【抗うつ剤との比較】セントジョーンズワートのうつ病への効果や副作用は?サプリは飲むべき?過去のエビデンスをまとめた結果

【抗うつ剤との比較】セントジョーンズワートのうつ病への効果や副作用は?サプリは飲むべき?過去のエビデンスをまとめた結果..

赤羽(Akabane)

今回は抗うつ作用で知られる「セントジョーンズワート」についてのお話です。

セントジョーンズワートのうつ病への効果や副作用は?サプリは飲むべき?過去のエビデンスをまとめた結果..

本題の前に、まずはセントジョーンズワートって何?というところからおさらいしておきましょう。

セントジョーンズワートとは?

セントジョーンズワート(#1)は、オトギリソウ科の多年草「セイヨウオトギリ」から抽出したハーブで、うつ病改善のサプリとしてヨーロッパを中心に広く浸透しています。

ではまず、セントジョーンズワートのうつ病改善効果をプラセボ(偽薬≒効果のないサプリ)との比較から見ていきましょう。

セントジョーンズワート vs. プラセボグループ(偽薬)のうつ病改善効果対決

2008年にコクラン共同計画が発表したメタ分析(#2)では、29件のRCT(二重盲検)から5489名のうつ病患者を対象に、セントジョーンズワートのうつ症状改善効果を調べました。

研究にはプラセボグループとの比較だけではなくて、抗うつ剤を使うグループとの比較もありましたが、ここではプラセボとの比較をした18件だけを見ていきます。

実験は4~12週間の期間で行われて、この結果次のようなことが分かりました。

結果
  • うち9件の大規模な実験では、セントジョーンズワートでうつ病改善効果が報告された割合はプラセボより28%高かった
  • うち9件の小規模な実験では、セントジョーンズワートによるうつ病改善効果が報告された割合はプラセボより87%高かった

まとめると、セントジョーンズワートは全体的にプラセボよりうつ病改善効果が得られたんですね。ただし、大規模で比較的質の高い研究でみると、その効果はやや慎ましいものになります。

またこの研究では、ドイツで行われた実験で比較的高い効果が得られたようですが、こうした中には実験デザインが緩くて質が低いものが混ざっていて、その結果高く出てしまった可能性がありそうです。

では次に、セントジョーンズワートのうつ病改善効果を定番の抗うつ剤と比べたまとめを見ていきましょう。

セントジョーンズワート vs. 定番の抗うつ剤(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)のうつ病改善効果対決

2016年に首都医科大学が発表したメタ分析(#3)では、27件のRCTから3126名のうつ病患者を対象に、セントジョーンズワートのうつ症状改善効果を調べました。

ここでは効果の比較をするために、セントジョーンズワート vs. 有名な抗うつ剤(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:SSRIs)という構図で実験を行っていた研究のみを対象にしています。

でこうした実験を4~12週間の期間で行った結果、次のようなことが分かりました。

結果
  • セントジョーンズワートとSSRIsはうつ病改善に同じくらい効果があった
  • セントジョーンズワートはSSRIsよりも副作用が少なくて、禁断症状もその分少なかった

どうやら、セントジョーンズワートはうつ病患者の症状改善に対して、定番の抗うつ剤と同レベルの効果が得られたみたいなんですね。しかも副作用や禁断症状の症例もSSRIsより少なかった、と。

こうした結果はさっき紹介した2008年のメタ分析(#2)や、2009年に同じテーマで行われたメタ分析(#4)でも得られていて、今回はこれらのデータが改めて質の高いデータとしてアップデートされた感じです。

ただいずれにしても、実験期間は4~12週間と短期なので、年単位で見た長期的な服用の安全性についてはまだよくわかっていません。

まとめ

では以上を踏まえて、最後に今回の内容をまとめます。

ポイント
  • セントジョーンズワートはオトギリソウ科の多年草「セイヨウオトギリ」から抽出したハーブ
  • プラセボ(偽薬)よりも高い抗うつ効果が、定番の抗うつ剤と比べても同レベルの効果が得られた
  • ただしこの効果は4~12週間の短期間のもので、長期的な効果や安全性についてはハッキリしていない

ザっとこんな感じでしょうか。最大12週間までの短期的な効果で言えば、抗うつ剤に匹敵するうつ病改善効果が得られるかもしれない、と。

ただサプリなどで使用したい場合は、必ず専門のお医者さんに相談してから服用するようにしたほうが良いです。どうやら他の医薬品に干渉することが多い(#5)みたいなので。

赤羽(Akabane)

結論、うつ病を抱えている方にはかなり効果が見込めそうですが、それ以外の方がわざわざ摂る必要はなさそう。サプリなどの摂取を検討されている方は、ご使用の前にお医者さんの指示を仰ぐことをお忘れなきよう。ちなみに摂取量はハッキリとは定まっていないようで、実験では大体一日当たり300~1800mgの間で使われていました。

定番メーカーのセントジョーンズワートサプリ

参考文献&引用

#1 About the cover: St. John’s wort. J Soc Integr Oncol. 2006 Winter;4(1):52-5.

#2 Linde K, Berner MM, Kriston L. St John’s wort for major depression. Cochrane Database Syst Rev. 2008 Oct 8;(4):CD000448.

#3 Yong-hua Cui and Yi Zheng. A meta-analysis on the efficacy and safety of St John’s wort extract in depression therapy in comparison with selective serotonin reuptake inhibitors in adults. Neuropsychiatr Dis Treat. 2016; 12: 1715–1723.

#4 Rahimi R, Nikfar S, Abdollahi M. Efficacy and tolerability of Hypericum perforatum in major depressive disorder in comparison with selective serotonin reuptake inhibitors: a meta-analysis. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2009 Feb 1; 33(1):118-27.

#5 厚生労働省「セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)と医薬品の相互作用について」2019年8月4日アクセス。