赤羽(Akabane)
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卵置き換えダイエットの効果とは?高糖質な朝食を1日2個の卵とチェンジした実験の結果…
「卵置き換えダイエット」という食事法があります。これには、高カロリーな食事を低カロリーで栄養満点な卵に置き換えることで健康に痩せよう!という狙いがありまして、卵の食べやすさと取り組みやすさから一定の人気があります。
朝食に卵置き換えダイエットを実践してみる実験!
2020年にアメリカの研究機関「ミッドウェスト・バイオメディカル・リサーチ」が発表したランダム化クロスオーバー試験(#1)によると、高カロリーな朝食を卵に置き換えることで血圧の改善に一部メリットがあったようです。
この研究では、肥満体型の30名(平均54歳、平均BMI31.9kg/㎡)を対象に2つの朝食パターンが体に及ぼす影響を実験しています。具体的には、彼ら全員に以下の2つのグループを体験してもらうというものでした。
- 卵置き換え朝食: 朝食に一日2個分の卵を食べるダイエットを週に6日間行う(スクランブルエッグ、卵サンドイッチなどバリエーションは豊富)
- 高糖質な朝食: 朝食に牛乳とシリアルの定番セットや、シロップ付きワッフル、グラノーラバー、果物、ナッツ、チーズなどを週に6日間食べる
*両パターンの総カロリーは~554kcalで揃えられており、それぞれのパターンの間には少なくとも4週間以上の間隔が設けられた(前のパターンでの影響を消すため)
細かい栄養素で見ると、卵置き換えの方ではたんぱく質からより多くのカロリーを摂取しているのに対して、高糖質の方では炭水化物から多くのカロリーを摂取していました。脂質に関しては両者で大差なしです。
各パターンの食事は4週間ずつ続きまして、実験開始から3,4週間経過時点には診察を受けるという流れ。診察の際には、食事や運動のアンケート調査、体組成測定、血圧、血液サンプル採取などを行い、普段の他の食事や生活習慣はこれまで通りを維持するようにアドバイスされたようです。
果たして実験の結果は、以下のようになりました。
- 食事の報告を基に算出した一日当たりの総摂取カロリーは、卵置き換えの方が高糖質よりも多かった(2145kcal vs. 1996kcal)が、実験前後での体重には優位な差が見られなかった
- LDL(悪玉コレステロール)はどちらも減少していたが、高糖質の方が卵置き換えよりも減っていた(-6.0% vs. -2.9%)
- 収縮期血圧は卵置き換えでのみ減少していた(−2.7 ± 1.1 vs. 0.0 ± 1.4%)
これを踏まえると、朝食を卵に置き換えるだけでは目覚ましい効果は見込めなさそうですが、上の血圧の低下は卵置き換えダイエットでのみ確認されました。
とはいえ、上記の結果には不可解な点も幾つかありまして…。例えば、LDLは高コレステロールな卵を食べれば増えることが予想されますが、実際はさにあらず、若干ながら減少しています。他にも、卵置き換えダイエットではナトリウムの摂取が開始時よりも750mgほど増えておりまして、本来であれば血圧は増えこそすれど減ることはないのでは?と考えられたんですね。
また意外なのは、一日の総摂取カロリーが結果的に卵置き換えダイエットで150kcalほど増えている点。あくまで参加者らの主観的な報告を参考にしているので、正確なデータではないかもしれませんが、こうした他のところでの食生活が今回の結果に影響している可能性は高いです。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 実験期間は短い: それぞれ4週間ずつなので、より長期的な効果を示すデータではない
- 結果は限定的: 短い実験期間に加え、実験は朝食の場合のみ、参加者は太り気味/肥満体型のアジア系アメリカ人のみだった。昼食や夕食のケースや、他の特徴を持った人でどこまで一般化できるかは分からない
- 卵の調理法までは考慮されていない: 卵研究のあるあるだが、実験や調査内で卵の食べ方や調理法の定義が広かったり曖昧だったりすると、結果に誤差が出かねない(例えば、ゆで卵と目玉焼きではカロリーや油の使用有無の点で全然違う)
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 高糖質な朝食を1日2個の卵とチェンジした実験の結果、減量幅はあまり大差なかったが、4週間で収縮期の血圧はなかなか減少した
- とはいえ、高コレステロール食なのにLDLがちょっぴり減っていたり、ナトリウムの摂取量が開始時より増えているのに血圧が低下していたりと、実験外での生活習慣の影響を調整しきれていない感があった
- 参加者も太り気味or肥満体型の人が対象なので、他の体型の人でどうなるかは分からないし、朝食以外のタイミングだとまた違った結果になるかもしれない
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Maki, K.C., Palacios, O.M., Kramer, M.W. et al. Effects of substituting eggs for high-carbohydrate breakfast foods on the cardiometabolic risk-factor profile in adults at risk for type 2 diabetes mellitus. Eur J Clin Nutr 74, 784–795 (2020). https://doi.org/10.1038/s41430-020-0599-2
※当記事はメンテナンス済みですが、2020年11月18日に公開された時点での内容となっておりますので、情報が古くなっている場合もあります。