【科学の答えは..】筋トレに筋肉痛は本当に必要なのか?

【科学の答えは..】筋トレに筋肉痛は本当に必要なのか?

赤羽(Akabane)

今回は「筋肉痛って本当に必要なの?」というお話です。

【科学の答えは..】筋トレに筋肉痛は本当に必要なのか?

筋トレをやっているとよく聞くのが「トレーニング翌日の筋肉痛が成長の証だ!」みたいな話。仕組みとしては、筋肉にキャパ以上のダメージを与えて、回復した時に筋繊維が太く強靭になっている!という説が一般的かと思います。確かにこうやって聞くと頷ける話ではありますが、できれば痛い思いはしなくないよなぁ~とも思うわけです。

そこでこの記事では、筋肉痛は筋肉が強く大きく育つのに本当に必要なのか?という疑問にタックルしていきます。

筋肉痛は筋肉の成長に本当に必要なのか?現時点での結論は..

参考は2013年に筋トレ研究の第一人者ショーンフェルド氏らが発表したレビュー研究(#1)で、筋肉痛の生理学的な影響や実際の実証研究などについてまとめてくれていました。

まず本題の前に、以下で登場する筋肉痛と筋ダメージの定義の違いについてザっとおさらいしておきましょう。

  • 筋肉痛..筋肉が炎症を起こし痛みを感じること
  • 筋ダメージ..筋肉がトレーニングのストレスによって受ける損傷で、筋肉の成長に影響する要素と考えられている

筋肉痛と筋ダメージは別モノで、両者が起こるタイミングを見ると比例が見られなかったことがわかっています。つまり、両者は関係しているものの、筋ダメージが大きければ筋肉痛も大きくなるというわけではないんですね。

では以上を踏まえて、この研究の肝の部分を抜粋します。今回のテーマについて、研究チームは次のように述べていました。

それらしい理論的な根拠にもかかわらず、運動による筋ダメージと筋肥大の直接的な関係を証明する研究結果は現段階で不足している。筋ダメージは、筋肥大にとって必ずしも不可欠なものではないという結果が示されているのだ。したがって、筋ダメージを狙った運動による筋合成効果は付加的なものであって、決して本質的なものではないということだ。更に特筆すべきは、過度なダメージは運動のパフォーマンスと回復に悪影響であるということが分かっているのだ。[筆者訳]

つまり、筋ダメージがあっても無くても筋肥大は起こることがあるし、必ずしも必要な要素ではない!ということです。でトレーニングの副産物的に筋肉痛が起こることはあるけれど、それが筋肉の成長に寄与しているか?と言われると際どい、と。

それどころか、筋肉痛は筋力やトレーニングのパフォーマンスを下げてしまうという報告(#2)もあるので、むやみに狙いにいくのは逆によろしくないんじゃないか?と考えられるんですね。

筋肉痛ってどんな時に起こりやすいの?

また今回の研究では、どんな条件だと筋肉痛が起こりやすいのか?という点についてもまとめてくれていました。

  • 体が慣れていない運動をした時:普段運動しない人が久しぶりに山に登るだけで筋肉痛になるなど
  • エキセントリックトレーニング(伸張運動)時:いわゆるネガティブの運動で、コンセントリック(収縮運動)よりも筋肉にダメージが起こりやすい

上記を踏まえると、筋肉痛が筋肉の発達に本当に必要不可欠なのか、いよいよ疑わしくなってきました。

普段ジムで筋トレをしている人でも、初めて登山をすればやはり慣れない動きで筋肉痛はやってくるでしょうし、だからと言ってそれが筋肉の発達に格段有利に働くか?と言われると「どうかなぁ…」という感じがします。

また我々の体が許容できる負荷のキャパはトレーニングを続けるごとに増えていって、それに応じて筋肉痛も起こりにくくなります。しかしだからといって筋肉が発達していないわけではなく、体がトレーニングに順応したから痛みを発症しにくくなったんだと考えられます。これを「反復バウト効果(Repeated Bout Effect) 」と言って、筋トレやスポーツ経験者なら何となく頷ける話かと思います。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、このテーマについてはザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • 実証研究数は少ない:どちらにしても質の高い研究はまだ少ないので、系統的レビューメタ分析などでまとまった見解が得られるレベルではない
  • 細かい部分は不明:筋肉の部位によって筋肉痛になりやすい部分などがあるが、こうした違いによってどんな差があるのか?みたいな詳細はわからない

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 筋トレに筋肉痛は必ずしも必要なものではないようだ
  • 理論上関係がありそうな筋ダメージでさえも、筋肉の発達とはあまり関係がなく、筋肉痛はむしろ筋力やパフォーマンスに悪影響かもしれない
  • 慣れていない人や筋トレ初心者あたりは、ネガティブ重視の筋トレなど筋肉痛を狙ったトレーニングはやる必要がないかも

こんな感じでしょうか。初心者や筋トレに慣れていない方は特に、筋肉痛を狙ってトレーニングするのはないかもしれません。

赤羽(Akabane)

私も本格的に筋トレをかれこれ4年ちかく経ちますが、負荷を増やしても前ほど筋肉痛を感じることは少なくなりました。これも反復バウト効果のおかげなのでしょう。個人的には日常生活に支障をきたすこともあるので、なるべく筋肉痛にならないようにトレーニングを続ける所存であります!

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参考文献&引用

#1 Schoenfeld, Brad J, et al. Is Postexercise Muscle Soreness a Valid Indicator of Muscular Adaptations? Strength and Conditioning Journal: October 2013 – Volume 35 – Issue 5 – p 16-21.

#2 Paulsen G, et al. Leucocytes, cytokines and satellite cells: What role do they play in muscle damage and regeneration following eccentric exercise? Exerc Immunol Rev 18: 42–97, 2012.