赤羽(Akabane)
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日本の高齢者約1万人を調査してわかった「認知症予防としてのウォーキングの大切さ」
早速ですが、このテーマについて参考になる研究たちを覗いてみましょう。
舞台は日本!ウォーキングで認知症が予防できる?
まずは2017年に東北大学大学院医学系が発表した研究(#1)で、「大崎コホート」という宮城県の人たちのデータから、6909名(平均74.6歳)の高齢男女を対象にした健康調査です。
ここでは彼らがウォーキングに費やす一日当たりの時間をアンケートデータを使って集めて、これを5.7年間のうちに起こった認知症発症リスクと比較して相関を見ていったようです。
すると結果、追跡期間のうちに9.2%が認知症を発症しました。そして次のようなことが判明しました。
- 一時間以上歩く人は、一日に30分も歩かない人と比べて認知症発症リスクが28%低かった
どうやら、ほとんど歩かない人に比べて、一日に1時間以上歩く活発な人は認知症リスクが低かったんですね。
ウォーキングは認知症とどのくらい関係あって、どのくらい歩けばいいの?
続いても2019年に東北大学大学院医学系が発表した研究(#2)で、今度はさっきの研究よりも細かく調査してくれています。
これは13990名(平均73.8歳)の高齢男女を対象に、一日当たりにウォーキングに費やす時間毎にその後の認知症発症リスクがどのくらいか?までを調査していて、ザっとどのくらい歩けばいいか?の目安ができるかと。
こちらも5.7年の追跡期間後、認知症を発症をした人は1245名(8.9%)に上りました。そしてこの結果、次のようなことが分かりました。
- 30~1時間歩く人はリスクが19%低かった
- 1時間以上歩く人はリスクが28%低かった
どうやら全然歩かないよりは、一日30分~1時間でもしっかり歩く時間を作った方が良さそうですね。
また、他にもこんなことも分かっています。
- 今回の対象者全員が一日に1時間以上歩いていたら、発症件数のうち18.1%は防げたかもしれない
- 対象者各自が1レベルだけでも一日に歩く時間を増やしていたら、14.0%は防げたかもしれない(例:30分未満→30分~1時間)
ここから言えるのは、ウォーキングのメリットも馬鹿にならないということでしょう。毎日しっかり歩くだけでもこれだけ認知症リスクが変わるなら、選択肢は歩く一択かなと思います。
注意点・まとめ
ただし、これらの研究には注意点もあります。例えば「ウォーキングの質や中身」が考慮されていないので、どの程度で歩けばいいのか?が分からないです。
また研究のデザイン上、ウォーキング以外の生活習慣(食事や睡眠、飲酒など)が考慮しきれないので、数字もあまり正確とは言えないかもしれませんね。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 日本の高齢者向けの調査によると、認知症予防にウォーキングは効果的みたい
- 一日に30~1時間だけでも認知症リスクはまあまあ低かった
- 運動不足と認知症の相関は確立されているので、歩いて損はなさそう
こんな感じでしょうか。具体的な数字は参考程度に、とりあえず【ウォーキングは認知症予防になりそうだ!】というところを押さえておくと良さそうですね。
赤羽(Akabane)
認知症対策はこちらもどうぞ
【2019年最新版】WHO(世界保健機関)が推奨する「認知症を予防する12の方法」寝ている間の「あの頭の向き」で認知症の発症リスクが高くなるかもしれない。参考文献&引用
#1 Tomata Y, Zhang S, Sugiyama K, et al. Changes in time spent walking and the risk of incident dementia in older Japanese people: the Ohsaki Cohort 2006 Study. Age Ageing. 2017 Sep 1;46(5):857-860.
#2 Tomata Y, Zhang S, Sugawara Y, Tsuji I. Impact of time spent walking on incident dementia in elderly Japanese. Int J Geriatr Psychiatry. 2019 Jan;34(1):204-209.