赤羽(Akabane)
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運動中のマスクは諸刃の剣かもしれない!という仮説
新型コロナが世界的に蔓延している今、屋外や施設での運動にはマスクの着用がルール化される風潮があります。
ロックダウンや緊急事態宣言による運動不足を解消したい…でもコロナには罹りたくない…こうしたジレンマから抜け出すために、「マスクを着用しての運動」という解決策に至っています。こうした風潮が浸透してか、今や外出時にはマスクの着用がモラルとして見なされてる感さえ伺えますね。
では、改めて「マスクを着用しての運動」というのはいかがなものなのでしょう?このテーマについて、一つの見解を見ていきます。
マスクを着用しながらの運動は場合によっては危険かもしれないぞ!というレビュー研究
2020年にマニパル高等教育アカデミーが発表したレビュー研究(#1)によると、運動中のマスク着用は場合によってはかえって健康を害するかもしれないぞ!との見解でした。
この研究では、以下のような素朴な疑問にアプローチしています。
- マスクの着用は公共で運動する人に何らかのメリットがあるのか?
- マスクの着用によって運動の生理学的反応は変わるのか?
- マスクを着用しての運動は新型コロナの感染リスクを高めるのか?
- マスクの着用によって運動の生理学的反応が変わるとして、公共で運動する人はどんな対策が取れるか?
要は、新型コロナ禍においてマスクを着けながら運動するのは正しい健康法なのか?という点を改めて疑問視しているんですね。
そして、レビューの結果をまとめると、ザッとこんな感じでした。
- マスク着用によって、運動をする人も飛沫が鼻や口から入り込み感染するリスクを抑えることはできると考えられる
- マスクを着けながら運動をすると、酸素⇄二酸化炭素の交換が阻害されてしまい、体が酸性に傾いてしまう。その結果、画像のような生理学的変化が起こると考えられる
- マスクを着けることで、心理的な安心感ができてしまい、かえって手で顔を触ったりといった接触感染を助長する行為が増えてしまう恐れはある
まとめると、マスクを着用しての運動はハードになり過ぎないように気をつけた方がいいかも?という感じでしょうか。運動による免疫力アップ効果は、軽〜中程度の運動強度でも十分ですし、新型コロナ予防を狙うなら程々の運動にしておくに越したことはなさそうです。
それに、マスクを着けながらハードな運動をすると、酸素の交換が上手くできず、体のあちこちで高い負荷がかかり続けることになると予想されます。これによって、倦怠感や疲労、メンタルヘルスの悪化、免疫低下による感染リスクの上昇などの可能性が高まります。若くて健康な人であればある程度は大丈夫でしょうが、高齢者や基礎疾患を持つ人には危険な状態だと言えます。
運動中のマスクによるリスクを回避する打開策
以上を踏まえて、運動中にマスクを装着しながらでも安全・健康を保てる打開策は以下のように提案されていました。
- マスクの着用有無に関係なく、屋外でも施設でもソーシャルディスタンスを保ちながら運動をすること
- マスクを着けながらの運動の強度は軽~中強度にすること
- 万が一、息切れや過度な疲労、眩暈、ふらつきを感じたら、落ち着くまで休憩を挟むこと
- 休憩時には、一時的に人気が少ないところでマスクを外して体へのストレスを軽減させること
- 一番良いのは、健康の専門家の指導の下、家でマスクを着けずにできる運動を続けること
どれも当たり前な提案かもしれませんが、「こうなったら運動を中断する」みたいな境界線ルールは設けておいた方が宜しいかと思います。
注意点・まとめ
ただし注意点として、今回の仮説は主に理論的な話などを踏まえたものなので、実際に運動中のマスク着用のリスクを検証した実験があったわけではありません。とはいえ、現状の緊急性を考えると、若干見切り発車的に見解を発表していくことも致し方ないとは思いますが..。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 運動中のマスクは諸刃の剣かもしれない!という仮説
- 運動中にマスクをすることで、酸素と二酸化炭素の交換を阻害してしまい、生理学的に全身に強い負荷がかかってしまうことが予想される
- マスクを着用しながらの運動は、軽~中程度の強度に留めてハードに追い込み過ぎない方が賢明かもしれない
赤羽(Akabane)
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#1 Chandrasekaran B, Fernandes S. “Exercise with facemask; Are we handling a devil’s sword?” – A physiological hypothesis [published online ahead of print, 2020 Jun 22]. Med Hypotheses. 2020;144:110002. doi:10.1016/j.mehy.2020.110002