赤羽(Akabane)
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世界規模の大調査!コレステロールの世界的震源地はどこなのか?
早速ですが、参考になるデータを見ていきます。
コレステロールの世界地図を見てみよう!という研究
2018年に世界各国の健康科学者100名以上が集った「NCD Risk Factor Collaboration (NCD-RisC) 」という組織から発表された研究(#1)では、コレステロールの世界規模での普及について面白い分析を行っていました。
この研究は、1127件もの過去研究を集めて、計1億260万人分のデータを対象に、世界規模のコレステロール値の分布を見てみよう!というもの。
対象になった国は全部で200カ国にのぼり、1980~2018年までの間で行われた調査データをまとめたようです。
測定項目
- 総コレステロール(TC)
- 善玉コレステロール(HDL)
- 非善玉コレステロール(N-HDL)
*悪玉コレステロール(LDL)でなくN-HDLを測定する理由は、含まれた研究の大半がTCとHDLを測定しており、その差から算出できるのがN-HDLだから(N-HDLを構成する大半はLDLなので、ほぼLDLと捉えて問題ない)
そして上記のデータをまとめたところ、こんな結果が得られました。
- 世界全体で見ると、1980~2018年を通して、TCやN-HDLの数値に目立った遷移は見られなかった
- この結果は、これまで高コレステロールの温床とされてきた「高所得な西欧諸国」におけるTCやN-HDL値の大幅な減少(つまり改善)と、一方で「低~中所得の東南アジア諸国」におけるそれら数値の増加が相殺されたものであることが分かった
- ただし、西欧諸国のTCやN-HDLの絶対値は依然として高く、その数値に東南アジア諸国が追いつきかけているような感じ
世界全体のイメージとしては「プラマイゼロ」でしょうか。これまでは、肥満や生活習慣病と言えば西欧の生活スタイルが悪者にされてきましたが、ここ最近に至っては、どうも東南アジアなど他の地域でも生活水準が上がった結果、世界全体で食生活などが乱れ始めているんではないか?と。成程、あり得る話ですな…。
上記の引用グラフを見てみると分かり易いですね。面白いことに、日本は1980年と2018年のN-HDL遷移を比べても、ほとんど変化がないことが分かります。絶対値も比較的真ん中辺りをキープしていますし、国内における食の西欧化が囁かれる現状でも、世界的に見ると良い方なのかな?とちょっと安心しました(笑)
また追加情報として、2017年には世界全体で390万人の死と高N-HDLが関係しているとされていて、そのおよそ半分は東南アジア諸国が占めていたようです。このことからも、世界的なコレステロールの震源地は西欧から東南アジアへと変わってきていると考えられます。
*主な死因は「虚血性脳卒中」や「虚血性心疾患」など
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、一部地域のデータが少ない点は押さえておくと良さそうです。例えば、サブサハラアフリカやカリブ海周辺地域、メラネシア、中央アジアのデータは少なく、統計によって一部データを補強していたようです。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- コレステロールの世界的な震源地はここ数十年で変わってきていると言えそうだ
- 1憶人以上の調査データをまとめた分析によると、1980~2018年の間に、高所得な西欧諸国のコレステロール値がかなり改善している一方、低~中所得の東南アジア諸国では数値が悪化してきているようで、これらがプラマイゼロになり、世界全体で見るとほとんど数値の遷移は見られなかったようだ
- 日本はこの間、ほとんどコレステロール値の遷移がなく、絶対値では丁度真ん中あたりをキープし続けていた
赤羽(Akabane)
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#1 Taddei, C., Zhou, B., Bixby, H. et al. Repositioning of the global epicentre of non-optimal cholesterol. Nature 582, 73–77 (2020). https://doi.org/10.1038/s41586-020-2338-1