キツい仕事でメンタルヘルスや早死にリスクを悪化させないために大切なこととは?

キツい仕事でメンタルヘルスや早死にリスクを悪化させないために大切なこととは?

赤羽(Akabane)

今回は「キツい仕事でメンタルヘルスや早死にリスクを悪化させないために大切なこととは?」というお話です。

キツい仕事でメンタルヘルスや早死にリスクを悪化させないために大切なこととは?

ここで言う「仕事のキツさ」とは、一個人が負う仕事の責任や働く量などを全部ひっくるめたものを指します。

確かに、働き過ぎと早死にリスクとの相関は過去にも報告されていまして、過労死なんて言葉があるように、キツすぎる仕事は健康によろしくなさそうです。
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キツい仕事で心身を病んでしまうかどうかは裁量の幅と認知機能で決まる?!

そんな折、2020年にインディアナ大学が発表した研究(#1)では、この「仕事のキツさ」がメンタルの悪化や早死にリスクに悪影響を及ぼすかどうかは、個々人の仕事での裁量権と認知機能にかかっている!ということが分かったようです。

この研究では、1995〜2015年までのおよそ20年間で3000名以上を対象にした大規模な調査を行なっていまして、期間内の3つの時点での調査データを引っ張ってきています。

調査項目は以下の通りです。

  • 仕事のキツさ・裁量権
  • 認知機能
  • 身体的な健康(754名分)
  • メンタルヘルス(3,148名分)

そして上記の項目と期間中の死亡リスクを照らし合わせていくと、以下のようなことが判明したようです。

結果
  • 仕事のキツさとストレスの慢性的な蓄積は、仕事の裁量の幅によって左右されていた。仕事の裁量の幅が広いと答えた場合、仕事のキツさによるストレスの蓄積が小さかった
  • こうした仕事の裁量の影響は、うつ病との相関に対しても見られ、仕事の裁量の幅が広い場合で、仕事のキツさとうつ病リスクの間の相関がなくなった
  • 認知機能の高さも、うつ病との相関に対して干渉しており、高い人では、仕事のキツさとうつ病リスクの間の相関がなくなった

ここから言えるのは、仕事のキツさに押し潰されてしまうかどうか?は仕事のコントロール感や情報処理などに長けた認知機能にかかっているかもしれない、と。確かに、仕事が自分の手に負えない量・レベルだった場合はただただ圧倒されてしまいそうですからね..。ストレスもかなり溜まりそうですし、メンタルによくないのは想像に難くないです。

一方で調査期間中の死亡リスクに関しても、面白いことが分かりました。

  • 身体的な健康の不調を介した仕事のキツさと死亡リスクの相関は、仕事の裁量が狭いと感じていたり、認知機能が低い場合に有意ではなかったが、広いと感じていたり高い場合には逆の相関が見られた
  • メンタルヘルスの不調を介した仕事のキツさと死亡リスクの相関は、仕事の裁量が狭いと感じていたり、認知機能が低い場合に強く見られ、逆に広いと感じていたり高い場合は有意ではなかった

身体的な健康の方は、仕事のコントロール感が高かったり認知機能が高い場合で、仕事がキツいほど早死にリスクが低いというよく分からない結果になりましたが、注目はメンタルヘルスの方。こちらでは、仕事のコントロール感や高い認知機能が備わっていた場合、キツい仕事と死亡リスクとの関係性を弱められるかもしれない!と。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • サンプルは限定的: アメリカのデータセットからサンプルを集めており、国や文化による働き方や時間の違いを考慮し切れない
  • 他の要素の影響を考慮し切れていない: ソーシャルサポートなど、心身の健康に影響を与え得る他の要素は対象外で、こうした要素の影響がどのくらいかは分からない
  • 調査は20年間で3回分しかない: 長期の研究にはなるが、そのうち調査は3回しか行われておらず、データの精度は低くなる(期間中にジョブチェンジしていたら、そのデータを追えないなど)

身体的健康やメンタルヘルスを介した死亡リスクに関するところで結果がぼんやりしてしまったのも、もしかするとこうしたデータの精度や他の要素が影響していたのかも…?と考えられます。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 仕事の量や責任の大きさなどはメンタルの悪化や早死にリスクの増大と相関があることが改めて報告された
  • ただし、上記の相関に仕事のコントロール感や認知機能の高さなどを考慮したところ、これらのコンディションが良い場合、仕事のキツさの悪影響は弱まるか無くなるかしていた
  • 身体的な健康を介した死亡リスクの結果はまちまちだったが、仕事のコントロール感や認知機能の高さがメンタルヘルスの悪化から死亡につながるリスクを下げてくれる可能性は示唆された

赤羽(Akabane)

細かく見ると結果があっちこっち食い違っていたりしましたが、今回のハイライトは、キツい仕事でメンタルヘルスや早死にリスクを悪化させないためには仕事の裁量高い認知機能が有効かもしれないということです。前者は各企業で改善が出来るので、経営者側にいらっしゃる方は立ち止まって考え直してみるのもありかと思います。

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参考文献&引用

#1 Gonzalez-Mulé E, Cockburn BS. This job is (literally) killing me: A moderated-mediated model linking work characteristics to mortality [published online ahead of print, 2020 Apr 9]. J Appl Psychol. 2020;10.1037/apl0000501. doi:10.1037/apl0000501