「やり抜く力 GRIT(グリット)」は人生の成功にあまり効果がない上にアレと中身が丸被りでは?という反駁のメタ分析

「やり抜く力 GRIT(グリット)」は人生の成功にほとんど効果はないのでは?という反駁のメタ分析

赤羽(Akabane)

今回は「『やり抜く力 GRIT(グリット)』の効果って微妙ではないか?」というお話です。

GRIT(グリット)は人生の成功にあまり効果がない上にアレと中身が丸被りでは?

まずは「GRIT(グリット)」とは?というところをおさらいしてから、本題に入ります。

GRIT(グリット)とは?

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GRIT(グリット)とは心理学者のアンジェラ・リー・ダックワース氏が世に広めた人間の性格特性のことで、IQや才能よりも人生における成功やパフォーマンスの向上に欠かせない要素であると言われています。

「GRIT」という英単語を直訳すると、「不屈の精神/根性/やる気」といった訳がヒットします。要は逆境や困難に見舞われてもくじけずに物事をやり通す性質ということですね。

こうした話は同氏のTEDスピーチや著書などから瞬く間に広まって、自己啓発セミナーなんかでも「成功にはグリットが大事!」なんて言われてきましたが、近年の研究ではどうやら暗雲が立ち込めてきたようです。

GRIT(グリット)の効果って微妙な上にビッグ5の誠実性と丸被りでは?というメタ分析

2017年にアイオワ州立大学が発表したメタ分析(#1)では、全体的にグリットが高いことによる効果って微妙じゃないか?との結論になっていました。

この研究は、88件の過去研究から66,807名分のデータを対象に、グリットとパフォーマンス向上や認知機能、ビッグ5性格特性の誠実性(勤勉性)との相関を調べたものです。

では早速、ここから分かったことをまとめて見てみます。

結果
  • グリットは過去研究をまとめて分析すると全般の学業成績と僅かな相関関係しか見られなかった(ρ = .18)
  • グリットは誠実性(勤勉性)とかなり強い相関関係が確認された(ρ = .84)
  • さらにグリットは誠実性(勤勉性)の中の重要な一面「セルフコントロール」とも強い相関関係が確認された(ρ = .72)

まとめると、グリットには全体的に高い学業成績を予測できるような相関関係はなくて、ずっと前から科学的に信頼性の高い性格特性として存在しているビッグ5の「誠実性(勤勉性)」に似てないか?という結果になったんですね。

学業成績についてもう少し詳しく見てみると、全体のGPAともわずかな相関関係(ρ = .17)で、こうした結果は大学/高校で分けて分析しても同じ結果だった様子。どうやら認知機能の高さや学習の習慣といった他の要素の方が大事みたいですね..。

またこの研究では過去文献のレビューも幾つか行っていて、2009年にダックワース氏らが発表した有名な研究(#2)に関しても統計の解釈がちょっと間違ってるのでは?と指摘しています。

  • 米軍の士官候補生を対象にした実験で、彼らの夏季トレーニングプログラムにおける完遂率とグリットの相関を調べたところ、グリットのスコアが平均以上だった候補生はプログラムを完遂する確率が99%高かったと報告されていた
  • しかし研究チームらはオッズ比と確率をごっちゃにして解釈してしまっていると指摘されている
  • 実際のところ、候補生の94%がプログラムを完遂していて、グリットのスコアが1ポイント増加したところで完遂する確率は2.6%しか上がらないことが分かった

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくとよろしいかと思います。

注意
  • グリットの相関関係の数値には直接的な比較対象がない:各実験ではグリット以外の学業成績に影響する要素(認知機能、学習の習慣、学習スキルetc..)との比較は行っていないので、直接的にどっちがどのくらい高い学業成績の予測に優れているのか?は分からない
  • グリットの調査データは全てセルフレポートだった:参加者の自己申告制なので正確なデータとは言えず、社会的にグリットが認められている背景もあって多少高く見積もって報告されている可能性もある
  • グリットと目標達成の関係を調べた研究は軒並み完遂率が高かった:上記で紹介した2009年の研究と同様に、グリットのスコアに関わらず、全体的に参加者が目標を達成してしまう率が元々高いというケースが多く見られた。基準がインフレしてしまう分、相関がちっぽけになってしまっている可能性はある

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • GRIT(グリット)とは、逆境や困難に見舞われてもくじけない性質のことで、IQや才能よりも人生における成功体験にとって重要な要素であると言われている
  • しかし今回のメタ分析では、過去の文献を全体的に見ると学業成績との相関関係は弱かった
  • 更にもっと前から存在するビッグ5の誠実性(勤勉性)とかなり性質が被ってしまっていて、近年注目されている程目新しい性質とは言い難い感じになってしまっている

赤羽(Akabane)

今回の研究結果を受けて「グリット\(^o^)/オワタ」とまではいかないものの、グリットだけじゃどうにもならないことも結構あるよなぁ~、という印象は抱きました。もちろん学業に影響する要素の一つではあるんでしょうが、他にもっと大事なものがあるのでは?と思います。

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参考文献&引用

#1 Credé M, Tynan MC, Harms PD. Much ado about grit: A meta-analytic synthesis of the grit literature. J Pers Soc Psychol. 2017;113(3):492–511.

#2 Duckworth, A. L., & Quinn, P. D. (2009). Development and validation of the Short Grit Scale (GRIT–S). Journal of Personality Assessment, 91(2), 166–174.