赤羽(Akabane)
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低カロリーの食品ラベルは人に「薄味で甘さ控えめだなぁ」と感じさせるようだ
我々が実際の味だけでなく製品ラベルによっても食品に対するイメージを変えている、というのは何となくわかる話かと思います。
ということでここからは「ラベルと味で満足感はどのように違うのか?」というテーマで見ていきましょう。
カロリーを揃えて食品ラベルと味だけ変える比較実験
2020年にシンガポールの研究者らが発表したRCT(#1)では、カロリーを変えずに製品ラベルと味を変えたら満足感は変わるのか?という面白い実験を行ってくれていました。
この実験は112名(21~54歳)を対象に、2日間にわたって行われました。初日は高カロリーなオリジナルの豆乳飲料(211kcal)を飲んで、2日目はその低カロリー版(98kcal)、という流れですが、この段階で参加者はランダムに4グループに分けられます。
- 味は同じ/ラベルなし:味はオリジナルと同じくらいにしてラベルを貼らない
- 味は同じ/ラベルあり:味はオリジナルと同じくらいにしてラベルを貼る
- 味は薄め/ラベルあり:味はオリジナルより薄めでラベルを貼る
- 味は濃いめ/ラベルあり:味はオリジナルより濃いめでラベルを貼る
ちなみにこの実験で使われたラベルはシンガポールで実際に使われているものらしく、こんな感じでした。
そして高カロリーと低カロリーの豆乳を飲んだ後、実験日を通しての空腹感やランチの内容、その他食事の摂取内容について聞きとりを行って、グループごとに違いは出るのか?を比べていきます。
すると結果、次のようなことが分かりました。
- ラベルなしだとオリジナルと同じ味、甘さ、食感だと答えたが、ラベルありだと味が薄くて甘さも控えめだと答えた
- ラベルがあって味も実際に薄くした場合は、オリジナルよりも味が薄いし甘さも足りないし満足感も低いと答えた
- ラベルがあって味を濃くした場合は、オリジナルとほぼ同じ満足度、味、甘さで、より濃厚な感じがすると答えた
ここから言えるのは、「低カロリーですよ」というラベルがあるだけで実際よりも味や甘さが控えめに感じてしまうんだということ。味や甘さを濃くしてようやくオリジナルと同等の満足度になったようです。
現にラベルありで味や甘さがオリジナルと同じか薄めた場合、有意にその後の空腹感が高まっていたり、満足感が低いことも分かっています。
ただ一方で、その後のランチのカロリー摂取量にはグループ間で特に違いが見られなかったようで、ここには「オリジナルか?低カロリー版か?」というカロリーの差でのみ違いが出た模様。つまり味覚やラベルを変えただけだとその後のカロリー摂取には大きな差は出ない、と。
注意点・まとめ
ただし注意点としては、以下を押さえておくと良さそうです。
- 人によってモラルライセンシングが起こる可能性はある:今回は見られなかったが、トクホや低カロリーといった健康的なラベルの食べ物を摂った後は「ご褒美に甘いもの食べちゃお..」という心理が働く可能性もある(特にダイエッターは)
- ラベルによる効果がどこまで一般化できるか?は未知数:今回は「低カロリー」表示のラベルを使用したが、他の表記だとどうなるかはハッキリと分からない
- 食品をどのように摂るか?でも味覚や食後の満足感も変わってくる:現に空腹感の違いは、朝食の一部としてではなく豆乳が一品で摂取された場合にのみ見られていた
今回の実験の対象者は特にダイエット熱心な人たちではなかったので、この点でモラルライセンシングが発動しなかったのかな?と考えられます。
では最後に今回のまとめになります。
- 食品ラベルで食べ物の味覚は変えられる
- 低カロリーのラベルで豆乳飲料の甘さや満足度が落ちて食後の空腹感も増大する傾向が見られた
- ただ実際のカロリー摂取には影響しなかったようで、その後のランチでのカロリー摂取量も有意な差はなかった
こんな感じでしょうか。「低カロリー」のラベルで味覚や食感、満足度、空腹感などは変わったようですが、その後実際摂ったカロリーは大して変わらなかったみたいですね。
赤羽(Akabane)
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#1 Keri McCrickerd, et al. Using Sensory Cues to Optimise the Satiety Value of a Reduced-Calorie Product Labelled ‘Healthier Choice’. Nutrients 2020, 12(1), 107.