前の晩から空腹状態で運動をしたら本当に痩せやすいのか?

前の晩から空腹状態で運動をしたら本当に痩せやすいのか?

赤羽(Akabane)

今回は「昨晩から何も食べずに運動をしたら痩せやすいの?」というお話です。

前の晩から空腹状態で運動をしたら本当に痩せやすいのか?

早速ですが、このテーマについて現段階で分かっているデータを見ていきます。

空腹状態での運動は本当に痩せやすい?をまとめた小規模なメタ分析

2017年にシドニー大学が発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)によると、前の晩から空腹状態で運動しても、普通に食べた場合と比べて格別痩せやすいことはなかったようです。

この研究は、5件のRCTから96名(21~27歳、うち男性60名)を対象にしたもので、まず彼らを以下の2グループにランダムで分けています。

  • 空腹グループ: 前の晩から空腹の状態で翌朝運動する
  • 満腹グループ: 朝食を摂ってしばらく時間を置いてから運動する

実験期間は平均5.6週間で、運動は週に3~4回行われました。運動内容はトレッドミルやサイクリングが大半で、測定項目は実験前後の体重や体脂肪などでした。

そして分析の結果は、簡単にまとめるとこんな感じでした。

結果
  • グループごとに見ると、空腹も満腹も実験前後で減量効果や体脂肪減少は見られなかった
  • グループ間で比べても、両者に有意な差は見られなかった

まとめると、全体的に空腹状態を持ち越して体を動かすことのメリットは見られませんでした。また、こうした「効果ナシ」の結果は腹を満たした場合でも同様に確認されて、そもそも上記の実験プログラムの効果自体が大してなかったようです。

空腹状態で運動をすることによって、運動による熱産生が高まって、エネルギー支出量がアップ、その結果脂肪が燃えやすくなる!といったメカニズムが提唱されていますが、今回はそういった効果が特に見られませんでした。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • サンプルサイズは小さい: 含まれた参加者は少ない分、統計的なパワーは弱い
  • 食事の内容やタイミングなどがバラバラだった:カロリー摂取量や、食事のコンセプト(高脂肪食etc..)などがバラバラで、一貫した結論を出せる様子ではない
  • 対象になったのは大半が運動習慣のある若者のみ:5件中4件で運動習慣がある若者を対象にしていて、高齢者や肥満体型の人など、他の特徴がある人にどこまで当てはまるか?は分からない

上記の注意点を踏まえると、今回結果が出なかったのは、食事の摂取カロリーを減らすアプローチをしている実験が少なかったから、というのもあるのかもしれませんね。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 今回のメタ分析によると、軒並み運動習慣のある若い男女を対象にした実験をまとめた結果、前の晩から空腹状態を持ち越して運動をすることで格別痩せやすいということはなかったようだ
  • それどころか、空腹も満腹もどちらも大した効果が確認されず、実験プログラム自体の効果がなかった
  • ただし、一部食事制限がなかったり、そもそも若くて活発な人たちを対象にしている点で、体型を改善する効果が出にくかった可能性も考えられる(実験期間も4~6週間と短いし..)

赤羽(Akabane)

このテーマについては、まだ質の高い実証研究が少なくて、ハッキリとどのくらいの効果があるかは言い切れない状態ですね。実験の趣旨は微妙に違いますが、朝食前の運動で肥満体型の人たちのインスリン感受性が高まって体脂肪も燃えやすくなった!といった研究(#2)もあったりするので、少なからずメリットは見込めそうですが。

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参考文献&引用

#1 Hackett, D.; Hagstrom, A.D. Effect of Overnight Fasted Exercise on Weight Loss and Body Composition: A Systematic Review and Meta-Analysis. J. Funct. Morphol. Kinesiol. 2017, 2, 43.

#2 R M Edinburgh, H E Bradley, N-F Abdullah, et al. Lipid metabolism links nutrient-exercise timing to insulin sensitivity in men classified as overweight or obese. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, dgz104, 2019.