塗る痛み止めによる鎮痛効果は単なるプラセボ効果かもしれない…

塗る痛み止めによる鎮痛効果は単なるプラセボ効果かもしれない...

赤羽(Akabane)

今回は「塗る痛み止めってどうなの?」というお話です。

塗る痛み止めによる鎮痛効果は単なるプラセボ効果かもしれない…

早速ですが、この疑問について参考になるデータが出ていたので中身をのぞいてみましょう。

塗る痛み止めで痛みが引くのは単なるプラセボ効果?!

2020年にベセスダ海軍病院が発表したRCT(#1)によると、どうやら塗る痛み止めの効果はプラシーボ効果とさほど変わらないのかも…という結果になっていました。

この実験は399名の慢性痛を抱える患者を対象にした比較試験で、まず彼らを痛みの種類別で以下のうち3つのグループに割り振りました。

  • 神経性疼痛:ケタミン、ガバペンチン、クロニジン、リドカインが含まれる塗り薬を患部に塗布する
  • 侵害受容性疼痛:ケトプロフェン、バクロフェン、シクロベンザプリン、リドカインが含まれる塗り薬を患部に塗布する
  • 混合性疼痛:ケタミン、ガバペンチン、ジクロフェナク、バクロフェン、シクロベンザプリン、リドカインが含まれる塗り薬を患部に塗布する
  • プラセボ塗り薬:痛みに効果のない薬を塗る

痛み止めの回数は一日3回、そして比較のためにプラセボ塗り薬を使うグループも用意して、一か月後の患部の痛みレベルを測定したんですね。

すると結果、こんなことが分かったようです。

結果
  • 1ヵ月後全グループで痛みレベルに改善が見られて、グループ間の効果に有意な差は見られなかった
  • それぞれの痛みレベルは神経性疼痛で-0.1、侵害受容性疼痛と混合性疼痛、プラセボ塗り薬で-0.3という結果になった
  • 塗る痛み止め vs. プラセボで比較すると一か月後にはそれぞれ36%、28%の患者が痛みの改善を報告した

どうやらそれぞれの塗る痛み止めによる鎮痛効果はプラセボ塗り薬と大差なかったようです。痛みの改善レベルから改善を報告した患者の割合までかなり似通っていますね。

ちなみに痛み止めによって肌がムカムカするという副作用も幾つか報告されていました。ただ深刻な副作用は特にありませんで、この程度であれば塗り薬にはよくあるケースかと思います。

注意点・まとめ

ただし注意点としては、今回の実験は1ヵ月と短期間である点は押さえておくとよろしいかと。つまり長期の結果はこの実験からは分からない、と。

また痛みの種類も3種類に分けられましたが、更に見ていくと患部などにバラつきはありました。この辺りでどのくらい効果に差が出るのか?も今のところよくわかっていません。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 塗る痛み止めの鎮痛効果は単なるプラセボ効果かもしれない
  • 神経性疼痛、侵害受容性疼痛、混合性疼痛の患者にそれぞれに合った塗る痛み止めを塗ってもらったところ、効果はプラセボの塗り薬と大差なかった
  • 塗る痛み止めの費用を考えるとコスパが悪いかもしれない

こんな感じでしょうか。日本でも塗る痛み止めは流通していますが、本当に効くのかどうか怪しいみたいですね。

赤羽(Akabane)

他にも痛みに関する研究は過去に取り上げています。まだ意外と分かっていないことが多い分野なので、今後の知見に期待ですね。

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参考文献&引用

#1 Robert E. Brutcher, et al. Compounded Topical Pain Creams to Treat Localized Chronic Pain: A Randomized Controlled Trial. Ann Intern Med, 170 (5), 309-318 2019 Mar 5.