赤羽(Akabane)
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「ストレスをアルコールで発散!」の悪癖は超短時間の数息観トレーニングで直せるかも
結論から言うと、この方法というのは「数息観」のことで、今ココの意識を育むマインドフルネストレーニングの一環としてよく使われるものです。文字通り深呼吸をしながらその数を数えていく練習で、一般的にもよく聞くタイプかと思います。
では実際にこの数息観トレーニングについてどんなことがわかったんでしょうか?ザっと最新の研究を覗いてみましょう。
数息観を意識した超短時間のマインドフルネスでストレスからくるアルコール衝動が減退?!
2019年にエクセター大学が発表したRCT(#1)では、192名(18~52名)のお酒を嗜む大学生を対象に、彼らを次の2つのグループに分ける実験を行っていました。
- マインドフルネスグループ:6分間のマインドフルネスに関するオーディオファイルを聴いてもらう。内容はリラックスしながら呼吸をし続けて1~10まで数えるのをひたすら繰り返すもの。これを後々出てくる画像チョイスタスク中も試してもらう。
- 比較グループ:6分間の科学に関する本のオーディオファイルを聴いてもらう。
対象の全員にはまず過去1ヵ月の飲酒に関する聞き取り調査を行ってから、各々がどのくらいお酒を欲しているか?を調べるべく、食べ物とお酒のサムネイル画像を混ぜこぜで見せていくタスクを行いました。つまりここでお酒の画像を沢山選んだ場合、その人はお酒をより欲しているという解釈になります。
でその後各グループの内容に取り組んでもらって、また同じ食べ物とお酒の画像チョイスのタスクをやってもらうんですが、ここでヘッドホンから不快なノイズが聞こえるようにします。こうやってストレスを与えながら選ばせることで、各グループで選択に違いは出るのか?をみているんですね。
そしてこの結果、こんなことが分かりました。
- マインドフルネストレーニングを試したグループで、ストレスタスク中のイライラが時間とともに下がっていた
- ストレスが増加するとお酒を選ぶ割合も増えたが、この増加をマインドフルネストレーニングが抑えていた
- こうしたイライラやストレスを減らす効果やお酒を選ぶ割合の減少は比較グループでは見られなかった
まとめると、数息観を意識したマインドフルネストレーニングを心がけたグループでストレスが減って、結果的にそこからくるお酒への衝動も減ったんですね。
ただこうした傾向をお酒への依存度別で見てみると、どうやらアルコール依存が強い人にはこのストレス回復効果が見られなかったみたい。つまりマインドフルネスでストレスによる飲酒衝動を抑えられるのはアルコールにあまり依存していない人だ、ということです。
注意点・まとめ
また今回の研究にも幾つか注意点があって、ザっとこの辺りは押さえておくと良さそうです。
- 効果の基準は参加者らの主観に基づいている:脳のfMRIスキャンなど、客観的な効果を表すデータはない
- 今回の実験は超短時間:長期間定期的にトレーニングを行った場合の効果は分からない
- アルコール依存が重度だと効果が弱いという結果は過去研究と食い違う部分もある:例えばマインドフルネス再発予防プログラムという方法では、重度のアルコール依存者にも効果的だという報告もある
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 深呼吸をしながら数をカウントしていく「数息観」を取り入れたマインドフルネストレーニング
- たった6分のガイドに沿ってトレーニングをするだけでもストレスからの回復が早まって、アルコールの衝動も減少した
- アルコール依存などだけでなく衝動性に関する全般にマインドフルネスは効果的かもしれない
こんな感じでしょうか。マインドフルネスが衝動性を抑えてくれるというのは近年でも定説になりつつありますし、今回のはかなり時短なのでやってみる価値はありそうです。
赤羽(Akabane)
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#1 Shuai R, Bakou AE, Hardy L. Ultra-brief breath counting (mindfulness) training promotes recovery from stress-induced alcohol-seeking in student drinkers. Addict Behav. 2019 Oct 18;102:106141.