赤羽(Akabane)
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新型コロナウイルス(COVID-19)は空気感染するってどこまで本当?
2020年4月4日現在、COVID-19の感染経路について以下のツイートが話題になりました。
【コロナウイルスの生存期間】
こういう情報が欲しいんだよ!! pic.twitter.com/FJluXwEURt
— 秋葉原ラフィーネ/やきとん元気清美通り店の人 (@laffine_tanasho) April 3, 2020
要はCOVID-19は飛沫感染だけでなく、空気感染もあり得るのでは?という何とも恐ろしい内容になっています。この記事では、上記テーマについて詳しく見ていこうと思います。
根拠になっている研究結果をレビューしてみる
この情報の出どころは、2020年3月半ばに「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」誌に掲載された研究(#1)で、SARS-CoV-2(新型コロナの正式名称)とSARS-CoV-1(SARSの正式名称)が物体の表面や空気中でどのくらい残存するのか?を調べた実験を行っています。
具体的には、上記2種類のウイルスを使って、以下5パターンの環境下においてどのくらいの期間ウイルスが残存するか?を実験したようです。実験にはウイルスの射出用にコリゾンネブライザーという噴射器と、噴射されたウイルスを閉じ込めるために金属製の円筒(ドラム)を使用しています。
- エアロゾル(≒空気中に存在する微細な粒子)
- プラスチック
- ステンレス
- 銅
- ボール紙
エアロゾルの実験では、円筒内を循環させるためにドラムを回転させながら、ウイルスの残存状況を3時間の間に、開始時、30分、1時間、2時間、3時間経過時点の計5回測定していきました。
物体の表面での残存を調べる実験では、それぞれの物体を板状にしたものにウイルスを垂らす実験を行っていて、こちらでは垂らした直後、1時間、4時間、8時間、24時間、48時間、72時間、96時間経過時点の計8回測定していきました。
そして以上の実験をそれぞれ3回ずつ再試をしたところ、以下のような結果になりました。
- ウイルスを含んだエアロゾルを空気中に噴射した実験では、3時間経過時にもまだ感染力が残存していた
- 銅の表面には4時間経過までウイルスが残存していた
- プラスチックとステンレスの表面には72時間経過時までウイルスが残存していた
- ボール紙の表面には24時間経過時までウイルスが残存していた
ちなみにプラスチックとステンレスに関しては、確かに72時間経過時点までウイルスは感染力を有していましたが、8時間経過時点くらいから急激にウイルスの力価(細胞に感染できる濃度)は低下していました。
注意点・まとめ
以上のような結果を根拠に、「新型コロナウイルス(COVID-19)は空気感染するぞ!」と騒がれているわけですが、注意点も幾つかあります。
- 円筒内は言わば狭い密閉空間なので、この結果がそのまま屋外の解放空間でも当てはまるとは限らない
- エアロゾルの実験では3時間までのウイルスの残存しか測定していないので、より長期間ではどうなっているか?は分からない
- 物体の表面における実験についてはウイルスを含んだ培養液を物体に直接垂らすというもので、エアロゾルの実験についてもウイルスを狭い密閉空間で噴射するというものなので、これらがヒトの咳やくしゃみ、呼吸によるものと同等の結果を反映するとは言い切れない
上記のような実験デザインに関する注意点は、WHO(世界保健機関)も同じように指摘していて(#2)、やはりこの研究結果から、
こういった拡大解釈はできないかと思います。
赤羽(Akabane)
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#1 van Doremalen N, Morris DH, Holbrook MG, et al. Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1. New England Journal of Medicine, March 17, 2020.
#2 World Health Organization. Modes of transmission of virus causing COVID-19: implications for IPC precaution recommendations. accessed on 5th Apr 2020.