赤羽(Akabane)
目次
中量のアルコールでも中年に差し掛かると脳のボリュームが減少してしまうかもしれない
アルコール摂取量と脳のボリュームの相関を調べた研究結果
2020年にヘルシンキ大学が発表した研究(#1)によると、飲酒量が多いほど中年でも脳のボリュームは減るし、飲酒量は中量でも十分に影響があるかも?ということみたいです。
この研究では、353名(39~45歳)を対象に、中年時点での500項目以上あるアンケート調査やMRIによる脳の測定データの結果を分析したものです。アンケートの中には、アルコールの摂取量を調べる項目も含まれていました。
参加者は、元々ヘルシンキにある病院で1971~1974年に生まれた乳幼児たちで、この調査データでは彼らが5,9,16,30歳の時にも同様の調査を行っています。そしてその中から、39~45歳という中年の年齢に差し掛かったタイミングで、再び上記のような調査への協力をお願いしていたというわけですね。
そしてこうした調査の結果をまとめると、以下のようなことが判明しました。
- 参加者の平均のアルコール摂取量は少量~中量に相当した
- アルコールの摂取量が多いほど、脳のボリュームが小さいことが分かった
- この結果は、性別や喫煙歴の影響を調整しても変わらず有意なものだったが、喫煙歴を調整した場合には、女性で有意な結果ではなくなった
どうやら、飲酒量が増えると中年の段階でも脳が小さい傾向が確認されたようで、その量は中量でも十分に影響があるかもしれないようです。またこうした傾向は年齢や喫煙歴などにはあまり左右されなかったみたい。
アルコール摂取量のアンケート調査については、0~12段階で飲酒量や飲み過ぎてしまう頻度などをチェックしていたんですが、この回答が1段階アップする毎に脳のボリュームも約0.2%縮小していた様子。
注意点・まとめ
ただし注意点として、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- サンプルは生まれてくる際に死亡リスクがあった人たちが大半: 調査データの趣旨の都合上、参加者らの8割は乳幼児期に死のリスクが高かった人たちだったので、健康な人で同様の結果になるかは不明
- 他の国や文化圏では結果が違うかもしれない: 脳のボリュームには他の生活習慣も影響していると考えられるが、今回はヘルシンキの一つの病院で集まったデータしかない
- 因果関係は特定できない: 過去のデータから相関関係を分析するという研究デザイン上、アルコール消費量が脳のボリュームを減少させる!という因果関係を裏付けることはできない
今回の結果だけで見ると、データの質などを考慮して何だか心許ない感じがしますが、これまでの知見も踏まえると、アルコールの脳への影響は少なからずあると考えられます。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 中量のアルコールでも中年に差し掛かると脳のボリュームが減少してしまうかもしれない
- 今回の調査結果では、少量~中量で飲酒する中年の男女を対象に、アルコール摂取量が増えるほど脳のボリュームが減少するという相関関係が確認された
- こうした結果は、全体的には年齢や喫煙歴などに影響されなかったが、喫煙歴を調整すると女性でこの相関関係が有意でなくなった
赤羽(Akabane)
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#1 Immonen, S., Launes, J., Järvinen, I. et al. Moderate alcohol use is associated with decreased brain volume in early middle age in both sexes. Sci Rep 10, 13998 (2020). https://doi.org/10.1038/s41598-020-70910-5