食事からの脂肪を減らしても大して痩せない!という信頼性高めな研究結果が発表される

食事からの脂肪を減らしても大して痩せない!という信頼性高めな研究結果が発表される

赤羽(Akabane)

今回は「食事からの脂質を減らすと本当に痩せるのか?」というお話です。

食事からの脂肪を減らしても大して痩せない!という信頼性高めな研究結果が発表される

脂質は糖質やたんぱく質の1g当たり4kcalと比べて、9kcalもあるんだよ…!だから脂質を減らすのがダイエットの一番近道なんだ!

こういった主張もありますが、この記事ではどれ程信憑性のある話なのか?という点をまとまったデータから判断していきます。

コクランレビューに掲載された信頼性高めなメタ分析によると..

2020年にイーストアングリア大学が発表・コクランレビューに掲載された系統的レビュー&メタ分析(#1)の結論では、食事からの脂質摂取量を減らしても体重や体脂肪率は大して変わらないことが分かりました。

この研究では、37件のRCTから計57,079名分のデータをまとめていまして、全体的に質の高い実験データが集まっています。

具体的な実験のデザインはこんな感じでした。

  • 低脂肪食 vs. 通常食 or その他ダイエットという構図で2つのグループに参加者を無作為に振り分ける
  • グループごとに、実験前後の体重や体脂肪率、BMI、ウエスト周りなどの体組成測定を行う
  • 実験期間は6~96ヵ月間、低脂肪では脂質を全体のカロリーの30%以下までカットし、浮いた分のカロリーは、炭水化物やたんぱく質源、果物や野菜などで埋め合わせをする

ポイントは、グループごとのカロリーはなるべく揃えるようにしている点でしょうか。ちなみに、それぞれの実験では「痩せましょう!」という指示や減量のための食事制限などはしていなかったようで、純粋に【食事から摂る脂質が多いか・少ないか】という点で結果を比べています。

それでは、上記の分析結果をザックリと見てみましょう。

結果
  • 低脂肪は比較グループよりも -1.42 kgの減量に成功していた (95%CI -1.73 to -1.10 kg, I2 = 75%, RCT 26件)
  • 低脂肪は高脂肪よりもBMIが -0.47 kg/m2 減少していた (95%CI -0.64 to -0.30 kg/m2, I2 = 60%, RCT 15件)
  • 低脂肪は高脂肪よりもウエスト周りが -0.47cm 減少していた (95%CI -0.73 to -0.22 cm, I2 = 21%, RCT 4件)
  • 低脂肪は高脂肪よりも体脂肪率が -0.28% 減少していた (95%CI -0.57 to 0 %, I2 = 0%, RCT 3件)

*I2…結果のバラつきの大きさを%で表したもの

結果だけを見ると、「おっ、低脂肪そこそこいいじゃん?」という感じに見えますが、今回は最低でも6ヵ月以上・基本は年単位のデータのみが反映されていまして、長期的に脂肪の摂取量を減らしたとて大した体型改善は見込めない、と考える方が自然でしょう。

しかも、体重に関して結果のバラつきの要因を探ったところ、元々脂肪をあまり摂らない人が低脂肪グループに振り分けられて更に摂取量が減ったケースや、元々BMIが高いケースで高い減量効果が出ていた様子。察するに、低脂肪で微妙に痩せた理由は、脂肪の摂取量を極力減らすことで自然とカロリー総量が少なくなったからでは?と考えられますね。

また、体型以外のところでも、低脂肪のグループで悪玉コレステロールや総コレステロール値が若干善くなっていました。一方で、善玉コレステロールや収縮期/拡張期の血圧、中性脂肪などの数値には特に有意な改善は見られませんでした。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • アジア圏の研究はほとんど対象外: 中国の研究が1件のみで、残りは北アメリカ大陸やヨーロッパの研究が大半を占めている
  • 子どもは対象外: 条件として18歳以上の参加者のみが対象になっていて、子どもに対しての効果は分からない
  • 大半の研究は2000年より前に発表されたものだった: 最近の研究では減量を目的とした実験が多く、そのほとんどが今回の条件にマッチしなかった様子。その為、比較的古い実験が大半を占めている

これだけデータがあって、日本で行われた研究が一つもないのは寂しいですね..(笑) 実験が発表された年代については、基本的に古い実験ほど質が低かったりしますが、今回の場合はあまり問題なさそうです。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 長期的に見ても食事からの脂肪を減らしたところで大したダイエット効果はないことが判明
  • 質の高い比較試験から5万人以上のデータを集めて分析したところ、低脂肪な食事はそうでない他の食事よりも僅かに体型に改善が見られたが、年単位の実験が多いことを踏まえると些細な効果だと解釈できる
  • また、低脂肪の食事による減量効果にはバラつきが大きくて、元々太っている人や脂肪をあまり摂らない人で高い効果が出ていた

赤羽(Akabane)

RCTのような比較実験は費用が莫大なので、あまり長期的なデータは取れないものですが、今回のデータには8年以上も追跡調査を続けている実験もあってビックリしました。とりあえず、ダイエットにはPFCバランスよりも、カロリー摂取総量の方が大事であるのは間違いなさそうです。

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参考文献&引用

#1 Hooper L, Abdelhamid AS, Jimoh OF, Bunn D, Skeaff CM. Effects of total fat intake on body fatness in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2020;6(6):CD013636. Published 2020 Jun 1. doi:10.1002/14651858.CD013636