赤羽(Akabane)
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「席に着いて授業」はもう古い?学習効率を高めるなら体を動かしながら授業をするアクティブ・レッスンだ!
従来の授業風景といえば、教室にきれいに整頓された机と椅子、そして所定の席に行儀よく着いて先生の話を聞く生徒たち…といった感じでしょうか。
しかし最近の研究では、こうした授業のスタイルよりも学習効率がいい方法というのが分かってきています。この記事ではその一つを見ていきましょう。
体を動かしながら授業を進める「アクティブ・レッスン」の効果を検証したメタ分析
2019年にユニバーシティ・カレッジ・ロンドンが発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)によると、体を動かしながら学習する「アクティブ・レッスン」で日頃の運動不足を解消しながら学業成績もアップすることが分かったようです。
この研究は42件の研究(うち27件はRCT)を集めて、アクティブ・レッスンの効果を検証したものです。まず今回検証する項目と、アクティブ・レッスンの具体的な内容をチェックしておきましょう。
- レッスン中の運動時間
- 運動量(着席時間、歩数、軽度の運動時間)
- レッスン中にタスクに集中して取り組む時間
- 健康面(BMI、心肺機能を測定)
- 学業成績(数学の確認テスト等を行う)
- 認知機能(流動的知性を測定)
- 数学の授業で正解の数値分だけその場でジャンプする
- 質問に対する答えを動きで表現する
実験期間は1回きり~3年の短期~中長期まで幅広くて、レッスンの時間設定も週当たり10~180分まで結構バラバラでした。対象の学年は、29件の研究が小学校、10件が幼稚園、1件が小中学校、2件が高校といった感じです。
そして最終的な分析には34件の研究が使われて、計12,663名分のデータを分析したところ、こんなことが分かりました。
- レッスン中の運動時間が従来のレッスンよりかなり増えた(効果量 = 2.33, 95%CI 1.42~3.25, p< .0001)
- レッスン中にタスクに集中する時間がかなり増えた(効果量 = 0.81, 95%CI 0.47~1.14, p< .0001)
- レッスンによって僅かに学業成績がアップした(効果量 = 0.36, 95%CI 0.09~0.63, p< .01)
まとめると、体を動かしながら授業を受けるアクティブ・レッスンでテストの成績と運動量がアップしたと。学業成績の課題と運動不足を同時に解消できるなら、かなり良さげですね。(*効果量はそのまま効果の大きさを表し、0.8を超えると「効果大」)
ただ一方で、認知機能や健康面には特に効果は見られなかった様子。この辺りは、食事の管理まではしていなかったのと、ガッツリ強度の高い運動をしていたわけではないのを踏まえれば致し方ないかなと思います。
運動が脳に良い影響をもたらすのは有名な話ですが、今回学業成績のアップに繋がった直接的なメカニズムはよくわかっていません。タスクに向き合う時間が増えている点を考慮すると、「運動によってレッスン中の注意力が高まったのでは?!」という主張がしっくりきますが..。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 教師が置き去りになっている研究が多かった:予め作られたレッスンの内容だけ伝えてその通り授業をこなしてもらう、というやり方だと、教師のモチベーションに繋がらないし本質を理解できずに言われたことをこなすだけになってしまう
- どこまで一般化できるか?問題:特別な教育が必要な子どもや肥満体型の子どもなどは対象に含まれなかったり、アメリカ、オーストラリア、イギリスの研究が大半を占めていた
- バイアスの影響を受けている可能性が高い:参加者である生徒や教師らの盲検化(実験の意図を隠す)が実験デザインの都合上難しかったり、実験の測定項目が1/3の研究で彼らに知られていたという点で、実験結果にバイアスがかかる恐れがある
一点目の注意点については、教師も上手に実験に巻き込んで、一緒にアクティブ・レッスンの内容を組み立てていく方がもっと効果が高まったんじゃないか?と考えられていますね。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 運動しながら授業を受ける「アクティブ・レッスン」
- 従来の席について授業を受けるスタイルよりも運動の時間が増えるだけでなく、テストの成績までアップしていた
- 詳しい仕組みは分かっていないが、メリットが大きいので取り入れて試してみても良いのかもしれない
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Norris E, van Steen T, Direito A, et al. Physically active lessons in schools and their impact on physical activity, educational, health and cognition outcomes: a systematic review and meta-analysis. British Journal of Sports Medicine Published Online First: 16 October 2019.