赤羽(Akabane)
目次
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を防ぐソーシャルディスタンス・マスク選びなどをまとめたメタ分析
医学雑誌『Lancet』掲載論文!新型コロナ対策としての効果~ソーシャルディスタンス・マスク選び・目の保護~
2020年にマクマスター大学が発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)では、ソーシャルディスタンスの距離やマスク選び、目の保護による感染予防効果をまとめてくれていました。
この研究では、16ヶ国から過去の172件の観察研究と44件の比較試験をまとめて、新型コロナ感染予防に関する以下のテーマについて現時点の答えを出しています。
- ソーシャルディスタンスは効果的なのか?どのくらいの距離を置けばいいのか?
- マスクは効果的なのか?どんな種類が特に良いのか?
- フェイスシールド、バイザー、ゴーグルといった目の保護は効果的なのか?
そして全体の結果をザックリまとめると、以下の通りになります。
- ソーシャルディスタンスは1m以上空けると効果があり、距離が広がるほど予防の効果が高かった(調整済みオッズ比…0·18, 95% CI 0·09 to 0·38, 絶対リスク…1m未満: 12.8% vs 1m以上: 2.6%, リスク差 -10.2%)
- フェイスマスクの着用は感染を予防する効果があり、N95やその他医療用マスク、使い捨ての不織布マスクでも高い効果が出ていた(調整済みオッズ比…0·15, 95% CI 0·07 to 0·34, 絶対リスク…マスク着用: 3.1% vs マスク未着用: 17.4%, リスク差 −14.3%)
- 目の保護も同様に感染を予防する効果があった(調整済みオッズ比…0·22, 95% CI 0·12 to 0·39, 絶対リスク…目の保護有: 5.5% vs 目の保護無: 16.0%, リスク差 −10.6%)
なかなかハッキリとした指標が示されていますね。ソーシャルディスタンスに関しては、間隔が更に1m広がると相対リスクは2倍近く違ったみたい。つまり、1mでも十分効果は出るけれど2m空ければなお良し!ということになります。
また、マスクに関しても着用なしの場合よりは明らかに予防効果が表れています。種類に関しては、名高いN95や医療用のマスクをはじめ、私たちが普段使っている使い捨ての不織布マスクでも高い効果が出ていて、以下の記事で取り上げた結果と似ていました。
フェイスマスク14種類を比較!ウイルスの飛沫感染予防に「効果がない」ものが判明。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ざっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 今回はCOVID-19以外の過去の感染症研究も対象に入っている: COVID-19の研究だけではまだ十分なデータが揃っていないので、大半がSARSやMARSの時の研究結果も踏まえている
- RCTは含まれていない: 比較試験の中でも質が高いRCTは今回1件も入っていなかった
- ザックリとしたデータになっている: 実験の環境がバラバラだったり、ソーシャルディスタンスの距離を報告していない研究がちらほらあったりして結果にバラつきが出てしまっている。また、マスクは感染者も着けていた場合どうなるのか?2m以上間隔を空けたらどうなるのか?といった細かい部分もまだ分からない
なかなか有難い研究ではありますが、今のところは「割かしザックリしたデータなんだな」という程度に留めておくとよろしいかと思います。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- ソーシャルディスタンスは1m以上空けると効果があり、距離が広がるほど予防の効果が高かった(2m以上はまだ分からない)
- フェイスマスクの着用は感染を予防する効果があり、N95やその他医療用マスク、使い捨ての不織布マスクでも高い効果が出ていた
- 目の保護も同様に感染を予防する効果があった(フェイスシールド、バイザー、ゴーグル等)
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Chu DK, Akl EA, Duda S, et al. Physical distancing, face masks, and eye protection to prevent person-to-person transmission of SARS-CoV-2 and COVID-19: a systematic review and meta-analysis. Lancet. 2020;395(10242):1973-1987. doi:10.1016/S0140-6736(20)31142-9