【難しい?腸内細菌が壊滅?】「低FODMAP」にありがちな4つの反対意見・批判とその一問一答

【難しい?腸内細菌が壊滅?】「低FODMAP」にありがちな4つの反対意見・批判とその一問一答

赤羽(Akabane)

今回は「低FODMAPs」にありがちな反対意見・批判についてのお話です。

難しくて続けられない!腸内細菌が壊滅!「低FODMAP」にありがちな反対意見・批判の一問一答

「FODMAPs(フォドマップ)」については前章でザックリ説明しておりますが、一応ここでも軽くおさらいしておきます。

「FODMAPs」とは、「Fermentable(発酵性)」「Oligosaccharides(オリゴ糖)」「Disaccharides(二糖類)」「Monosaccharides(単糖類)」「Polyols(ポリオール)」の頭文字を取った名称で、短鎖炭水化物や糖アルコールのグループを表したものである。[筆者訳](#1)

あまりピンとこないかもですが、要はこうした炭水化物の仲間たちは消化吸収が大変だったり、腸内でガスを発生させやすかったりで、腸内環境が最悪な人にとってはよろしくないモノなんですね。

で荒れ果ててしまった腸内環境を復旧するために、これらを徹底的に減らした「低FODMAPs食」が効果てき面だ!という感じです。

FODMAPs 腸内環境 食品荒れ果てた腸内環境を治す最重要ポイント「FODMAPs」とは?

FODMAPsにありがちな4つの反対意見・批判とその一問一答

ではここから本題へ。低FODMAPsはかなり極端な食事制限なので、反対意見や批判も結構あります。

この問題について参考になるのが、2019年に「FODMAPs食」を提唱したメルボルンのモナッシュ大学が発表した研究(#2)で、FODMAPs食にありがちな批判とそれを克服する新しい「優しいFODMAPs食」を提案する内容になっていました。

この記事では前半の「低FODMAPsにありがちな批判」について一問一答形式で見ていきましょう。

「厳しすぎて続けられないだろう」

禁止食品リストを渡されただけなら大変そうに見えるのは仕方ないが、実際には症状の改善が見られれば数か月以上続けられたというデータ(#3)も見られる。月並みだがやってみないと分からない。


「FODMAPs食は一生続けていくものだ」

低FODMAPsの食事制限は徐々に体の反応を見て緩くしていくので、これは正しくない。腸の状態に応じて食事の選択肢も増やしていけるかもしれないし、そもそも最初の厳しい制限を長期で続けると栄養不足の恐れもある。


「FODMAPsは自分にとって悪いものだ」

感覚的に自分の腸内環境は悪いと思っている人にありがちな主張。むしろ健康な人では腸内細菌のエサになったり、腸内での短鎖脂肪酸の産生を促進させたりする。正式な診断を待たずには一概に悪者とは言い切れない。


「低FODMAPs食は腸内細菌を壊滅させる」

この主張は程度の問題になってくる。低FODMAPs食は食物繊維など腸内細菌のエサが食事から排除されるので、腸内細菌の構成が崩れるんでは?という懸念がある。

実際のデータでは、低FODMAPs食は腸内細菌の多様性には影響がないが、一部ビフィズス菌や短鎖脂肪酸「酪酸」「酢酸」を作ってくれる善い細菌が減るという報告(#4, #5)もある。この変化がどのくらい健康に影響があるか?はハッキリしていない。

まとめ

では最後に今回の内容をまとめます。各反対意見・批判に対して、現状の答えはこんな感じでした。

ポイント
  • 「厳しすぎて続けられないだろう」→実際のデータで、症状の改善が見られれば数か月単位で続けられる!という傾向が見られるので、正直やってみないと分からない。
  • 「低FODMAPs食は一生続けていくものだ」→低FODMAPsの食事制限は3つのステップに分かれて自分の体質に合った制限を徐々に開放していくので、これは間違い。おまけにずっと厳しい制限をすると栄養不足の恐れもある。
  • 「FODMAPsは自分にとって悪いものだ」→自分にとって悪いか?は診断次第。少なくとも感覚的に腸が健康ではない、というだけでは一概に悪者とは決めつけられない。
  • 「低FODMAPs食は腸内細菌を壊滅させる」→これは壊滅の程度による。低FODMAPsは、腸内環境の良し悪しを決めるポイントである「腸内細菌の多様性」には影響がなかったものの、一部善玉菌を減らしてしまうという報告が幾つか上がっている。これがどのくらい健康に影響を及ぼすかは現時点では分からない。

明らかに「違いますよ」と言えるものから、状況によって答えが変わりますよ、というものまで色々ありますね。

そもそも「低FODMAPs」自体、最終的にはそれぞれ個人に合った食事制限にカスタマイズすることが推奨されているので、これは致し方ないかと思います。(グルテン不耐性持ちなら穀物は徹底排除、とか)

赤羽(Akabane)

FODMAPsについてのバックナンバーは以下をご覧ください。次回はココで挙げた低FODMAPの問題も克服した「優しいFODMAP食」について書いていきます。

壊れた腸内環境を立て直す「FODMAPs」次号

「低FODMAP」の問題点をクリア!荒れた腸内環境を治す新しい食事法「優しいFODMAP」「低FODMAP」の問題点をクリア!荒れた腸内環境を治す新しい食事法「優しいFODMAP」

壊れた腸内環境を立て直す「FODMAPs」バックナンバー

FODMAPs 腸内環境 食品荒れ果てた腸内環境を治す最重要ポイント「FODMAPs」とは?FODMAPs 腸内環境 食品荒れ果てた腸内環境の救世主「低FODMAPs食」のNG食品・OK食品一覧FODMAPs 腸内環境 食品 IBS 腸過敏性症候群【過敏性腸症候群】「低FODMAPs」の食事制限はどのくらい効果があるのか?

参考文献&引用

#1 Peter R Gibson Susan J Shepherd. Evidence‐based dietary management of functional gastrointestinal symptoms: The FODMAP approach. Journal of Gastroenterology and Hepatology Volume25, Issue2, February 2010, Pages 252-258.

#2 Emma P Halmos Peter R Gibson. Controversies and reality of the FODMAP diet for patients with irritable bowel syndrome. J Gastroenterol Hepatol. 2019 Jul;34(7):1134-1142.

#3 de Roest RH, Dobbs BR, Chapman BA et al. The low FODMAP diet improves gastrointestinal symptoms in patients with irritable bowel syndrome: a prospective study. Int. J. Clin. Pract. 2013; 67: 895–903.

#4 Staudacher HM, Lomer MCE, Farquharson FM et al. A diet low in FODMAPs reduces symptoms in patients with irritable bowel syndrome and a probiotic restores bifidobacterium species: a randomized controlled trial. Gastroenterologia 2017; 153: 936–947.

#5 Halmos EP, Christophersen CT, Bird AR, Shepherd SJ, Gibson PR, Muir JG. Diets that differ in their FODMAP content alter the colonic luminal microenvironment. Gut 2015; 64: 93–100.