赤羽(Akabane)
目次
スマホの見すぎは子どもの対人コミュニケーションスキルに何ら影響はない!という研究結果
2010年代はスマホが急速に普及して、今では大人から子どもまで幅広い年代の必需品となっています。
しかし、それに伴ってスマホにまつわる問題もいくつか浮き彫りになっていて、「歩きスマホ」「ながらスマホ」といった言葉が生まれるくらい、多くの方は片手に収まる機器に夢中です。
今ではすっかり子どもたちもスマホに夢中ですが、こうしたスマホ依存は、子どもの対人コミュニケーションを希薄にするのでは?という問題視もありました。
前置きが長くなりましたが、この記事では上記テーマについて面白いデータを見ていきます。
スマホは子どもから対人スキルを奪わない!とする研究結果
2020年にオハイオ州立大学が発表した研究(#1)によると、スマホ漬けになる子どもとそうでない子どもを比べても、子どもたちの対人コミュ力には大差なかったようです。
この研究では、大きく2つの調査データを採用していて、それぞれ1998年、2010年の時点で幼稚園児だった19,150名と13,400名を対象にしています。1998年はFacebookがサービスを開始する6年前、一方で2010年は初めてiPadが登場した年であるということで、前者を「スマホを使わない世代」、後者を「スマホ世代」としてザックリ分類しました。
調査は、対象の子どもたちが小学5年生になるまで続いていて、詳しい調査項目は以下の通り。
- 友だちの輪を広げて維持していく能力
- 感情を上手に表現する能力
- タイプが違う子どもと上手に付き合っていく能力
こうした子どもの対人コミュ力評価は、期間中に教師によって6回、子どもの親によって幼稚園入園時と卒業時、一年生終了時の3回行われました。
すると調査の結果、こんなことが分かったようです。
- スマホ世代もそうでない世代も、先生や親からの対人コミュ力の評価は大差なく、むしろスマホ世代の方が僅かに高い傾向が見られた
- スマホのヘビーユーザーだった子どもだけで見てみても、そうでなかった子どもと比べて、対人コミュ力の発達曲線は同様だった
まとめると、スマホが普及している世代とそうでない世代では、子どもの対人コミュ力の発達には大差がないうえに、スマホの見すぎも特に対人コミュ力に影響を及ぼさなかった、と。これは世間一般の認識とは反対の結果であります。
ただし例外もあって、スマホで以下のようなコンテンツを頻繁に利用していた子どもたちは、対人コミュニケーションスキルがわずかに低い傾向にあったようですね。
- オンラインゲーム
- SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)
何となく頷ける話かと思います。とはいえ、この2つは現代における大半のスマホユーザの利用目的だろうと予想できますし、結局のところ、スマホの見すぎは対人コミュニケーションに良くないのでは?という可能性も捨てきれない気がします。
注意点・まとめ
また注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 調査データはアメリカで集められたもののみ:今回の結果がどこまで一般化できる内容か?は分からない
- 対人以外のコミュニケーション能力は調査対象外:今後はメールやSNSなどを介してのコミュニケーション能力も調べていく必要があるとのこと
- 昔の子どもより今の子どもの方が対人コミュニケーション能力が高いという解釈にはならない:昔と今では教師や親の評価基準も変わっている可能性があるなど、データの単純な比較からこうした拡大解釈はできない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- スマホの見すぎは子どもの対人コミュニケーションスキルに悪影響だ!というのが世間一般の認識だとされている
- しかし今回の研究によると、スマホ世代とそうでない世代では幼少期の対人コミュニケーション能力に大差はないし、スマホの見すぎも悪影響はないという
- ただしスマホでオンラインゲームをしていたり、SNSを頻繁に使う子どもは、わずかにこうした能力が低いということも分かった
赤羽(Akabane)
関連記事はこちらもどうぞ



参考文献&引用
#1 Douglas B. Downey, Benjamin G. Gibbs. Kids These Days: Are Face-to-Face Social Skills among American Children Declining? American Journal of Sociology, 2020; 125 (4): 1030.