赤羽(Akabane)
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fMRIで脳を測定した結果: 他人を想う利他的な親切と見返りを求める戦略的な親切は別モノ!
早速ですが、このテーマについて参考になるデータを見ていきます。
1000件以上の脳波データをまとめた結果!親切行動は利他的か戦略的かで脳の活動領域が違う
2019年にサセックス大学が発表したメタ分析(#1)によると、同じ親切行動でも、見返りを求める戦略的なものか相手を想う利他的なものかで脳の活動が一部違うことが分かりました。
この研究は、36件の研究から1,150名分のデータを対象にしていて、含まれたそれぞれの実験は、親切な行いを大きく以下2つに分類して脳のスキャンを行うというものでした。
- 戦略的な親切…見返りがあることを想定して、それをモチベーションにした他人への親切
- 利他的な親切…見返りを求めることのない自発的な他人への親切
要は、結果として相手が受け取る親切は同じであるけれど、そこに至る過程の動機が違うと、脳にはどんな違いが見られるの?と。面白い研究ですね。
そして上記の分析の結果、以下のようなことが分かりました。
- 戦略的・利他的な親切の両方で、脳の報酬系が活性化していた
- 利他的な親切では、脳の前帯状皮質膝下部や腹内側前頭前野の後部が活性化していた
- 戦略的な親切では、線条体領域や腹内側前頭前野の前部が活性化していた
まずは、兼ねてから言われていた、「他人に親切にすることで脳の報酬系が活発になる」という話ですが、この点においては両者で反応が増大していることが判明。
※報酬系…快感ややる気にまつわる「ドーパミン」の分泌などに関わる大脳の領域を指す。この回路が強化されると、何かを「したい!」というモチベーションも強化されるが、度を超えると依存症を引き起こすことも。(例:ギャンブル、タバコ)
次に、両者の違いですが、報酬系に関係している部位の中でも、活性化する部位がそれぞれ異なることが分かりました。例えば、利他的な親切では、チャリティー募金などで活性化する部位が活性化している一方で、戦略的な親切では、報酬系と密接に関わる部位の活性化が特に大きかったようです。どちらも根っこは同じだけれど、細かい枝の部分が違う、みたいなイメージでしょうか。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、今回の分析には年齢や性別、性格特性といった個人差は考慮されていない点は押さえておくとよろしいかと。単純にfMRIのスキャンデータをまとめて平均化しただけなので、この辺りの情報はありませんでした。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 見返りを求めない「利他的な親切」と何かしらリターンを見込んだ「戦略的な親切」では脳の反応が微妙に異なるようだ
- 1000名以上のfMRIデータを分析してみると、どちらも報酬系が活性化していたが、細かくみると、利他的な親切ではチャリティ募金などで活性化する部位が反応していて、戦略的な親切ではより快感にまつわる部位が活性化していた
- ただし、参加者らの年齢や性別、性格などの個人差は考慮されていないので、今後はこの辺りも踏まえた分析ができればもっと参考になりそうだ
赤羽(Akabane)
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#1 Cutler J, Campbell-Meiklejohn D. A comparative fMRI meta-analysis of altruistic and strategic decisions to give. Neuroimage. 2019;184:227-241. doi:10.1016/j.neuroimage.2018.09.009