赤羽(Akabane)
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メタ分析: フィードバックの学習効果はどれ程のものなのか?
「学習には常にフィードバックが大事!」とはよく言ったものですが、この主張は1996年のメタ分析(#1)でも裏付けられています。
「自分がどの位のレベルにいるのか?」やスポーツでは「今のは正しいフォームだったか?」など、学習過程で自分を客観視することが大事だというのは納得のいく話かと思います。
ということで、この記事ではフィードバックの学習効果はどれ程のものなのか?を改めて見ていきます。
435件の過去研究をまとめたメタ分析によると…
2020年にアウクスブルク大学が発表したメタ分析(#2)によると、改めてフィードバックによる学習効果向上が確認されたみたいですが、同時に大事なポイントも判明したようです。
この研究では、435件の過去研究から61,000名のデータを集めて、フィードバックの効果の大きさや、効果のバラつきなどをまとめています。
詳しい調査項目
- 研究デザイン:効果の比較が複数のグループ間でされるか、同じ参加者の実験前後の違いによってされるのか
- 出版タイプ:論文研究が出版済/未出版
- フィードバックのタイプ:褒める/罰、修正(正しいか間違っているか?正しいやり方はこうだ)、情報の付与
- 結果の測定項目:認知テスト、運動スキル、モチベーション、行動の変化
- フィードバックの経路:口頭、文面、音声、動画
- フィードバックの方向性:そのフィードバックは誰が与えて誰が受け取るのか
では分析の結果を見ていきましょう。
- 極端な結果が出ているものを除くと、フィードバックの学習効果は全体で中くらいだった (d = 0.48)
- ただし効果には研究によってかなりバラつきが見られ、上記調査項目6つのうち5つの影響を有意に受けていた(I2 = 83.40%)
- フィードバックは、モチベーションアップや行動を変える効果よりも、認知機能や運動スキルを高める効果の方が高く、フィードバックの内容は、より細かい情報を与えてやる方が効果的だった
まとめると、フィードバックが学習効果を高めてくれるのは間違いないようですが、同時に「ただ単にフィードバックなら良いというわけじゃない!」ということも分かりました。
「d = 〇〇」の値は効果量というもので、そのまま効果の大きさを表しています。基本的には、「d = 0.7」辺りを超えると効果が大きいと判断されますが、学習効果を測定した効果量がここまで高いのはなかなか見られませんね。
「I2 = 〇〇%」は結果のバラつきを表していて、今回の結果はかなり大きめ。それもこれも、フィードバックのタイプや結果の測定項目など、色々な要素が影響していたようで、細かく見ると以下の通りです。
5つの調査項目別の結果(d =)
- 研究デザイン:
- グループ間比較…0.42
- 実験前後比較…0.63
- 出版タイプ:
- 出版済…0.49
- 未出版…0.36
- フィードバックのタイプ:
- 褒める/罰…0.24
- 修正…0.46
- 情報の付与…0.99
- 結果の測定項目:
- 認知テスト…0.51
- モチベーション…0.33
- 運動スキル…0.63
- 行動の変化…0.48
- フィードバックの方向性:
- 先生→生徒…0.47
- 生徒→先生…0.35
- 生徒→生徒…0.85
上記で重要なのは、「フィードバックのタイプ」と「結果の調査項目」でしょうか。フィードバックの際は、詳しく情報を与えてあげるのが大事で、特に認知機能や運動スキルの向上に役立つということが示唆されています。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくとよろしいかと思います。
- 対象の研究が出版された年が比較的古い:出版年の中央値が1985年だったり、過去10年の研究がかなり少ないことから、前回からあまりアップデートされていない
- 一部調査項目は対象にしていた研究数が少なかった:特に「結果の測定項目」の「運動スキル」や、「フィードバックの方向性」の「生徒→生徒」「生徒→先生」辺りは実証研究が少なめ
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 過去の研究も踏まえて、フィードバックの学習効果はなかなかのものだと言えそう
- フィードバックの中身は、褒めたり罰を与えたり、正しいかどうか?だけを教えるのではなく、より詳しい情報を与えてやった方が効果が高かった
- 行動を変えたりモチベーションをアップさせるよりも、認知テストや運動スキルの向上に役立ちそうだ
赤羽(Akabane)
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#1 Kluger, A. N., & DeNisi, A. (1996). The effects of feedback interventions on performance: A historical review, a meta-analysis, and a preliminary feedback intervention theory. Psychological Bulletin, 119(2), 254–284.
#2 Wisniewski B, Zierer K, Hattie J. The Power of Feedback Revisited: A Meta-Analysis of Educational Feedback Research. Front Psychol. 2020;10:3087. Published 2020 Jan 22.