「女性は男性よりもマルチタスクが得意!」というステレオタイプは果たして本当なのか?

「女性は男性よりもマルチタスクが得意!」というステレオタイプは果たして本当なのか?

赤羽(Akabane)

今回は「女性は男性よりもマルチタスクが得意!って本当なの?」というお話です。

「女性は男性よりもマルチタスクが得意!」というステレオタイプは果たして本当なのか?

「女性の方がマルチタスクが得意だ」という話があります。例えば、電話をしながら家事をこなしたり、子どもをあやしてからすぐ作業に戻るという感じですが、確かに女性はテキパキ複数のタスクをこなすよなぁと直感的には頷ける話でしょう。

というわけで、今回はこのテーマを検証した実験について紹介していきます。

2013年の研究!女性が男性よりもマルチタスクが得意なのはほんの一部では?

2013年にリーズ大学の研究者らが発表した研究(#1)によると、女性は男性と比べて一部マルチタスクが得意かもしれないが、言われてる程ではない!という結論になっていました。

この研究では、大きく2つの実験を行っていまして、概要はザっと以下の通りです。

  • 実験①: 120名ずつの男女を対象に、画面に映し出された図形に応じて両手のボタンを適切に押してもらうタスクを行う。図形がダイヤモンドなら左手、四角形なら右手。また図形の中に丸が2つか3つ同時にあって、こちらも2つなら左手、3つは右手というルール。そして毎回図形か丸の数か指定があって、その指示に応じてボタンを押さなくてはならない
  • 実験②: 47名ずつの男女を対象に、3つのタスクを各々の裁量で順にこなしてもらう。1つ目はカギを探すのにどんなルートで探すかをスケッチしてもらう課題で、2つ目は地図の中からあるレストランのシンボルを探し出す課題、3つ目は簡単な算数の問題を解く課題。タスク中には一度電話がかかってきて、一般常識を問うクイズが数問出題され、参加者の集中力を削ぐようにした

要は、手元と頭がごっちゃになるようなタスクを行ったりして、男女で反応速度や正確性、出来具合に差が出るんだろうか?と。果たして、実験の結果は以下のようになりました。

結果
  • 実験①では、図形と丸の数で押すべきボタンがごっちゃな時に男女どちらも反応速度がガクッと下がったが、男性の方が有意な低下だった
  • 実験②では、地図や算数の課題、途中の一般常識クイズの成績は男女で差は見られなかった
  • ところが、カギを探すルートの課題でのみ、女性で有意に成績が良かった

ここから言えるのは、一部女性に優位な結果になってはいるものの、言われている程のハッキリした性別差はないんじゃないか?ということ。これを踏まえて、もう一つ最近の研究データも見ておきましょう。

2019年の研究!女性は男性よりもマルチタスクが得意とは言えないのでは?

2019年にアーヘン工科大学が発表した研究(#2)によると、女性は男性と比べて格別マルチタスクが得意とは言えないのでは?という結論になっていました。

この研究では、48名ずつの男女(平均24歳)を対象に、タスクを切り替えたり、複数を同時にこなす課題を行っています。一応、性別による認知機能やメンタルヘルスなどの差を排除するために、参加者は認知テストやアンケート調査の結果、均等に選ばれたようです。

課題の具体的な中身は、文字を子音か母音か、数字を奇数か偶数かで識別するものでして、加えて対象が表示される位置に応じて押すキーを変えなければならないというトリッキーなタスクです。これを文字から数字へ意識を途中で切り替えたり、両者を同時に処理したりしていくことで、マルチタスクが上手くできているかをチェックしているんですね。

そして実験の結果は、「性別によっては課題の成績に有意な差は見られなかった!」という感じに。課題のエラー率や反応速度などのパフォーマンスは、タスクの切り替えが必要な時や同時に2つをこなす時など、複雑な状況で性別に関係なく落ちたみたいです。(例:数字→数字よりも数字→文字の方が複雑)

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、どちらの研究も割と若い人を対象にしているので、高齢になるとどうなるか?は分かりません。

また、他の研究(#3)では「2つのことを同時にこなす力量は女性の方が高い!」という結果になっていたり、結果の食い違いは多少見られます。つまり、マルチタスクとひと口に言えど、分野によって女性が力を発揮できる領域は限られているのかも…?という風にも解釈できるという事です。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 「女性は男性よりもマルチタスクが得意!」というステレオタイプは実験によってあまり裏付けられていない
  • タスクをスイッチしたり、異なる2つのタスクを同時にこなしたりする課題では、女性の優位性は限定的であるか、ほとんど見られないことが分かっている
  • ただし、これまでの研究結果をまとめると食い違いも幾らかあるので、今後は細かくマルチタスクの特性ごとに分けて検証数を増やす必要がありそうだ

赤羽(Akabane)

現段階ではモヤモヤする結論ですが、一つ言えることは「女性は男性よりもマルチタスクが得意!」というステレオタイプはさほど信憑性がないということです。

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参考文献&引用

#1 Stoet, G., O’Connor, D.B., Conner, M. et al. Are women better than men at multi-tasking?. BMC Psychol 1, 18 (2013). https://doi.org/10.1186/2050-7283-1-18

#2 Hirsch P, Koch I, Karbach J (2019) Putting a stereotype to the test: The case of gender differences in multitasking costs in task-switching and dual-task situations. PLoS ONE 14(8): e0220150. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0220150

#3 Mäntylä T. Gender differences in multitasking reflect spatial ability. Psychol Sci. 2013;24(4):514-520. doi:10.1177/0956797612459660