赤羽(Akabane)
目次
たった1時間スキューバダイビングを体験するだけでも随分とメンタルヘルスが善くなるみたいだ
ダイビングとビーチアクティビティのメンタルヘルス改善効果を検証した実験
2020年にジローナ大学が発表した研究(#1)によると、たった一度スキューバダイビングのアクティビティを体験するだけでも気分が改善することが分かりました。
この研究では、スペインのクレウス岬を舞台に、176名のダイバーと70名のビーチ利用者を対象にした調査を行っています。具体的には、人口統計学的なデータとメンタルヘルスの状態をチェックする診断ツールに回答してもらっていました。
実験では、参加者を以下のようにグループ分けしていまして、実験前後で先ほどのメンタルヘルスの状態がどう変化するのか?という点を比べています。
- スキューバダイビング(176名): 団体で行う。一時間の体験。
- グループA…15名以下、インストラクター付き、10分以上のブリーフィング
- グループB…15名以上、インストラクターなし、10分未満のブリーフィング
- ビーチアクティビティ(70名): 実験中ビーチでのんびりしている
*ブリーフィング…場所の特徴、安全性、上手に潜るコツなどの簡単な説明
ダイビングでさらに細かくグループを分けている理由は、一緒に潜る人が多かったり、インストラクターが付いていなかったり、事前の説明が少なかったりすると、精神的なストレスや不安感が高まるのではないか?という仮説を検証するためでした。
果たして実験の結果、以下のようなことが分かりました。
- スキューバダイビングで実験前後の怒り・うつ症状レベルが有意に低下、実験後の疲労感もビーチアクティビティと比べて有意に低かった
- 実験後のメンタルヘルスの診断ツールを総合すると、スキューバダイビングのグループで有意な改善があった
- ダイビンググループAとBの違いによっては、特にメンタルヘルスへの効果の差は見られなかった
まとめると、たった1時間でもスキューバーダイビングを体験すると軒並みメンタルヘルスが善くなっていた!と。ただ、一緒に潜る人が多いことやインストラクターの有無などではあまり精神的な影響はなかった模様。
またこうした効果は、スキューバかビーチアクティビティかに関係なく、メンタルヘルスに関する何らかの薬を処方されて飲んでいる人で高かったようです。というのも、こうした人たちは元々のメンタルヘルスが悪化していたため、実験による改善幅が大きかったものと見られます。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- サンプルサイズは小さい: 実験の参加者が少ない分、統計的なパワーは弱くなる
- バイアスが入り込む余地が大きい: 参加者には有志を募っていたり、実験の意図もあらかじめ明かしていることから、思い込みなどでポジティブな結果を報告しやすくなっていたかもしれない
- 実験期間は超短期: 一日1時間の短期的な実験なので、より長期的に見た結果がどうなるか?は分からない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 1時間のスキューバダイビングvs.ビーチアクティビティでメンタルヘルス改善効果を比べると、前者で総合的な改善が見られた
- 具体的には、実験前後の怒り・うつ症状レベルが善くなっていたり、アクティビティ後の疲労感が低かったりした
- 元々メンタルヘルスに問題を抱えている人の場合は、ダイビングでなくビーチに滞在しているだけでも改善がみられるかもしれない
赤羽(Akabane)
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#1 Carreño, A.; Gascon, M.; Vert, C.; Lloret, J. The Beneficial Effects of Short-Term Exposure to Scuba Diving on Human Mental Health. Int. J. Environ. Res. Public Health 2020, 17, 7238.