赤羽(Akabane)
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完璧主義は自殺願望、下手すれば完遂まである危険な思想である
「完璧主義はメンタルに悪い!」というのは有名な話で、特に近年では、完璧主義がメンタルや体の健康に悪影響であることが分かっています。
- 完璧主義は自殺願望や自殺遂行率を高める!(#1)
2018年にはこのような衝撃のメタ分析が発表されているんですね。ちなみにこんな結果になってしまう原因としては、以下のような流れが考えられています。
- 周りからの期待に応えなきゃ…と自分を追い詰める
- 親が毒親で子に過度な期待をする
- 失敗を恐れる
つまり「周りの期待に応えて…云々」といった完璧主義は非常にメンタルに悪影響だ、と。
→期待に応えようと頑張る
→期待が自分の能力を超えると上手くいかなくなる
→次第に追い込まれてメンタルを病む
科学的な信頼も厚い性格診断「ビッグ5」のアレとアレが完璧主義と関係あり?
では次に「ビッグ5性格診断」についてもおさらいです。ザっと以下の通りです。
- 誠実性..真面目さ、勤勉さ
- 神経症性..心配性、繊細さや不安傾向
- 開放性..新しいこと、変化を受け入れる度量
- 協調性..周囲への配慮や協力
- 外向性..人間関係の構築やいわゆるコミュ力など
大まかにこの5つの性格特性の強さを測る性格診断で、現時点で科学的なデータも多いと言われています。詳しくはこちらをザッとご覧ください。

これを踏まえて、2019年にトリーア大学が発表したメタ分析(#2)では、完璧主義がビッグ5の特性とどう関係しているか?を徹底調査してくれています。ザッと中身を覗いてみると、
- 63件の研究から21573名を対象に、
- 完璧主義の思想とビッグ5の性格特性の関係性について調査した
- 完璧主義については大きく2つの面に分けて調べた
こんな感じ。今回使われた完璧主義の2つの面とは、
- 完璧主義的心配:失敗を恐れたり、周りから過度に期待されていると思い込む
- 完璧主義的努力:自分自身に高い期待や目標設定をしがち
大まかにこの2つ。ちなみにこれまでの研究では、心配のほうは神経症性と関連が見られていて、一方で努力のほうは誠実性と繋がりが確認されていたり。この辺は割と納得のいく話ではないでしょうか。
そして結果はこんな感じになりました。
- 完璧主義的心配は神経症性の傾向と中くらいの相関が見られたが、他の4タイプとは逆の相関が出た
- 完璧主義的努力は特に誠実性と中くらいの相関が見られたが、神経症性とは関係がなかった
過去の研究とほぼ一致する結果になりました。こうした結果になるメカニズムとしては、次のような仕組みが考えられています。
- 神経症性が高いとネガティブ思考に陥りやすくてメンタルが不安定になりがち
- すると失敗が恐くなったり、過度に周囲からの目を気にしてしまう
- 誠実性が高いとまめで意識が高い傾向にある
- すると自分自身に厳しいゴールや理想を設定しがち
特に神経症性のほうは過去にもたくさん報告されていて、ほぼ間違いないんではないかと思います。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、研究間での結果のバラつきが全体的にかなり大きいです。要はひとくちに言っても置かれている状況や完璧主義の測り方なんかで結果は変わってくるということで、これについては研究チームも次のように述べていました。
ほとんどのビッグ5の性格特性と完璧主義の相関関係は、完璧主義の測り方で大きく異なっていた。このことは、完璧主義をより細かい面で分けて調査する重要性を示唆している[筆者訳]
完璧主義をひとくくりにしてしまうのも問題だ、と。全くその通りで、現に完璧主義のタイプ別でそれぞれビッグ5の違う特性と関係が見られてますからね。今後はもっと細かく見ていったほうが良さそうです。
赤羽(Akabane)



参考文献&引用
#1 Smith MM, Sherry SB, Chen S, Saklofske DH, Mushquash C, Flett GL, Hewitt PL,”The perniciousness of perfectionism: A meta-analytic review of the perfectionism-suicide relationship“,J Pers. 2018 Jun;86(3):522-542.
#2 Johannes Stricker, Susanne Buecker, Michael Schneider, Franzis Preckel,”Multidimensional Perfectionism and the Big Five Personality Traits: A Meta‐analysis“,European Journal of Personality,Volume 33, Issue 2.