赤羽(Akabane)
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人は決断を下す時、思ったより判断材料を活用していないらしい
インターネットが発達した現代では、スマホさえあれば膨大な情報に一瞬でアクセスできますが、私たちはこうした情報をうまく活かせているんでしょうか?
というわけでこの記事では、人が行動に踏み切ったり意思決定をする際の思考について、面白いデータを共有します。
人は自分で思っているよりも判断材料となる情報を活かせていない
2018年にシカゴ大学の教授らが発表した研究(#1)によると、どうやら私たちは判断を下す際にあまり手元の情報を活かせていないようです。
この研究は2000名以上を対象に7つの実験を行なっていて、主に以下のテーマを検証したものです。
- 人は判断を下す前にどのくらいの情報を活用しているのか?
- 本人が思っているのと実際では、活用した情報量にどのくらい差があるのか?
- 情報をきっちり活かせないのはどうしてなのか?
例えば、40枚の写実的なスタイルの絵画を順番に見せていって、参加者らを①そのスタイルの絵が好きか嫌いか判断が固まったらすぐに止めて判決を下すグループと②その絵が好きかどうか判断を下すのにどのくらいの絵を見る必要があるか?を予想するグループの2パターンにランダムで分けるという実験があったり。
はたまた、面白い猫の動画と引用文付きのEメールサービスを5日間試してもらって、そのサービスに対する初日の印象と、その後2〜5日目の予想を立ててもらい、実際の印象と比べるという実験もありました。
そしてこうした実験の結果、一貫して以下のようなことがわかったようです。
- 参加者らは手元にある判断材料をあまり活用せずに決断を下してしまっていた
- 参加者らは自分では情報を十分に活用していると思っていたが、実際はより少ない判断材料で決断を下していた
- 評価される側(面接の応募者など)が頑張って沢山の情報を提供したとしても、割と最初の段階で印象が決まってしまったり判断が下されてしまっていた
まとめると、人は手元の情報を十分に活用して判断を下せていると思いきや、実際はそのほんの一部しか活用していなかったんですね。しかも、情報をどんなに詳細に一生懸命提供しても、それらの情報はほぼ参考にされていなかったという…。
人間の脳は元来楽をしようとする性質があって、これは入ってくる情報全てを処理しようとすると頭がパンクしてしまうからです。その為、無意識のうちに早い段階で「良い!悪い!」や「好き!嫌い!」といった風に白黒はっきりした判決をつけるということが起きてしまうんだと考えられます。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくとよろしいかと。
- 今後もっと色々な状況で追試される必要がある:今回は絵画の好みや選挙の当選者、採用面接、結婚相手、他人の能力の評価といった文脈で実験が行われたが、他の文脈でどこまで再現できるか?は今後の課題
- どうすれば情報をうまく活用できるか?までは分かっていない:今後の課題とされている
2つ目については、ダニエル・カーネマンの「ファストアンドスロー」に代表される「システム1, 2」の考え方を意識すれば決断までに情報を活用するメンタリティを養えるのでは?とも言われていますね。(*詳しくは以下の書籍リンクをご覧ください)
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 人は意思決定をする時、思ったより判断材料を活用していないようだ
- 自分では十分に判断材料を考慮しての決断だと思っていても、客観的にはあまり多くの情報を活用できていなかった
- 情報を頑張って詳細に与えたとしても、その情報はあまり活用されないようだ
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Nadav Klein and Ed O’Brien. People use less information than they think to make up their minds. PNAS December 26, 2018 115 (52) 13222-13227.