赤羽(Akabane)
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スクワットで重量を下げると筋活動も減るが【ある工夫】をすればカバーできるらしい
スクワットで負荷を下げても筋肉に効かせるには挙上スピードを意識せよ!という実験結果
2019年にノード大学と西ノルウェー大学が発表した研究(#1)によると、フリーウェイトのスクワットで高重量がキツい時には、重量を下げてもいいが、代わりに挙上スピードを最大限まで高めるとある程度は同レベルの効き目が得られる!ということが分かりました。
この研究では、筋トレ歴6年前後の男性トレイニー13名(平均24歳)を対象に、1RMの30~100%の重量でバックスクワットを行ってもらう実験を行っていまして、実験中には以下のような下半身の筋肉の活動を筋電図で測定していました。
そして参加者らは、「各重量は可能な限り最大スピードで挙げてください」という風に指示を受けており、このスピードや筋活動は重量によってどんな影響を受けるのか?という点をチェックしています。
果たして実験の結果は、以下のようになりました。
- 重量が増えるごとに最大挙上スピードは落ちていった(これは当たり前ですね)
- 全体で有意な筋活動が見られたのは、半腱様筋と大腿直筋だった。大殿筋の活動は1RMの60~80%の範囲でしか増加していなかった
- 1RMの40~60%、70~90%ではそれぞれ同じレベルの筋活動が起きており、100%の時に最も大きかった。
重量が増えるごとに挙上スピードが落ちたのは予想通りですが、面白いのが、低重量でも最大スピードで挙げる努力をすればそれよりちょっと上の重量の時と変わらないレベルで筋活動が起きていた!というところ。筋力アップ狙いであれば1RM90%くらいで数レップが定番ですが、この時も最大スピードで挙げるという条件であれば、70%まで下げてもトレーニングの質はそれ程下がらないかもしれないということになります。
また今回のスクワットでは、メインターゲットである大殿筋(お尻の筋肉)よりも太もも前側の筋肉に効いていました。これは実験のルールとして膝の屈曲が80度までだったことが響いていると考えられます。つまり、ハーフスクワットよりも若干浅いくらいのしゃがみ込みだったということで、完全にしゃがみ込むフルスクワットの場合はもっと大殿筋の筋活動は増えるんじゃないかな?と思います。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、以下の点は押さえておくと良さそうです。
- サンプルサイズは小さい: 筋トレ研究でよくある問題で、実験ごとの参加者数が少なく、統計的なパワーが弱い
- サンプルは限定的: 参加者は筋トレ歴の長い男性トレイニーのみで、他の筋トレ初心者や高齢者、女性などでどこまで一般化できる内容かは分からない
- 筋活動が筋肥大や筋力アップなどにどこまで直結するかは分からない: 今回は異なる負荷ごとの筋活動を筋電図で測定しているだけなので、これが実際にどのくらい筋肉の発達に繋がるのか?までは分からず
筋トレ研究で定番の課題が並んでいます。参加者の数が少ない点、参加者に若い熟練トレイニー男性が選ばれがちな点など、今回の実験結果が参考になる人はかなり限られてしまいそうです。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- フリーウェイトのスクワットで重量を下げると筋活動も減るが【挙上スピードを最大限速めれば】これをカバーできるかもしれない
- 若い筋トレ経験者男性を対象にした今回の実験では、挙上スピードを最大限速めるという条件下で、1RMの40~60%、70~90%ではそれぞれ同レベルの筋活動が起きていることが判明した
- リハビリ中のアスリートなど、高重量でのトレーニングが好ましくないケースにおいて、低負荷でスピードを意識したスクワットはかなり有効かもしれない
赤羽(Akabane)
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#1 van den Tillaar R, Andersen V, Saeterbakken AH. Comparison of muscle activation and kinematics during free-weight back squats with different loads. PLoS One. 2019 May 16;14(5):e0217044. doi: 10.1371/journal.pone.0217044. PMID: 31095625; PMCID: PMC6521994.