逆境から立ち直る力「レジリエンス」は脳の前頭前皮質が大きい人ほど強いことが判明

逆境から立ち直る力「レジリエンス」は脳の前頭前皮質が大きい人ほど強いことが判明

赤羽(Akabane)

今回は「レジリエンスが強い人には脳にある特徴が見つかった!」というお話です。

逆境から立ち直る力「レジリエンス」は脳の前頭前皮質が大きい人ほど強いことが判明

「レジリエンス(Resilience)」というのは、ペンシルバニア大学のマーティン・セリグマン教授が広めた概念でして、一言で言うなれば「逆境や困難から立ち直る回復力」みたいなものです。

レジリエンスはストレス耐性、ひいてはメンタルヘルスにも深く関わっている要素で、人生を満足に生きていくのに重要な特性の一つだと考えられているんですね。

というわけで、この記事ではレジリエンスを脳科学的に解明しよう!と試みた面白いデータを見ていきます。

レジリエンスが高い人は脳の前頭前皮質の領域が大きい!という研究結果

2018年にイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校が発表した研究(#1)によると、レジリエンスは脳の司令塔的な役割を担う「前頭前皮質」の大きさに比例することが分かりました。

この研究は、85名の健康な若者(18–34歳)を対象に、まず彼らの以下3つの特性に関するデータを集めました。

  • 脳の前頭前皮質のボリューム: MRIを使って、参加者らの脳を測定
  • レジリエンス度: 感情制御力やポジティブ・ネガティブ感情、楽観性などを複数の診断ツールで測定
  • 不安・うつ症状度: 不安に関する診断ツールと、うつ症状には定番の「the Beck Depression Inventory (BDI)」が使われた

そして上記3つの要素間の相関関係を分析したところ、以下のような結果が得られました。

前頭前皮質の潜在的な領域が大きいほど…

結果
  • レジリエンスが高い傾向があった
  • 不安レベルが低い傾向にあった
  • うつ症状レベルとは相関が見られなかった

まとめると、脳の前頭前皮質の領域が大きい人ほど、レジリエンス度合いが高く不安度が低い傾向が確認されました。

更に、こうした傾向を詳しく見ていくと、前頭前皮質の潜在的な領域の大きさがレジリエンスと関係していて、この関係を通して間接的に不安度が減っていることも分かりました。

前頭前皮質の領域の大きさとレジリエンスの間にある共通点とは?

では、どうして前頭前皮質のボリュームとレジリエンスに相関が見られたのか?これについては、前頭前皮質の役割とレジリエンスの特性には、いくつか重なる部分があるからだと考えられます。

前頭前皮質は、理性的な意思決定や計画、感情のコントロールなどを司る司令塔的な部位で、レジリエンスの特性である「リアプレイザル」や「楽観主義」「ポジディブ感情の強化」といった側面にかなり影響を与えることが分かっています。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • サンプルサイズは小さい: 100名に届かない程の参加者数で、統計的パワーは弱め
  • 因果関係を特定したわけではない: 研究デザイン上、「前頭前皮質の潜在的なボリューム増大によってレジリエンスが高まっているんだ」といった因果関係は証明できない
  • 調査データは一度きり: ある一時点での結果から相関を導いているため、脳トレや経年など長期的な変化によって結果がどうなるか?は分からない

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 脳の司令塔「前頭前皮質」の潜在的な領域が大きいと、レジリエンスが高く不安度が低い傾向が見られた
  • 前頭前皮質のボリュームとレジリエンスの相関が、間接的に不安レベルを下げているのでは?という可能性が示唆された
  • うつ症状レベルとは相関が見られなかったが、サンプルサイズが小さく、診断ツールも一つしか使っていないため、まだ断言はできない

赤羽(Akabane)

まだ研究に課題はあるものの、前頭前皮質がレジリエンスに関係している可能性は高いと思われます。レジリエンスについては、他にも以下のような記事があります。柔軟な思考を身につけて、人生を少しでも生きやすく…!

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参考文献&引用

#1 Moore M, Culpepper S, Phan KL, Strauman TJ, Dolcos F, Dolcos S. (2018) Neurobehavioral Mechanisms of Resilience Against Emotional Distress: An Integrative Brain-Personality-Symptom Approach Using Structural Equation Modeling. Personality Neuroscience. Vol 1: e8, 1–10. doi: 10.1017/pen.2018.11