SNS依存は「ファビング」への第一歩?論文研究から読み解くユーザーの人間心理

SNS依存は「ファビング」への第一歩?論文研究から読み解くユーザーの人間心理

赤羽(Akabane)

今回は「SNSとファビングとメンタルヘルスの関係」についてのお話です。

SNS依存は「ファビング」への第一歩?論文研究から読み解くユーザーの人間心理

ファビングは「リアルで人と会っている時にスマホをいじること」を指す造語で、「Phone(携帯電話)+Snubbing(冷たい態度をとる)」の組み合わせからきています。

これが有名なSNS使用状況とどう関わっているか?メンタルヘルスとの関係は?といった問題を、ここからザっと見ていきましょう。

フェイスブック依存度とファビング、メンタルヘルスの関係は…

まず2018年にルブリンカトリック大学が発表した研究(#1)では、ポーランドの597名のスマホユーザ(平均21.22歳、16~78歳)を対象に、フェイスブックとファビングの精神面への影響を調べてくれていました。

まずこの研究では、ファビングを2つの側面から見ていて、

  • コミュニケーションの阻害:ファビングによってリアルのコミュニケーションが阻害される度合い。ファビング度チェックテストで確認
  • スマホ依存:リアルのコミュニケーション以外の場でスマホにどのくらい依存しているか?の度合い。フェイスブック依存度テストで確認

これらが孤独感や人生満足度、自己効力感とどのように関わっているか?を調べていました。

具体的には、上記のテストに併せて孤独感、人生満足度、自己効力感の診断テストも併せて行ったようです。

ちなみにフェイスブック依存度は「使っていないときもフェイスブックのことをよく考える」「フェイスブックを使っている時みんなとの繋がりを感じる」などの質問で、日常でどのくらいフェイスブックが幅を利かせているか?を見ています。

するとここから、次のようなことがわかりました。

結果
  • 高いフェイスブック依存度はファビングの原因の一つだった
  • 低い孤独感はフェイスブック依存と相関が見られたが、フェイスブック依存は逆に高い孤独感と相関があった
  • 自己効力感や人生満足度が低いとフェイスブック依存度が高かった

どうやらフェイスブック依存はファビングの原因になり得るみたい。この傾向は、特に女性で強かったとのことです。

孤独感との関わりについての解釈はちょっと複雑ですが、SNS上での繋がりで孤独感が紛れる人もいれば、かえって繋がりの希薄さが目立って孤独感を感じてしまうといった感じになりましょうか。

2017年に英国王立公衆衛生協会が発表した調査(#2)でも、SNSはタバコやお酒よりも依存性が高いとの報告が上がっています。これがファビングに繋がってしまうのは大いにあり得る話だと思います。

インスタグラムとファビング、メンタルヘルスの関係は…

では次にインスタグラムとファビング、メンタルヘルスの関係を見ていきましょう。

2018年にヤシャル大学が発表した研究(#3)では、423名の青年・成人男女(平均17.15歳、14~21歳)を対象に、インスタグラムとファビングの精神面への影響を調べてくれていました。

具体的には、まずインスタグラム依存度に関するアンケートをとって、精神面では神経症性レベル(ビッグ5性格診断の1要素)、仲間はずれ感レベル、不安傾向といった特徴をチェックしたようです。

ちなみに、仲間はずれ感は大きく「性質的」「状態的」の2つのタイプに分けられていて、

  • 性質的仲間はずれ感:例): 周りの友達が自分を置いて楽しいことをしているのが恐くて耐えられない
  • 状態的仲間はずれ感:例): 周りの動向を見逃さないために何度もネットにオンラインする

それぞれこんな質問で確認していました。性格としてどのくらい疎外感を感じやすいか?と実際にそれを埋める行動をどのくらいしているか?を見ているんですね。

そしてこうした調査の結果、次のような関係が判明しました。

結果
  • 高い神経症性→高いインスタグラム依存度→ファビング
  • 高い性質的仲間はずれ感→高い状態的仲間はずれ感→ファビング
  • 高い状態的仲間はずれ感→ファビング
  • 高い状態的仲間はずれ感→高いインスタグラム依存度→ファビング

まとめると、不安感を煽られやすかったり周りの友達に置いていかれるのを極度に嫌がる人はファビングに走る傾向が強かったんだと。しかもこうした傾向はやはり女性で強かったのだとか。この部分はさっきの研究とも一致しますね。

常にスマホをチェックしていないと不安になるから、人と会って話をしている時でもついついスマホが気になってしまう、と。これは納得のいく話ではないかと思います。

まとめ

では最後に今回のまとめといきましょう。

ポイント

  • SNS依存度が強いとファビングに走りやすい
  • 不安を感じやすかったり周囲に置いてけぼりにされるのが嫌な人はファビングに走りやすい
  • なぜか女性のほうがファビングに走りやすい傾向が確認された

この辺りを押さえておくと良さそうです。単純にSNSは依存性が強い!というのと、孤独感や仲間はずれ感といった社会的な不安がファビングに繋がることもあるみたい。

ただ今回取り上げたのはどれも初歩的な研究。色々な国から研究が出てき始めているものの、どれも横断研究(既にあるデータの中から関連を調査する手法)なので、因果関係の特定はできません。これからの追試に期待ですね。

赤羽(Akabane)

とりあえず言えるのは、ファビングはあまり気持ちの良いものではない、ということ。心当たりがある方は、なるべく控えたほうが健全な人間関係のためになるかと思います。

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参考文献&引用

#1 Agata Błachnio, Aneta Przepiorka (2018). Be Aware! If You Start Using Facebook Problematically You Will Feel Lonely: Phubbing, Loneliness, Self-esteem, and Facebook Intrusion. A Cross-Sectional Study. Volume: 37 issue: 2, page(s): 270-278.

#2 ROYAL SOCIETY FOR PUBLIC HEALTH. Social media and young people’s mental health and wellbeing. Published in 2017.

#3 Sabah Balta, Emrah Emirtekin, Kagan Kircaburun, Mark D. Griffiths (2018). Neuroticism, Trait Fear of Missing Out, and Phubbing: The Mediating Role of State Fear of Missing Out and Problematic Instagram Use. International Journal of Mental Health and Addiction. ISSN 1557-1874.