限界的練習はやっぱりパフォーマンス向上や分野での成功に大事な要素だ!という異論

限界的練習はやっぱりパフォーマンス向上や分野での成功に大事な要素だ!という異論

赤羽(Akabane)

今回は「限界的練習ってやっぱり成功に大事な要素じゃない?」というお話です。

限界的練習はやっぱりパフォーマンス向上や分野での成功に大事な要素だ!という異論

まずは「そもそも限界的練習って何?」というところからザっとおさらいしておきましょう。

楽なトレーニングじゃ意味がない?「限界的練習」とは

限界的練習は、フロリダ州立大学のアンダース・エリクソン教授が提唱した概念で、学問やスポーツなどで成功するには、時間だけじゃなく意識的でフィードバックのある練習が不可欠だ!というもの。

聞く感じは納得の話だったんですが、これが2014年のメタ分析(#1)ではスパッと否定されていて、限界的練習ではパフォーマンス上達の個人差のたった3割以下しか説明できない!との報告になっています。

限界的練習ってやっぱり物事の上達に大事な要素じゃない?という研究結果

しかしこの問題について、2018年にウィスコンシン大学マディソン校が発表した研究(#2)では、「やっぱり限界的練習は物事の上達や成功に重要な要素だ!」と異論が唱えられていました。

では具体的にどんな根拠なんでしょう?この研究は、さっきも触れた2014年のメタ分析(#1)の再試を行なっていて、これにはこんな訳があったようです。

  • 含んでも良い対象研究の条件が広いし甘い
  • よく見ると限界的練習をしていない研究も含まれている

そしてこれらを踏まえて、厳密に限界的練習をテーマにした研究だけに絞って再試を行なってみたところ、オリジナル研究で含まれた88件のうち18件の研究が条件をクリアできなかった様子。これらは限界的練習ではなく練習に割いた時間の長さを見ていたようで、結果的に外されました。

で限界的練習の効果をしっかり検証できているもの、できていないものとを分けて別々にみていったところ、次のようになったようです。

結果
  • 限界的練習を見た研究でまとめると相関がちょっと強まった
  • 練習時間の長さだけを見ている研究だけで分析すると相関が弱まった

まとめると、前回の分析結果よりもいくらか高い効果が検出されたんですね。そして練習の時間に注目した研究だけだと、効果はもっと低めに出ていますね。

注意点・まとめ

研究チームは、今後限界的練習の研究が行われるなら、次の4項目は少なくともクリアしているべきだと仰っていました。

  1. 個々にフィットする学習内容を用意すること
  2. 練習中のパフォーマンス・学習のフィードバックは欠かさずに
  3. 指導をするコーチを傍につけよう
  4. 一人で行う練習では数をこなすごとに改善の意識を持つこと

どれも限界的練習の基本のキですね。意外にも提唱者であるエリクソン教授の研究でさえ、この定義にバラつきが見られます。意外に解釈を統一するのは難しいのかも..。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 限界的練習は勉強やスポーツで上達するのに欠かせないとされる概念
  • 前回のメタ分析では「大して重要な要素ではない」と烙印を押された
  • しかし同じデータを再分析してみると、限界的練習の定義から外れた研究が多く、正確にはもう少し効果が高まった

こんな感じでしょうか。前回とは打って変わって、「限界的要素って、やっぱりよく見たらまあまあ大事じゃない?」という感じですね。

赤羽(Akabane)

着地点がハッキリ見えませんが、ひとまずは「限界的練習はあまり上達に意味なし!」ということはなくて、それなりに重要なウェイトを占めるかも..と捉えておくと良さそうです。

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参考文献&引用

#1 Macnamara BN, Hambrick DZ, Oswald FL. Deliberate practice and performance in music, games, sports, education, and professions: a meta-analysis. Psychol Sci. 2014 Aug;25(8):1608-18.

#2 Scott D. Miller, Daryl Chow, Bruce E. Wampold, et al. To be or not to be (an expert)? Revisiting the role of deliberate practice in improving performance. High Ability Studies, December 2018.