単なる甘え?「先延ばしが治らない心理」にはアレが影響しているかも

単なる甘え?「先延ばしが治らない心理」にはアレが影響しているかも

赤羽(Akabane)

今回は「どうして面倒ごとは先延ばししてしまうの?」という問題についてのお話です。

単なる甘え?「先延ばしが治らない心理」にはアレが影響しているかも

この問題について、手がかりになりそうな研究結果を見ていきましょう。

「ついつい面倒な仕事を先延ばしにしてしまう..」その心理の裏にある「あの特徴」とは

参考になるのが2018年にポーランドの科学研究機関とワルシャワ大学が発表した研究(#1)で、先延ばしに最も影響する要素は何なのか?という点を調べてくれています。

まずこの研究では、先延ばしの要因として次の3つに焦点を当てています。

  • 衝動性:先延ばし癖のある人は衝動を抑える力が弱かったり、衝動に関する脳の「背外側前頭前野」の灰白質が少ない傾向にあった
  • 感情の制御力:先延ばし癖は失敗を人一倍恐れたり、不快な気分に耐性がなかったりする性質と関連が見られている
  • モチベーション:目の前のタスクや仕事に意識的に取り組んだり、価値を置いたりする性質が弱いと先延ばしに繋がるんでは?と考えられている。また低いモチベーションは衝動性なんかにも繋がるようだ

これらはどれも過去研究(#2, #3)で「先延ばしの大きな原因になるんではないか?」と睨まれていた要素で、このうちどれが多大な影響を与えているか?を見ていく流れ。

具体的には、638名の男女(平均31.16歳、女性75%)を対象に、先延ばし度や衝動、感情コントロール、モチベーションなどのチェックテストのデータを集めて、各々の相関具合を見ていったようです。

ちなみにこの調査がこれまでと違う点は、性別だけでなく学生/非学生、高齢/若年といったサブグループに分けても見てくれているところ。当然年齢なんかでも結果が違ってきそうなので、この点は有難いですね。

そして調査の結果、こんなことが分かりました。

これが高いほど先延ばしの傾向が強まった

  • 忍耐力の欠如:文字通り辛抱できない(感情の制御)
  • 時間割引率:高い程未来より目先の利益や欲に走りやすい(衝動性)
  • 価値の欠如:目の前の仕事やタスクに価値をあまり見出せない(モチベーション)

どうやらさっき並べた3つの特徴はどれも先延ばしの傾向にマッチしたみたいです。

でもう少し詳しく見てみると、こんなことも分かりました。

  • 女性より男性のほうが先延ばし傾向が高かった(学生かどうか?よりも年齢が影響)
  • 高い時間割引率など衝動的要素が実際に衝動性に繋がるかどうかは「感情の抑圧」がカギになっていた
  • ただ「感情の抑圧」が関わっていたのは若い年齢層の間のみだった

「感情の抑圧」については、この傾向が強いほど自己コントロール力の欠如に繋がりやすいことがわかっています。で手に負えなくなった衝動性やネガティブ感情をどうにかする為の心理的な策として、以下の「感情の抑制」か「先延ばし」に繋がっていくんではないか?と。

具体例を挙げると、

仕事で失敗して上司に報告に行かなきゃいけない..

  • →感情の抑制(先延ばしを何とか回避!):「報告に行かなくちゃ..でも怒られるの嫌だなあ」→ネガティブ感情→「いやいや、ちゃんと報告に行かなきゃ!」「でも怒られるの嫌だし逃げたい..」→衝動性→「我慢我慢。すぐに行かなきゃもっと怒られるかも..」→感情の抑制
  • →先延ばし:「報告に行かなくちゃ..でも怒られるの嫌だなあ」→ネガティブ感情→「怒られるの嫌だし、逃げ出したいなぁ..」→衝動性→「そうだ、とりあえず一旦一服してからにしよう」→先延ばし

こんな風に、人によって衝動やネガティブ感情への対処が違うということです。ここの違いに「抑圧」度合いの個人差が関わってくる、と。

注意点・まとめ

ただし今回の結果は、数百名のサンプル数で少ないうえに女性が大半を占めていました。よってデータの精度で言えばちょっと微妙かもしれません。

とはいえ過去の研究をみていても、上で挙げた3つの要素が影響しているのは間違いなさそうですが。

では最後に、以上を踏まえて今回の結果をまとめましょう。

ポイント

  • 先延ばしには「衝動性」「感情の制御力」「モチベーション」辺りが強く影響していそう
  • 自分が目の前の欲や衝動に駆られやすいかどうか?を日頃チェックしてみるといいかも
  • 他にも目の前の仕事ややるべきことに対するやる気やモチベも大切みたい

こんな感じになりそうです。先延ばしも色々な要素が複雑に絡み合った現象なのがよくわかりますね。

赤羽(Akabane)

先延ばし癖がある方はみんな「治したい!」と思うはずですが、現実はなかなか難しいかと思います。そこで以下に科学的な改善策を貼っておきますので興味のある方はご参考までに。

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参考文献&引用

#1 Marek Wypych, Jacek Matuszewski and Wojciech Ł. Dragan. Roles of Impulsivity, Motivation, and Emotion Regulation in Procrastination – Path Analysis and Comparison Between Students and Non-students. Front. Psychol., 05 June 2018.

#2 Watson, D. C. (2001). Procrastination and the five-factor model: a facet level analysis. Pers. Individ. Dif. 30, 149–158.

#3 Sirois, F. M., and Pychyl, T. A. (2013). Procrastination and the priority of short-term mood regulation: consequences for future self. Soc. Pers. Psychol. Compass 7, 115–127.