約70万人をゲノム解析した結果「高血圧」と「肥満」が特に現代人の寿命を縮めていることが判明

約70万人をゲノム解析した結果「高血圧」と「肥満」が特に現代人の寿命を縮めていることが判明

赤羽(Akabane)

今回は「現代人の寿命を特に縮めている要因が遺伝子レベルで分かった!」というお話です。

「高血圧」と「肥満」が特に現代人の寿命を縮めていることが判明

現代人を苦しめている生活習慣病の原因には、肥満や喫煙、高血圧、座りっぱなし等々…今日の生活習慣を反映した多くの要素が挙げられます。

そこで、この記事ではもう一歩踏み込んで「特に現代人の寿命を縮めているものは何?」というテーマについて見ていきます。

世界各国の調査データを遺伝子レベルで解析した大規模なメタ分析

2020年に大阪大学が発表したメンデルランダム化試験&メタ分析(#1)によると、現代人の寿命を最も縮めている要素は「高血圧」と「肥満」であることが分かりました。

この研究は、世界のあらゆる地域から集められた、計675,898名の大規模な調査データをまとめたものです。研究の手法は、彼らの生まれつきの遺伝子データを基に、調査データから分かる実際の寿命との関わりを解析(ゲノム解析)していくというもの。

調査データ一覧

  • バイオバンク・ジャパン(179,066名):日本の調査データ
  • UK・バイオバンク(361,194名):イギリスの調査データ
  • FinnGen(135,638名):フィンランドの調査データ

ゲノム解析のイメージ

memo
【例:遺伝子A(持っていると将来の高血圧リスクが高くなるとされる遺伝子)を持つ人】
→ 調査データと照らし合わせた結果、これらの人は遺伝子Aを持たない人よりも早死にするリスクが高かった
→ 高血圧によって早死にするリスクが高まった!(因果関係)

※詳しくは「メンデルランダム化試験」をご覧ください。

そして上記の分析の結果、以下のようなことが分かりました。

結果
  • 高血圧と肥満に関わる遺伝子で、将来の早死にリスクが高まった
  • 高血圧に関しては、全ての調査データで一貫してリスクの増加が確認され、肥満に関しては、日本よりもヨーロッパ地域の調査データで顕著だった
  • 高血圧は、糖尿病や脂質異常症、脳梗塞と合併した場合に特に死亡リスクが高く、死因は心疾患が多かった。肥満は不安定狭心症との合併で特に死亡リスクが高く、死因は脳血管疾患が多かった

約70万人をゲノム解析した結果「高血圧」と「肥満」が特に現代人の寿命を縮めていることが判明

#2より引用。

ここから言えるのは、「高血圧」が世界的に見て最も一貫した危険因子だということです。次いで「肥満」も寿命を縮めることが分かりましたが、こちらは日本よりもヨーロッパの文化圏で強い影響が見られました。

また、高血圧や肥満以外にも、以下のような要素も寿命を縮めることが分かりました。

  • 高コレステロール
  • 高身長
  • 低血小板

コレステロールに関しては、総コレステロール値や悪玉コレステロール(LDL)値が高いと、早死にするリスクが高かったようです。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ざっと以下の点は押さえておくとよろしいかと。

注意
  • ゲノム解析につきまとう問題点: 一つの遺伝子が同時に複数の要素に影響を与える可能性は排除できず、こうした影響でリスク値に誤差が生まれたりする可能性がある(例:将来の高血圧を予測するが、同時に高コレステロールにも関わる遺伝子、とか。これを遺伝子の多面発現性という)
  • 寿命を追いかけるには期間が短いデータもある: UK・バイオバンクなどはまだ歴史が浅く、人の寿命を追跡するのには期間が短すぎる
  • 調査データによって対象になる人の特徴が異なる: UK・バイオバンクは健康な人を対象にしている一方、バイオバンク・ジャパンは通院・入院患者などを対象にしたデータなので、健康状態には差があるし、後者は日本の全体人口を代表した調査データとは言い切れない

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 日本を含めた3カ国の大規模な調査データをメタ解析した結果、高血圧と肥満が特に現代人の寿命を縮めていることが判明
  • 高血圧は、糖尿病や脂質異常症、脳梗塞と合併した場合に特に死亡リスクが高く、死因は心疾患が主。肥満は、不安定狭心症との合併で特に死亡リスクが高く、死因は脳血管疾患が主だった
  • 高血圧や肥満の予防のために、やはり健康な食事、睡眠、適度な運動の3つは最低限徹底しておいた方が良さそうだ

赤羽(Akabane)

高血圧は危険因子だ!という結果は、過去にWHO(世界保健機関)の「25×25キャンペーン」のお話でも報告されていましたね。ただ、このキャンペーンでは「肥満はそれ程危険因子じゃないかも?」という指摘もありましたが。このテーマについて興味があれば、以下の記事もどうぞ。

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参考文献&引用

#1 Sakaue, S., Kanai, M., Karjalainen, J. et al. Trans-biobank analysis with 676,000 individuals elucidates the association of polygenic risk scores of complex traits with human lifespan. Nat Med 26, 542–548 (2020).

#2 大阪大学「70万人のゲノムによるリスク予測で、高血圧・肥満が現代人の寿命を最も縮めていることを特定」2020年6月9日アクセス。