赤羽(Akabane)
目次
創造性は右脳で論理性は左脳?本当のクリエイティビティの源泉はどうなってるの
創造性はアーティストのみならず、誰しもが欲しがる能力ですが、こうした特性は才能で決まってしまうものなんでしょうか?
私たちの耳に馴染みがある説といえば「右脳は論理的思考で左脳は創造性を司っているんだ!」というものですが、こうした説に基づいた性格診断も2013年の脳fMRI研究(#1)でバッサリ否定されてしまっています。
というわけで、この記事では「右脳左脳で分けちゃうより創造性にはもっと大事な事実があるのでは?」というデータを見ていきます。
即興演奏中のジャズ奏者を調べてわかった本当のクリエイティビティの源泉とは?
2020年にドレクセル大学が発表した研究(#2)によると、創造性を発揮する脳の部位はその道での熟練度に応じて変わることが判明したようです。
この研究では、ジャズ奏者32名を対象に、彼らの即興演奏中の脳波を測定するという実験を行っていて、あまり経験のない奏者から最大1500回のライブをこなした熟練者まで含まれていました。ジャズの即興演奏といえば創造性が求められますし、今回のテーマにもピッタリかと思います。
実験の風景はこんな感じ。ギターの即興演奏なので、定番のfMRI測定だと仰向けにならなければいけない分ちょっと厳しい..ということで座りながら脳波を測定できる装置を使ったみたい。
そして実験結果を比べてみると、こんなことが分かりました。
ここから言えることは、奏者が経験を積むほど、創造性の源泉は右脳から左脳へとシフトしていくということ。即興の演奏経験が少ないうちは、右脳を創造性のリソースとして使い、経験が増えていくと徐々に情報処理やそのプロセスの自動化に長けている左脳へとリソースが移っていくみたいです。
またこの研究では、他にも即興演奏の評価を行っていて、低評価か高評価か?で奏者の脳波データと照らし合わせると、以下のような事実が判明しました。
そして奏者の経験や場数を度外視して考えると、こんなことも分かりました。
まとめると、創造性が低いと評価された演奏では、理性を司る前頭葉なども同時に活性化していて、即興のクリエイティビティを欠いてしまったのでは?と考えられるわけですね。
また奏者の腕や経験を外して考えると、創造性で高評価を得るには一転して右脳の活動が大事!という結果になりました。つまり、経験が浅いうちに創造性の源泉になる右脳の活動は、経験を積んで左脳にシフトした後でも創造性を発揮するのに大切なんだ、と。
研究チームは今回の知見について、以下のように述べていました。
「ジャズの即興を創造的にするものは何か?」と聞かれたら、今回の研究による判断はこうだ。「頭の中のあらゆるストックに思考を巡らすこと」「ジャズの一般的な語彙のフレームワークの中で思考のオリジナリティを発揮すること」そして「感情的に揺さぶられるテーマやバリエーション、リズミカルなフレーズ」である。[筆者訳]
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 楽譜の内容や実験内での演奏回数によって結果が変わるかもしれない:例えば、今回の研究では奏者らは6回の即興演奏を披露したが、過去の研究では同じ楽譜から4回即興を行って食い違う結果が出ていたりする
- 即興の質は二極化でしか調べられていない:データが少ない分、即興による創造性の評価は高いか低いかの単純な評価になってしまった
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 創造性の源泉は経験や場数によって変わってくることが分かった
- ジャズ奏者を対象にした研究では、即興演奏中の脳の活性部位は熟練者になるほど左脳に寄っていて、経験が少ない奏者では右脳を主なリソースにしていた
- ただし経験を抜きにすると、創造性で高い評価を得るには一転して右脳側の活動が重要になってくることが分かった
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Nielsen JA, et al. (2013) An Evaluation of the Left-Brain vs. Right-Brain Hypothesis with Resting State Functional Connectivity Magnetic Resonance Imaging. PLoS ONE 8(8): e71275.
#2 David S. Rosen, et al. Dual-process contributions to creativity in jazz improvisations: An SPM-EEG study. NeuroImage, 2020; 213: 116632.




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