つけて比べる比較。自分より下が居るという一時の安心感や心地よさを求めて使われることが多い。
ザっとこんな感じです。一応、その後の研究で「横比較(対等比較)」なんてものも出てきましたが、メジャーなのは上の2つでしょうか。
健全な比較とまずい比較とは?
とここで初めに戻りますが、「他人と比べてもろくなことないよ」といったアドバイスはどんな場合に適用されるんでしょうか?
これについては、2018年にマドリード自治大学とクィーンズ大学が発表したレビュー研究(#2)が参考になりそうです。
では早速研究で示されたポイントを並べてみると、
- 下方比較よりは上位比較のほうがメンタル的に「まずい比較」になりやすい(上を見ると劣等感に苛まれやすいから)
- ただし上方比較でも「まずい比較」になるかどうか大事なポイントがあって、それは比較対象を自分と違うと思っているか、似ていて近い存在だと思っているか?
- 比較対象を「自分と違う存在」だと思っているほどメンタル的に「まずい比較」になりやすい
このようなことが現段階分かっているようです。つまり精神衛生上は下方比較のほうが安パイだ、と。
ただこれは「下方比較万歳!上方比較はよくない!」という単純な話ではなくて、当然下方比較もそればかり続けていれば別の問題が出てくるので注意。(上が見えないので上達しない、努力しなくなるetc..)
それに、向き合い方さえ気を付ければ、上位比較のほうが長期的に見て自分の為になることが多いようにも思います。
まとめ
ということで今回の内容をまとめると、次のようになりましょうか。
- 「他人との比較はよくないよ」は状況による
- そもそも「社会的比較理論」によると、人間にとって比較という行為は自身の社会的な立ち位置や評価を知るのに必要なもの
- ただし他人と比べて劣等感に苛まれたり、メンタルによくない比較は少ないほうが良さそう
比較にも色々あって、他人と比べて卑屈になるような比較は控えめに!と言えるでしょう。上方比較をするなら、自分が惨めに思えたり劣等感を強く感じるようなレベルの比較はせずに、自分自身に努力を促すような比較が理想かと。
赤羽(Akabane)
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#1 Leon Festinger. A Theory of Social Comparison Processes. Human Relations 1954 7: 117.
#2 Joshua J. Guyer, Thomas I. Vaughan-Johnston. Social Comparisons (Upwardand Downward). Encyclopedia of Personality and Individual Differences, July 2018.