赤羽(Akabane)
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「君の名は。」をリアル検証?!友達と体を入れ替えると自分の性格もその人と似たように感じるらしい
友達と体が入れ替わると自分の性格がその友達のものと似たように感じるらしい
2020年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者らが発表した研究(#1)によると、友達と体が入れ替わると自分の性格がその人のものと似たように感じることが分かりました。
この研究は66名(平均26歳)を対象にしていて、平均3年半来の友達同士のペアで構成されています。実験では、ペアで1つずつのベッドに寝かせて、二人とも頭に装置を装着します。そして、お互いが装置を通して見ている視界をリアルタイムで入れ替えました。
そして装置の視界がよりリアルに感じられるように、研究者がタイミングを合わせて体に触れたり模型のナイフを突き付けたりするんですが、ここで大きく2つのパターンに分けたようです。
- シンクロ: 装置を通して見える動きと触覚が完全に一致する
- アシンクロ: 装置の視界と触覚が一致しないorタイミングがズレている
こうなると、当然シンクロの方がより体が本当に入れ替わってる感覚になりそうです。そしてそれぞれのパターンの後に、感覚的な没入感をチェックするアンケート調査や皮膚から緊張感を測定したりしました。
また装置の実験前には、性格特性に関するアンケートを行っていました。これは、「120種類の性格特性がそれぞれペアの友達にどれ位当てはまるか?」に1〜9のリッカート形式で答えるものでして、同じものの自分バージョンを装置の実験中に30問ずつやっていくという流れでした。こうすることで、友達に対する印象と自分自身への印象が体の入れ替わりによってどうリンクしていくのか?を見ているんですね。
そしてこれらの結果を照らし合わせると、こんなことが分かりました。
- 没入感やナイフに対する緊張反応などは、やはりシンクロのパターンで有意に高かった
- シンクロのパターンの時ほど、実験前の友達の性格評価と実験中の自分の性格評価が似る傾向があった
まとめると、友達の体と入れ替わった感覚が強い状況では、自分自身の性格評価なのに自然と友達に対する事前評価と似てしまう!と。こうした結果は、主観的な没入感だけではなくて、皮膚を伝った生理学的な反応とも関連していて、ある程度客観性も担保されたデータだと言えましょう。
友達の体に入れ替わった没入感が強ければ記憶にも支障をきたさない
また、この実験には続きがありまして、実験後に再び性格評価の調査に答えてもらっていました。ただし今回は、前に含まれた性格特性とは別に新120種がミックスされたもので、要は実験中に出てきた性格特性をどこまで覚えているか?をチェックする記憶テストの役割を果たしています。
一応、記憶テストの存在意義は「人は自分に関連のある事象はよく覚えていられる」という点の検証でして、今回体を入れ替えて自分自身の性格の評価が変わってしまったことで、記憶の齟齬が起こっていないか?という部分をチェックしています。
すると結果は研究チームの読み通りで、友達の体により没入して性格も似たように評価していた人ほど、記憶テストの成績が良かったんだそうな。逆に、友達の体に上手くのめりこめなかった人は記憶テストの成績が低い傾向にありました。これは、前者のケースの方が友達の体を持ちながらも自分の価値観との間にズレが生じにくいからだと考えられています。
注意点・まとめ
ただし注意点として、ざっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- サンプルサイズは小さい: ペアで見るともっとサンプルが少なく、その分統計的なパワーは弱くなる
- 記憶テストの検証範囲は限定的: 性格特性の羅列の中から覚えがあるものを挙げていくという内容なので、別の記憶タイプにも同じことが言えるか?は分からない(時や場所の記憶など)
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 友達と体を入れ替えると自分の性格もその人と似たように感じるらしい
- 装置を使ってペアの友達の体に入れ替わったように見える実験を行ったところ、実験前に行った友達の性格評価と装置の実験中に行った自分の性格評価が似る傾向があった
- 友達の体への没入感が強いほど、模造ナイフでの脅しに緊張反応が起こったり、まるで自分に起こったかのような反応を示していた
赤羽(Akabane)
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#1 Tacikowski et al., Perception of Our Own Body Influences Self-Concept and Self-Incoherence Impairs Episodic Memory, iScience (2020), https://doi.org/10.1016/j.isci.2020.101429