筋トレと性別: 男性と女性で筋肥大・筋力アップ効果はどのように違うのか？

赤羽(Akabane)

今回は「筋トレの効果は性別によってどう変わるのか？」についてのお話です。

筋トレと性別: 男性と女性で筋肥大・筋力アップ効果はどのように違うのか？

早速ですが、この件について最新のデータを見ていきましょう。

筋トレによる筋肥大、筋力アップ効果は男女でどのように違うのか？

2020年にアラバマ大学バーミンガム校が発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)によると、筋トレによる効果は男女で微妙な違いがあることが分かりました。具体的な違いについてみる前に、まずはザっと中身を確認していきます。

この研究は、50件の関連研究をまとめて、性別によって筋トレの効果(筋肥大、筋力アップ)がどのように変わってくるのか？をまとめたものです。各研究は、ザッと以下の項目を測定していました。

筋肥大…10件
上半身の筋力…17件
下半身の筋力…23件

実験期間は6〜104週間で、筋トレは週に2〜5回(だいたい2,3回)、男女を全く同じトレーニングメニューに割り当てて、上記の測定項目の差を比較しています。

そして上記の分析の結果、ザッと以下のようなことが分かりました。

結果

筋肥大と下半身の筋力アップに関しては、性別に関係なく発達が見られた
ただし上半身の筋力に関しては、女性の方が発達が早かった

項目	効果量(ES)
筋肥大	ES = 0.07 ± 0.06; 95% CI: −0.09 to 0.23; P = 0.31; I2 = 0%(有意差なし)
筋力(上)	ES = −0.60 ± 0.16; 95% CI: −0.93 to −0.26; P = 0.002; I2 = 72.1%(女性が優位)
筋力(下)	ES = −0.21 ± 0.16; 95% CI: −0.54 to 0.12; P = 0.20; I2 = 74.7%(有意差なし)

*効果量…効果の大きさを数値で表したもの。一般的には0.7を超えると「効果大」とされる

まとめると、上半身の筋力アップに関してのみ、男女で発達度合いに差が見られ、しかも女性の方が発達しやすかったんですね。筋肉に関しては、なにかと男性の方が有利に思えますが、今回は意外な結果と言えましょう。

ではどうして女性で上半身の筋力が発達しやすかったのでしょう？詳しいことは分かっていないようですが、ザッとこんな要素が関係していると思われます。

今回含まれた研究の大半が、普段筋トレをしない参加者を対象にしていた→ 初心者は、最初に神経系が発達することによって、筋肉の発達が起こりやすい(結果に差が出やすい)
男性よりも女性の方が神経筋の疲労からの回復が早いというデータがある(#2)→ 今回含まれた実験はどれも期間が短く、短期決戦である分、男性の方が前回のトレーニングから十分に回復せずに次へと進んでいた可能性はある
男性よりも女性の方が最初のフィットネスレベルが低いことが多い→ その分伸び代があるため、同じ初心者でも女性の方が発達に優位だった

詳しいメカニズムの特定には至っていませんが、どれも過去の知見をベースに考えられています。どれか一つというよりも、色々な要素が複雑に絡み合っていると考えるのが自然でしょう。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくとよろしいかと。

注意

研究の質に関する分析をしていない: メタ分析の質は中身の研究の質に左右されるので、この点は非常に大事。だが、今回は男女で同じトレーニングをした場合の比較結果をまとめた研究なので、それぞれの研究では実験の意図やグループ分けに関して参加者らに隠すことはできない。この分、参加者らの主観が結果に混じる恐れがあって、研究の質は自然と低くなることが初めから予想されたため、この手の分析をする必要性はないと判断した様子
参加者の大半は筋トレ未経験者: トレイニーや熟練者たちでは結果が変わる可能性が高い
実験期間は短い: 6〜12週間の実験が大半なので、より長期的な結果はどうなるかわからない

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント

筋トレによる筋肉の発達は男女で一部違いが見られた
筋肥大や下半身の筋力アップに関しては男女間で差は見られなかったが、上半身の筋力アップは女性の方が大きかった
今回の結果は大半が筋トレ経験のない参加者が対象だったので、熟練者やガチ勢では同様の結果になるか？は不明

赤羽(Akabane)

この辺り、男女別の筋トレ効果についてはまとまった見解が出始めましたが、まだまだ細かい部分は分かっていません。関連記事は以下もご覧ください。

参考文献&引用

#1 Roberts BM, Nuckols G, Krieger JW. Sex Differences in Resistance Training: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Strength Cond Res. 2020;34(5):1448–1460. doi:10.1519/JSC.0000000000003521

#2 Häkkinen K. Neuromuscular fatigue and recovery in male and female athletes during heavy resistance exercise. Int J Sports Med. 1993;14(2):53‐59. doi:10.1055/s-2007-1021146