赤羽(Akabane)
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「音楽」という英才教育の効果やいかに?
この説は割とありそうな響きがしますが、最近出た大規模な研究(#1)では、全体的に見るとちょっと厳しいんじゃないか…?という結論になっていました。「頭がよくなる」にも色々あるので、その部分も見ていきましょう。
子どもの頃から音楽を始めれば頭が良くなる?
では本題に入ります。参考になるのが2017年にリバプール大学が発表したメタ分析(#1)。
これは過去1986~2016年に発表された38件の研究から3085名を対象に行われた分析で、3.5~12.7歳までの子どもが音楽の特訓をしたら頭がよくなるのか?をまとめたもの。
まずここでの「頭がよくなる」と「音楽の特訓」の定義をハッキリさせておくと、
頭がよくなるの指標
- 読み、書き、話す、スペル、IQ、数学のスコア、記憶力、視覚的な空間認知力
音楽の特訓内容
- リズム感、楽器の演奏、合唱や独唱、ダンス、即興など
流石に研究によってまちまちですね。でこうしたバラバラの効果を一旦全部まとめて見てみると、
- 音楽でちょっぴり頭が良くなる (d = 0.16, CI [0.09; 0.22], p < 0.001)
このような結果に。ここから言えるのは、幼少期の音楽訓練で子どもたちの頭がちょっぴり良くなる!ということ。
ちなみに「d=0.16」という数字は効果量というもので、そのまま効果の大きさを表しています。研究デザインによって変わりますが、大体「d=0.7」を超えたあたりから効果は大!とされることが多いですね。
そしてこれをもう少し詳しく見てみると、
- 記憶力がまあまあ高まった(d=0.34, CI[0.20; 0.48], p<0.001)
- IQがまあまあ高まった(d=0.35, CI[0.21; 0.49], p<0.001)
音楽で有意な結果が出たのはこの2つでした。ここまで見ると、なかなか希望が持てそうな感じがします。
続きをよーく見てみると…
ただしこの研究には続きがあって、「結果に何か別の要素が影響してるんじゃないか?」という可能性を調べるために、メタ回帰分析を行ってくれています。例えば、「年齢が高い子どもで効果が高く出てるんじゃないか…?」みたいな感じで詳しい要因も探っていくんですね。
すると、以下のような条件で、音楽による効果がほとんど無くなったとのことです。
- 参加者のグループ分けがランダムである
- 比較グループがアクティブコントロールである
これは簡単に言うと、実験の質が高いと音楽の効果がほとんど出なかったということ。グループ分けがより客観的で、比較グループも「何もしない」場合より、「音楽以外の何か別のコトをする」場合だと有意な効果が出なかった、と。
注意点・まとめ
これも踏まえて今回の結果をまとめると、こんな感じになりそうです。
- 幼少期に音楽で頭が良くなる!はジャンルによる
- 学業成績には効果がなさそう
- 効果があるかもしれないのは「IQ」や「記憶力」
- 何もやらないよりはマシ
- ただスポーツや他の教育法などと比べて音楽が優れているわけではない
やらないよりは良いけれど、他の方法でもあまり変わらないですよ、と。
ただ最後に一点注意ポイントを挙げておくと、今回対象になった研究の多くが数か月~1年くらいの介入試験でした。つまり、今回の結果はどちらかというと短期的なモノ。その後何年も音楽を続けた場合の効果はまた違ってくる可能性があるんですね。
赤羽(Akabane)
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#1 Giovanni Sala, Fernand Gobet. When the music’s over. Does music skill transfer to children’s and young adolescents’ cognitive and academic skills? A meta-analysis. Educational Research Review Volume 20, February 2017, Pages 55-67.