赤羽(Akabane)
目次
自然感染では終息しない?新型コロナウイルスの免疫は数週間で消えてしまうかもしれないという衝撃の研究結果
スペインでの大規模な調査結果!感染が拡大した地域でも抗体の陽性率が低すぎる事態..
2020年にスペインの新型コロナ研究チームが発表した研究(#1)によると、既にCOVID-19感染が拡がっていたスペイン全土で、抗体を持っている人は調査対象者全体の僅か5%しかいなかったことが分かりました。
この研究では、スペイン全土の35,883世帯から61,705名を対象に、彼らがCOVID-19に対する免疫をどれだけ持っているか?を調査しています。調査は2020年の4月末~5月中旬までに行われまして、スペインでは感染が一通り拡大しきった時期になります。
調査はCOVID-19の臨床検査歴やIgG抗体検査を中心に行われ、更に同意が得られれば血液サンプルを提出してもらい、化学発光法による定性抗体検査もしたようです。そして、臨床検査と今回改めて行った抗体検査の結果を組み合わせて、対象者らの抗体保有率を分析していきました。
すると調査の結果、以下のようなことが分かりました。
- 抗体陽性率は、臨床検査では5%、今回の抗体検査ではたった4.6%だった
- 両方の検査で陽性だった人の割合は3.7%、どちらかのみ陽性の割合は6.2%だった
- 今回の調査の14日以前にPCR検査で陽性だった患者195名に絞ると、両方の検査で陽性だった割合は87.6%、どちらかのみ陽性は91.8%だった
まとめると、感染が拡がっていたはずのスペインでも抗体を持っている人の割合はかなり少ないんじゃないか?と。また、こうした結果は性別によって差は見られず、10歳未満の子どもでは臨床検査で抗体陽性率3.1%とかなり低めだった様子。
そして今回の調査のハイライトは、一度感染して抗体をゲットしても、その効力は数週間のうちに消えてしまうという可能性が浮上した点です。最短で2週間のうちにPCR検査で陽性判定だった患者の10%前後が抗体を持っていなかったということで、これがもう少し経つとどうなるんだろう…と恐ろしくなります。
またその他にも分かっていることが幾つかありまして、ザっと以下に書き留めておきます。
- 嗅覚異常など感染の疑いが持たれる症状を3つ以上抱えていた7,273名に絞ると、両方の抗体検査で陽性だった割合は15.3%、どちらかのみ陽性は19.3%だった
- 過去にCOVID-19の疑いがある症状を経験&両方の抗体検査で陽性だった人の中で、過去にPCR検査を受けた割合はたった19.5%だった
- 無症状だった人の割合は、両方の抗体検査で陽性だった人で21.9%、どちらかのみ陽性の人では35.8%だった
抗体を持っていた人のほとんどが過去にPCR検査を受けていなかったり、そのうち無症状だった割合が全体の1/3も居たり、「COVID-19って厄介なウイルスだな~」と改めて思わされる内容です。
注意点・まとめ
スペイン全土からランダムに抽出したサンプルを用いていたり、複数の抗体検査の結果を組み合わせていることから、データの質は良さげです。
ただし注意点を強いて挙げるならば、以下の点は押さえておくとよろしいかと。
- スペインのみを対象にしている: 他の国や地域では検査や医療体制、政策、文化も違うので、結果がまた違うかもしれない
- COVID-19の症状や罹患歴のデータはセルフレポート: 対象者による自己申告になるので、データに主観が混じっていたり、正確性は多少落ちる
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- スペインでの大規模な調査結果によると、約6万人のうちCOVID-19の抗体を持っている割合はたった4.6~5%程度だったことが判明
- 今回の調査の14日以前にPCR検査で陽性だった患者に絞ると、抗体検査で陽性だった割合は90%前後に留まり、一部で数週間後には抗体が失われてしまう可能性が示唆された
- その他、抗体を持っている人のうちたった20%くらいしか過去にPCR検査を受けていなかったり、そのうち無症状の割合が3割であったり、COVID-19対策の難しさも浮き彫りになった
赤羽(Akabane)
関連記事はこちらもどうぞ
メタ分析: 新型コロナウイルス(COVID-19)に感染すると危険な人の特徴とは?新型コロナウイルス(COVID-19)は症状がハッキリ出る前の方が二次感染を広めている?新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を防ぐソーシャルディスタンス・マスク選び・目の保護をまとめたメタ分析参考文献&引用
#1 #1 Marina Pollán, et al. Prevalence of SARS-CoV-2 in Spain (ENE-COVID): a nationwide, population-based seroepidemiological study. Volume 396, Issue 10250, P535-544, August 22, 2020