赤羽(Akabane)
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ネガティブ動作にゆっくり時間をかけて限界まで追い込めば筋肉が発達しやすくなる!って本当?
筋トレをやっているとよく言われるのが、こうした話です。下ろす動作は、正式には伸張性収縮(エキセントリック)と呼ばれ、俗に言うネガティブ動作のことですが、この局面こそ筋肉の発達には大切なんだ、と。
確かに、筋トレによる筋肉痛は、ネガティブ動作の負荷によって起こりやすいことがわかっていたり、何かと効きそうな感じはします。そこでこの記事では、下半身を鍛えるスクワットの場合もゆっくりネガティブを意識した方がいいの?というデータを見ていきます。
ネガティブの負荷をゆっくりかけるバックスクワットはあまり目立ったメリットなし?むしろ変に効かせようとしない方がいいかも…
2018年に酪農学園大学の研究者らが発表したRCT(#1)によると、バックスクワットのネガティブ局面にゆっくり時間をかけることは、あまりメリットがないことが分かりました。
この研究では、学生サッカー選手22名(平均20歳)を対象に、彼らを以下の2つのグループにランダムに分ける実験を行いました。
- 2/4グループ(11名):2秒の短縮性収縮(コンセントリック) + 4秒の伸張性収縮(エキセントリック)でパラレルバックスクワットを行う
- 2/2グループ(11名):2秒の短縮性収縮(コンセントリック) + 2秒の伸張性収縮(エキセントリック)でパラレルバックスクワットを行う
*実験期間6週間、トレーニングは週2回、1RMの75%で3セットをオールアウトする(もう挙がらない…までやる)、各セット間のインターバルは3分
*トレーニング後、参加者は全員プロテインドリンク(たんぱく質25.0g)を飲む
測定項目は、実験前後と途中3週間経過時点の右太ももの筋断面積(筋肉量)、スクワットの1RM(筋力)、スクワットジャンプ(パワー)、カウンタームーブメントジャンプ(以下CMJ, パワー)、Tテスト(俊敏性)、ヨーヨーテスト(持久力)でした。割と総合的にテストしていますね。
そして実験の結果、こんなことが分かりました。
まとめると、バックスクワットのネガティブ局面にゆっくり時間をかけることで得られるメリットはさほどないみたいです。一応、筋力や筋肥大、一部パワーのテストで成長は確認されましたが、筋力の発達に関しては、ネガティブ局面がより短いグループに負け越しています。
では、どうして上記のような差が見られたのでしょうか?考えられる要因としては、両者の総合的なトレーニング量の差が挙げられます。2/2グループの方が、2/4グループよりも最終的なボリュームは36%高かったことが分かっていて、つまり、2/4グループはネガティブに時間をかける余り、筋肉が早い段階で限界を迎えてしまっていて、トータルのトレーニング量が減ってしまったんじゃないか?と。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- サンプルサイズは小さい: 全体の参加者は数十人と規模が小さい分、統計的なパワーは弱くなる
- 参加者は全員若い男性: 筋トレ研究にありがちだが、対象になった人が若い男性のみなので、女性や他の年齢層、他のトレーニング歴の人にも当てはまるか?は分からない
- トレーニングはオールアウトしている: 各セットは「もう挙がらない..」というところまで追い込んでいて、適度なところでやめた場合にどうなるか?は分からない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 筋トレは下す動作こそ大事!ネガティブを効かせることで筋肉が発達しやすくなるんだ!という考え方がある
- しかし今回の実験によると、バックスクワットにおけるネガティブ動作の重視は、かえって筋力アップ効率を下げる可能性が示唆された
- 筋肥大や一部パワーの測定項目に関しては、ネガティブ局面にかける時間によって有意な差は見られず、どちらも同じように発達が見られた
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Shibata K, Takizawa K, Nosaka K, Mizuno M. Effects of Prolonging Eccentric Phase Duration in Parallel Back-Squat Training to Momentary Failure on Muscle Cross-Sectional Area, Squat One Repetition Maximum, and Performance Tests in University Soccer Players [published online ahead of print, 2018 Oct 12]. J Strength Cond Res. 2018;10.1519/JSC.0000000000002838. doi:10.1519/JSC.0000000000002838